感銘を受けたコメント

By , 2007年10月5日 12:47 AM

前回、「レナード・バーンスタイン 音楽のよろこび」という DVDを紹介しました。

それに対する、はり屋こいしかわ先生のコメントに感銘を受けたので、紹介させて頂きます。

偉大な音楽家を語るときには、いろいろな切り口があると思いますが、バーンスタインは教育者としての功績が大きいですが、彼の教育の魅力は、何かをなすきっかけを夢を以って示すことが出来たことではないかと思います。種を撒く事、とでも言ったらいいでしょうか。
私の大学時代の恩師が、「教育で大切なことは、種を撒くことで、苗を植えることでは必ずしもない。」という主旨のことを昔おっしゃったとき、そのときは月並みな内容に感じましたが、この頃になって、その本意をもっと考えてみるようになりました。種は自分の芽を出しうる畑となるまで何年も土で滋養して、そして時を得て初めて根を張って芽を出す。苗は不幸にして畑が合わなければ直ぐに枯れてしまう。そんなようなことを伝えられたかったのかなと思っています。
バーンスタインと外れてしまいましたが、彼にもそんなところがあるかなと思っています。
表現者としての彼も、ヘンな言い回しですが情緒の筋道-この短調のフレーズに喜びがあり、このリズムに神性がある-みたいな、そんな聴き手へも教育的な面があるように感じます。勿論押し付けがましくなく、自然にそう感じられるのは彼の芸術の特性の一部ではないかと思います。音楽におけるプラグマティズムの美しい理想の具現とでも言いましょうか。例えば彼の演奏によるマーラーあたりは、音の洪水のような彼の交響曲の聞き方を教えてもらったように思います。
冗長になりました。すみません。

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レナード・バーンスタイン 音楽のよろこび

By , 2007年10月2日 10:58 PM

久しぶりに音楽の事が語れます。といっても、ワインを一本空けた後の酔っぱらいトークですが。

最近「レナード・バーンスタイン 音楽のよろこび~オムニバス~」というDVDを購入しました。

バーンスタインは、ピアニスト、指揮者、作曲家として幅広い才能を発揮した人物です。

私はバーンスタインの語りが好きで、
①DVD「答えのない質問」→チョムスキーの言語学と音楽の対比
②「Young people’s concert」:バーンスタインが子供向けに行った講義で、「クラシカ」という有料放送で見られます。
③交響曲全集:バーンスタインがベートーヴェンの各交響曲を語った後、各曲が演奏されます。「クラシカ」で見られます。
などを見て感動したものです。

今回のDVDでは、第一話が「ベートーヴェンの『第5交響曲』」。ベートーヴェンが残した下書きの草稿を再現し、現在残された交響曲と対比します。ベートーヴェンが何を考え、どう書き換えて現在に至ったかを知りたければ必見です。ある草稿をバーンスタインは「これはピアノソナタ『悲愴』に似ていて一番好きだ」と語っています。また、運命の最初の草稿は、出だしの部分にはフルートが加えてあったのですが、曲の雰囲気が全然違います。バーンスタインによると、ベートーヴェンは主題が男性の声域に収まるようにフルートを除いたとのことです。聴いてみると一目瞭然です。このような話題が本DVDでは満載です。

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誕生日ネタ

By , 2007年10月2日 1:02 AM

Wikipedeiaで自分の誕生日を検索すると結構面白い事実を知ることが出来ます。

ちなみに、私の誕生日

2122年 – ドラえもん、ネズミに耳をかじられる(『ドラえもん』)

でした。どうでも良いネタでしたが・・・。

みなさんの誕生日はどうでしたでしょうか?

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(新) 細胞を読む

By , 2007年9月29日 11:04 PM

「(新) 細胞を読む (山科正平著、講談社BLUE BACKS)」を読み終えました。

電子顕微鏡写真を主として紹介した本です。最初に、大まかな体のつくり、電子顕微鏡の原理などを説明し、一般的な細胞モデルを解説した後、個々の細胞を見ていきます。

ブルーバックスで小型サイズなので持ち運びに便利ですし、本の半分は写真などで構成され、見開き 2ページで一つの項目を解説してあるので、非常に読みやすくなっています。

本書の帯に、福岡伸一氏が「これは至高の芸術作品である」と賛辞を寄せています。私も全くの同感です。マクロでの人体の美しさというのは、多くの絵画や彫刻で美しく描かれてきたことからもわかるように、普遍的な概念だと思います。これは、マクロの視点だけではなく、ミクロの世界でも言えることではないかと感じました。それほど、電子顕微鏡でみる世界は魅力的です。

