鳥インフルエンザ疫学

By , 2009年11月4日 6:03 AM

青木先生が韓国の学会に行かれたそうで、ブログにその時聞いた鳥インフルエンザ情報を書かれていました。

 感染症診療の原則-気温1℃-

■H5N1を忘れちゃいけないよ・・・と思っていたところ、インドネシアからの参加者が「鳥インフルエンザ2005-2009年の記述疫学」を発表。

これまでに世界で442例の確定例があり、うちインドネシアは141例。
死亡例は262例で、インドネシアが147例。
全体での死亡率は59%だが、インドネシアのCFRは81%と高い数字。

2005年9月から2009年8月までの確定例95例では呼吸器症状が85%、消化器症状が12%、神経症状1%、熱のみが2%であった。
タミフルを投与された症例では~35%サバイブする確率があがる。
しかし、発症5日目以降のタミフル投与例はすべて死亡・・・とのことです。

新型インフルエンザ (豚インフルエンザ) と比べてすさまじい死亡率ですね。

今回の新型インフルエンザ騒動で、抗インフルエンザ薬の積極使用という流れになっていますが、鳥インフルエンザがこれらの薬剤に耐性を持ったらと思うと、恐ろしいです。さらに、現在の抗インフルエンザ薬の鳥インフルエンザへの治療成績もあまり良くないようですし、新規薬剤の開発が望まれます。

新規薬剤の開発には金がかかるので、資本が投下された分野は伸びます。これまでの事例ですと、HIVの研究に爆発的に金が投下されて「(極端な言い方ですが)早期治療すれば死なない病気」となり、副産物として HBVや HCVの治療が進歩しました(って言っている先生がいました)。インフルエンザもビジネス的に儲かるとなったら、一気に治療薬が開発されると思います。

現に、将来の爆発的な需要を期待してか、いくつもの会社から新薬が開発されてきています。特に下記の新薬は期待できます。安易に季節性インフルエンザや「豚」に使用しないで、「鳥」用に取っておいた方に思うのですが。

◎富山化学が新薬工場建設へ 新型インフルエンザに有効

富山市に研究生産拠点を置く富山化学工業(東京)は来年度にも、富山市千原崎一丁目 の富山第二工場内に、新型インフルエンザの特効薬としても期待されている治療薬「T― 705」の製造拠点建設に着手する方針を固めた。T―705は鳥インフルエンザウイル スに対する有効性が世界で唯一判明している薬で、二〇〇九年度中に製造承認が国から得 られる見通し。同工場から国内外に新薬を出荷し、打つ手がないとされていた新型インフ ルエンザ大流行の危機を防止する。
富山化学工業は昨年一月に国内、昨年三月には米国で第一段階の臨床試験を開始した。 安全性が確認されたことから、八日からは、富山、石川県内などの医療機関などで、インフルエンザ患者にT―705を投与し、治療効果を確認する臨床試験の第二段階に入った 。

日本を含む世界各国は現在、世界保健機関(WHO)が二〇〇五年に作成した「世界イ ンフルエンザ事前対策計画」を基に、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型) が人に感染する新型インフルエンザの流行に備えて、人口の25%前後のインフルエンザ 治療薬の備蓄を進めている。

現在は、インフルエンザ治療薬としてロシュ社(スイス)が製造する「タミフル」がイ ンフルエンザ治療薬の世界シェアで最も高く、市場規模は一千億円以上とされる。T―705は世界で唯一H5N1型ウイルス抑制に高い有効性が証明されており、世界各国から タミフルを超える高い需要が見込まれるという。

富山化学工業は、T―705の国内臨床試験を進めると同時に、早期に海外普及を図る ため、海外の製薬大手との連携について検討も進める。技術提供や販売権の付与と引き替 えに、同社が得るライセンス一時金などを新工場建設の原資に充てる計画。原薬製造を他 社に委託することも検討しており、新工場の規模や人員は今年中に決める。

東南アジアを中心にH5N1型ウイルスの人への感染が報告されており、感染拡大が早 期に進んだ場合は、同社はアジアで臨床試験を行って患者にT―705を投与することも 想定している。同社の菅田益司社長は「新型インフルエンザ流行を防ぐのが我々の社会的 使命。厚生労働省と相談しながら、出来る限り早くT―705製造に乗り出したい」とし ている。

※この富山新聞の記事は、2009年 1月 10日に書かれていますので、新型インフルエンザというのは、鳥インフルエンザのことです。

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