横田敏勝先生

By , 2009年2月17日 8:10 PM

偶然、滋賀医科大学名誉教授の横田敏勝氏のサイトを知りました。私は以前、シューマンの手についてこのブログに書いたことがありますが、横田氏も「芸術の中の痛み」という連載など、私の興味ある分野で色々書かれているようです(氏の「音楽家の “使いすぎ症候群”」というエントリーでは、シューマンにも触れています)。

氏の「痛みの世界史」というコラムを読むにつけて、一度お話したかったとの念を強くしました。しかし、残念。平成 17年 2月 14日に、腎臓がんで急逝されたそうです。ただ、幸いなことに横田先生の書かれた文章を読むことが出来ますので、紹介しておきます。

滋賀医科大学名誉教授 横田敏勝先生

Post to Twitter


ラフマニノフと慢性疼痛

By , 2009年2月15日 3:58 PM

今回紹介する論文は、慢性疼痛を持ったピアニスト二人についてです。その偉大なピアニストとは、「Clara Wieck Schumann (1819-1896)」と「Sergei Vassilievich Rachmaninov (1873-1943)」です。Clara Schumann は Robert Schumann の妻としても知られています。Sergei Rachmaninov は、有名なロシアの作曲家でありピアニストです。彼のピアノ協奏曲を扱った「Shine」という映画を覚えている人も多いと思います。

論文「Hingtgen CM. The painful perils of pianists: The chronic pain of Clara Schumann and Sergei Rachmaninov. Semin Neurol 19: 29-34, 1999」には、この二人の慢性疼痛について詳細に記載されています。

Continue reading 'ラフマニノフと慢性疼痛'»

Post to Twitter


HIV

By , 2009年2月12日 6:30 AM

先日、当直で HIV/AIDSの症例を経験しました。

症例は 60歳くらいの男性。初診で一過性の意識消失で搬送されてきたのですが、診察すると軽度の意識障害が残存しているようでした。他に神経学的に異常所見なく、採血で CRP 10 mg/dlと炎症反応の上昇と軽度の肝・腎機能障害が見られました。髄液、尿検査、胸部レントゲン、頭部 CTなどのスクリーニング検査で異常がなかったので、敗血症に伴う意識障害を第一の鑑別として、血液培養を提出。念のため HIV抗体を提出して入院としました。

エンピリカルに抗菌薬を使用して様子を見ていたら、翌日血液培養からグラム陰性桿菌が検出され、後日 E. coli と判明しました。入院数日して、HIV抗体も陽性であることが判明しました (B型肝炎、梅毒の重複感染あり)。CD4陽性リンパ球数は 47 /μl と著明に減少し、ウイルス量も30万copy/mlと増加していました。その方は、専門施設に転院されました。

その他に、研修医時代に結核を合併した AIDSの若年男性を診たことがありますが、近年患者数が増加し、HIVは臨床現場でも身近になってきています。感染症専門医でなくても、最低限の知識が求められます。

そこで、国立国際医療センターのサイトでラーニングプログラムがあり、結構勉強になるので紹介しておきます。

国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター HIV/AIDS eラーニング・プログラム

Post to Twitter


By , 2009年2月7日 2:32 PM

ヴァイオリンを使ってやる芸がいろいろあり、例えば救急車のサイレン音を Doppler効果付きで表現したり、弓を股間に挟んでヴァイオリンをこすりつけて演奏したり、ドアが開く「ギー」という音を出したり、私もいくつか持っています。

楽器を使った芸を Youtubeから紹介です。

Continue reading '芸'»

Post to Twitter


リレンザ

By , 2009年2月6日 6:39 AM

 

以前紹介した、横田智之氏のサイトで、リレンザの開発についての話が書いてありました。時々、氏のサイトを訪れるのですが、本当に良い仕事をされた方だと思います。

楓梢庵日記 2006年の独り言

私はタミフル開発には関与していないが、一時期、リレンザの開発に関与したことがある。 リレンザは NA抑制剤としてタミフルよりも早く見つけられた薬剤である。 NA蛋白の X線による三次元構造解析により、NAの立体構造モデルを元に分子設計するという新しい手法によって合成された薬である。 1983年に Natureに合成の経緯と抗ウイルス活性を報告したオーストラリアの Von itzsteinらの論文は非常に注目された。タミフルを合成した研究者はノーベル賞をもらえないが、Von itzsteinはノーベル賞候補になっておかしくない。 私は彼が日本に来た時に親しく酒を酌み交わしたことがある。 リレンザはイギリスの製薬企業のグラクソ・スミスクラインで薬として市場に出された。 その後、この薬をまねて作られたのがタミフルである。 リレンザは水溶性に難があり、ヒトへは噴霧により直接ウイルスの増殖部位である気道、肺へ投与される。 一方、タミフルは経口薬として開発された。 副作用のことを考えるウイルス増殖部位にのみ投与する方が良いが、経口薬という手軽さが受けて、タミフルが市場では受け入れられている。

果たしてタミフルは H5N1に有効であろうか。 私はリレンザでヒト以外のインフルエンザウイルスを用いて抗ウイルス活性を測定したことがある。 それは馬インフルエンザウイルスを用いてである。 馬インフルエンザウイルスも時に大きな流行を起すことがある。 日本では 1971年に大きな流行があり、この年の 12月から翌年の 2月の東京での競馬レースにも大きな影響が出たほどである。 馬インフルエンザウイルスにはヒトと異なる H7N7、H3N8の二つの株が知られている。 リレンザはこの二つの馬インフルエンザウイルスの増殖をヒトのウイルスと同様に抑制した。 このことは NA抑制剤であるリレンザがヒトのインフルエンザウイルス以外の異なる N、Hタイプのウイルスも抑制することを示し、今流行している H5H1ウイルスにも有効性を示す可能性を示唆しているが、果たしてタミフルはどうなのであろうか。(060219記)