著者の文章は非常に読みやすく、文中至る所に著者の豊富な経験やユーモアを感じます。最後に引用するのは、その例です。

(67) よだれを生み出す半月

粘液は粘性が高いばかりか、水を吸って膨潤するという性質がある。そのため、電顕でも光顕でも、分泌顆粒の内容が非常に明るく、膨れあがって見えるのが特徴だ。前に見た杯細胞はそうした顕著な特徴を示していた。しかし、唾液には粘液だけではなく、消化酵素、免疫グロブリン、抗菌作用を持つ物質なども含まれ、こうした成分は粘液に比してサラサラしていることから漿液と総称されている。前に見た耳下腺は漿液を産生する外分泌腺で、その細胞では分泌顆粒が明瞭な限界膜に包まれ、内容も濃く染まっている。

唾液腺の細胞では、粘液と漿液の産生が明瞭に分業されている。その上、一つの腺房に両者の細胞が混在していることも珍しくはない。ヒトの顎下腺や舌下腺では、こうした混合像がよく目にされる。一つの腺房に両者が混在すると、明るい粘液細胞に、濃染する漿液細胞が半月状にへばりつくという、特徴的な像を呈してくる。発見したイタリア人科学者名を付けてジアヌッチの半月として有名で、古来、教科書に記載されてきた。

ところがこの半月、標本を作製する際に粘液細胞が大量の水を吸って膨潤した結果、漿液細胞が押し出されてやむなく半月状をなすにいたった人工産物で、自然の状態では半月は存在しないことが判明してきた。人工産物ともなれば、お月さんの有り難さもかなり落ちてくる。

ジアヌッチは優秀な医師だったが、不倫をした妻に砒素を飲まされて非業の死を遂げたらしい。そのため、著者が、半月は人工産物だと国際学会で発表したとき、あるイタリア人に「ジアヌッチは二度殺された。二度目に殺したのはあなただ」といわれて、返答に窮したことがある。

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演奏家の手

By , 2007年9月14日 10:16 PM

「演奏家と手」というテーマを考えると、様々なアプローチがあると思います。

医学的アプローチから、今のところ資料がそろっているのが「パガニーニの手」、現在資料を集めているのが「シューマンの手」。それらについては、今後の約束として、今日紹介するのは職業病としての手の症状です。

練習や演奏により体を痛め、悩んでいる演奏家は多いと思います。しかし、それに対する医学的知見は乏しいのが現状です。しかし、演奏家の手の症状についてまとめた論文を見つけました。発表したのは、世界最高の病院の一つ、Massachusetts general hospital (MGH) の医師達です。

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神経内科-頭痛からパーキンソン病まで-

By , 2007年9月14日 6:50 AM

「神経内科-頭痛からパーキンソン病まで-(小長谷正明著、岩波新書)」を読み終えました。

本書では、神経内科で扱うメジャーな病気がほぼ全て、わかりやすく解説されています。読んで頂ければ、私が普段している仕事の内容を理解して貰えると思います。

最初に簡単な神経系の解説があるので、読みやすくなっています。扱う病気は、頭痛、失調、末梢神経障害、脳卒中、脳神経麻痺、パーキンソン病、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、筋ジストロフィーなどです。

例にとって、顔面麻痺の項を紹介しましょう。本書のだいたいの雰囲気がわかる筈です。著者が顔面麻痺になったときの話です。ユーモアたっぷりの文章です。

 翌朝、洗面所で口をすすぐと、左口角から水が漏れる。歯医者で局所麻酔をされたあとの顔面神経が一時的にマヒしてこうなったなと思った。次の瞬間、エッと思って鏡を見る。左の唇はだらしなく開きかげんで、左頬にはエクボが弱々しくしかできない。口を開くと右側に引っぱられてゆがんだ口となる。左眼の閉じる力も弱い、顔を洗うと眼の中に水が入ってくる。ジャーンと頭のなかで音がする。顔面神経マヒだ、専門領域の病気になってしまった。ついこのあいだ、この病気についての論文を共同研究で発表したばかりだというのに、まさにブラックユーモアだ。つぎに考えたことは障害部位はどこか、中枢性か、末梢性かということだった。末梢性ならば片方のおでこにしわが寄らないが、脳のなかの神経支配の関係で、中枢性ならば両方に寄る。で、眉をつりあげてみる。なんと両側に寄る。ふたたびジャーンである。脳腫瘍とか、脳血管障害、脱随、肉芽腫などとまがまがしい病名が浮かんでくる。専門分野の病気というのはいやなものだ、知識がありすぎる。

朝食を並べている家人に言う。

「おい、ファチアリスレームングだ」

ドイツ語で顔面神経マヒのことだ。幸か不幸か家人も神経内科医である。さっそく、目を閉じろ、口を閉じろ、舌を出せ、あっちを見ろ、こっちを向けと診察をはじめる。

「あら、いやだ、ほんとうだ」

その診察のしかたは正しい方法ではないというと、うるさい患者ネェと返ってくる。問題のおでこの力はこころもち左側が弱いという。

そういえば、数日前から子供の声がやたら左の耳にひびいていた。これも症状であったのだ。

悶悶としてその日曜日を過ごし、あくる月曜日、もうどんなにつくろうとしても左側の額にしわは寄らない。中枢性の心配はもうしなくてもよい。症状が出そろうのに時間がかかったのだ。末梢性だから経過はいいだろう。ひと月もすれば治るであろうと思いはしたが、外出する気にならない。

