第3回抄読会

By , 2007年4月24日 11:06 PM

昨日は抄読会でした。

K医師は、tumefactive MS (腫瘤形成型多発性硬化症) の画像と病理についてReviewしました。具体的に用いた文献は、

①K. M. Schwartz et al. Pattern of T2 hypointensity associated with ring-enhancing brain lesions can help to differentiate pathology. Neuroradiol 48: 143-149, 2006
②W. Bruck et al. Inflammatory central nervous system demyelination: Correlation of magnetic resonance imaging findings with lesion pathology. Ann Neurol 42: 783-793, 1997
③Lucchinetti C, et al. Heterogeneity of multiple sclerosis lesions: implications for the pathogenesis of demyelination. Ann Neurol 47: 707-717, 2000

tumefactive MSはしばしば脳腫瘍との鑑別が困難で、脳生検を行わないと診断がつかないことも多々あります。従来のMS (Devic type)とは違う疾患なのではないかと考える研究者もいます。

I先生は、Park2 patientにおける末梢神経伝導検査についての論文を紹介しました。

Ohsawa Y, et al. Reduced amplitude of the sural nerve sensory action potential in PARK2 patients. Neurology 65: 459-462, 2005

Parkinson病患者はしばしば下肢の違和感を訴えますが、Park2患者では、末梢神経伝導検査では Sural nerveのamplitudeが低下しているというのです。しかし、論文では感覚系の診察所見は正常だとしており、疑問な点があります (ここまで検査で異常が出ていれば、診察所見が正常であるとは考えにくいと思います)。

逆に Parkinson病の患者で、Sural nerveのamplitudeが低下していた2例で遺伝子検査をすると、Park2の異常を認めたとも紹介されています。

また、Park2の発現している部位の分子生物学的手法を用いた分析も興味を引かれました。

私が紹介したのは、失音楽についての論文でした。

Pearce JMS. Selected observations on amusia. Eur Neurol 53: 145-148, 2005

要旨を箇条書きすると
・失音楽には先天的なものと後天的なものがある
・脳損傷症例から研究が進められた
・少なくとも、音程を認知する経路とリズムを認知する経路がありそうである
・失音楽を起こす部位については、従来右側頭葉が関与するとされていたが、異なる報告も存在する。また前頭葉も関与しているようだ。
・先天性失音楽は音楽教育とは関係なく存在する

時々音程の高低が判断出来ない人がいますが、先天性失音楽の可能性があります。ただ、この分野の研究はあまり進んでいません。

それとは別に、音楽を認識できるのに、感情の応答が起こらない人がいて、高次機能の研究の分野で注目されています。私も、ヴァイオリンの先生から「芸大受験をする学生を教えているんだけど、テクニックはあるのに何の感情もなく弾いているの。本人も感情を感じていないみたい。」と相談を受けたことがあります。

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