それにしても、リレンザが馬インフルエンザにも効くとはびっくりです。馬は体が大きいですから、どのくらいの量を使用するか考えただけでも大変そうですけどね。

Post to Twitter


第77回日本音楽コンクール

By , 2009年2月5日 6:58 AM

妹が、第 77回日本音楽コンクールの DVDを録画して送ってくれました。

私が勝手につけた順位も審査員と同じでした。少なくとも、本番の演奏を聴く限り、第 3位以下と、第 1-2位でかなり開きがあるように感じました。第 3-4位の方は、音程が不安定でしたが、非常に緊張していたこともあるのでしょう。実力が発揮できていないように見えたのが残念です。

第 2位は、先日お伝えした石上真由子さんの演奏。本人は楽しんで弾いていたのではないでしょうか。聴いていて面白く、聴衆賞を受賞したのもわかります。でも若いせいか、時折洗練されていない音がありました。まだ最年少だったらしいですし、あと数年すれば面白いでしょう。

優勝した瀧村依里さんは、納得いく演奏です。技術的に安定感があり、音楽的にも自然です。ただ、期待を裏切らない変わりに、妙に安定してしまっていて、もう少し演奏に遊びがあると良いように感じました。コンクールということもあったのでしょうか。

入賞者達のこれからの活躍を楽しみにしています。

Post to Twitter


カザルスホール

By , 2009年2月4日 7:58 PM

今年一番腹が立ったニュース。

 「室内楽の殿堂」カザルスホール、10年3月に閉館へ

2月4日12時17分配信 読売新聞

「室内楽の殿堂」として音楽ファンに親しまれた日本大学カザルスホール(東京・御茶ノ水)が、同大キャンパス再開発のため、2010年3月末で閉館することが4日、明らかになった。同大では現在の建物を取り壊す方針とみられる。

同ホールは、主婦の友社が日本初の室内楽専用ホールとして、名チェリストのパブロ・カザルスの名前を冠して1987年に開館。設計は建築家の磯崎新氏で、97年にはドイツ製パイプオルガンも設置された。

2002年、同社の経営難から日大に売却され、一時閉館したが再オープンし、学内行事のほか貸しホールとしてコンサートに使われていた。

同大では「パイプオルガンをどうするかなどは未定」としている。

カザルスホールを取り壊すとは何ごとでしょうか。

日本大学は芸術学部を有しているのですが、かくも芸術を軽く扱うのでしょうか。

私が今のヴァイオリンの師につくことを決めたのも、カザルスホールでの演奏に感動したからです。そして、ヴァイオリンを通じて、自分が最も不安定な時期を乗り越えることが出来たのです。

私にとっては、数々の名演奏家が演奏してきた聖地です。そこで弾いてはみたいけれど、私如きが演奏することが先人達への冒涜になる気もします。でも、ホールがなくなるのなら、そこで演奏してみたいです。日本大学カザルスホールの公式サイトを見ると、50万円くらいで借りられそうです。本当にするかはわかりませんけど。何か、感情の整理がついてません。

Post to Twitter


シューマンの手<2>

By , 2009年2月3日 12:51 AM

以前、シューマンの手<1>と題し、Henson氏らによる後骨間神経麻痺説を元に、長々とシューマンの手の障害の検討をしました。

実は、その後、1991年の Annals of Hand and Upper Limb Surgery という雑誌にシューマンの右手についての論文が掲載されました。Henson氏らの論文とは別の視点から検討しています。

Continue reading 'シューマンの手<2>'»

Post to Twitter


Mozart, Duo

By , 2009年2月1日 6:11 PM

モーツァルトは、ヴァイオリンとヴィオラのデュオも残しています。しかし、これにはいささか裏事情もあり、ミヒャエル・ハイドンの作曲が間に合わなかったため代筆したのが、2曲の「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲」だとされています。ミヒャエル・ハイドンは、<音楽の父>ことヨーゼフ・ハイドンの弟です。

Continue reading 'Mozart, Duo'»

Post to Twitter


医師と棋士

By , 2009年2月1日 1:06 PM

医師免許を持った棋士がいることを初めて知りました。といっても、将棋ではなく、囲碁の分野です。

坂井秀至氏は、灘高校から京都大学医学部へとエリートコースを歩んでいました。当初、産婦人科を志望していたらしいのですが、研修医を始めるに当たって、医師をやめて囲碁棋士となることにしました。変わった経緯で囲碁棋士になりましたが、囲碁界でもなかなかの成績を残しているようです。

彼は医師国家試験に合格していますので、医師として仕事はしていなくても、今でも医師免許を持っている筈です。医師として働いていたら私の1学年上に当たることになります。

彼が医師を辞めた話が Wikipedia に載っており、非常にユニークでした。

Wikipedia-坂井秀至-

医師国家試験合格後の、01年6月から京都大学付属病院に研修医として配属が決まっていたが5月からのオリエンテーションで、朝7時から夜の12時まで働き詰めであることを知り、囲碁を学ぶ時間が無くなることが明らかになると、棋士の夢を諦めきれず関西棋院にプロ入り試験を希望する。

同じ医学を志した人間として、もし囲碁が多少なりとも理解できるようになったら、彼の棋譜を見てみたいです。囲碁はわからないから、梅沢由香里の碁で勉強してみようかなぁ・・・。でも、もう少し将棋を勉強してからです。せめて初段。


(参考) e-碁サロン 会見ルーム

Post to Twitter


Panorama Theme by Themocracy