「それでも、いちおう大学に行って、念のため検査をしてもらったら」

「いやだ、自分の分野だからよくわかっている。治療法もわかっているし、たいした薬もいらない。大学に行ったらメイヤー教授に筋電図をされる。痛いからいやだ。アホなレジデントがルンバールだ、血管撮影だ、CTだなどといいかねない、だからいやだ」(略)

しばらく休むことにしたが、実験のあとかたづけと、そのあいだに家で整理するデータをとりに、明くる日、大学に出た。自分のオフィスに入ろうとした瞬間、となりの部屋からメイヤー教授があらわれた。

「おや、君の顔はどうしたの?」

廊下でかんたんに診察し、つぎの瞬間、のたまった。

ただちに、筋電図を!


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文藝春秋

By , 2007年9月13日 8:39 PM

先日、文藝春秋10月号を買いました。なぜなら特集は「最高の医療」。

その中に「病院を壊すのは誰だ」という論文が掲載されていました。医療崩壊について非常にまとまっていたので、要旨だけ紹介しようかと思ったのですが、ほぼ全文をアップしたブログがありましたので紹介したいと思います。是非読んでみてください。

産婦人科医療のこれから-ルポ医療崩壊 病院を壊すのは誰だ-

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生命とは何か

By , 2007年9月12日 7:23 AM

「生命とは何か-物理的にみた生細胞 – (E. シュレディンガー著、岡小天、鎮目恭天訳、岩波新書)」を読み終えました。

シュレディンガーといえば、私には難解すぎて理解出来ませんが、量子力学における波動方程式が有名です。その他、シュレディンガーの猫という有名な思考実験があります。

本書では、物理学と統計学の関係がまず示され、次いで染色体など生物学的知見が紹介され、その後、物理学の立場から生物学へのアプローチが行われます。例えば、突然変異の起こるメカニズムを量子論から説明しています。議論が進むに連れて、内容はどんどん哲学的になっていきます。1943年に書かれた本ですが、放射線と突然変異など、後の核の時代を先取した議論もなされています。

エントロピー (無秩序さ) に関する議論では、生物体は環境から「秩序」を引き出すことにより維持されていることが示されました。私の部屋がどんどん散らかっていき足の踏み場もなくなっていくのは、私が部屋から秩序を引き出し、その分部屋が無秩序になっていっているだけで、自然の法則からすると、当然の帰結なのかもしれません。その分、私の秩序が増している筈です。

この本の感想を書いている方のサイトを見つけました。松岡正剛の千夜千冊というサイトです。本書の内容を知るのに、読んでみると良いかもしれません。

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第6回東京MS研究会

By , 2007年9月9日 10:47 AM

2007年9月7日、第6回東京MS研究会に参加してきました。

第6回東京MS研究会
平成9月7日(金)18:50~
ザ・プリンスパークタワー東京 B2「コンベンショナルホール」

講演
「衛生仮説と多発性硬化症」
国立精神・神経センター神経研究所 免疫研究部長 山村隆先生

シンポジウム テーマ:多発性硬化症と抗アクアポリン4抗体
講演1:「抗AQP4抗体測定系と抗体陽性例の臨床的特徴について」
新潟大学神経内科准教授 田中恵子先生

講演2:「Neuromyelitis opticaとAquaporin-4~診断及び病態における意義~」
東北大学大学院医学系研究科 多発性硬化症治療学講座 教授 藤原一男先生

残念ながら、最初の講演に間に合わず、シンポジウムからの参加となりました。非常に勉強になったので、聞いてきたいくつかの内容を紹介しようと思います。

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ベートーヴェンの肺炎説

By , 2007年9月6日 10:00 PM

馬券オヤジ氏からの情報。

 ベートーベン、肺炎治療で死期早める? 法医学者が仮説
2007年09月06日20時58分

ドイツの大作曲家ベートーベン(1770~1827)が死の約4カ月前にかかった肺炎の治療が死期を早めた可能性が高いとの仮説を、遺髪を鑑定したオーストリアの法医学者がまとめ、米カリフォルニアのサンノゼ州立大のベートーベン研究専門誌の最新号に掲載した。

仮説を発表したのはウィーン医科大のクリスティアン・ライター教授。00年の米研究機関による遺髪鑑定でベートーベンが鉛中毒だったとの結果が出ていたが、ライター氏は特殊なレーザーを照射する方法でさらに詳しく分析。毛髪が1日に0.3~0.4ミリ伸びる性質を利用し、肺炎などの治療が行われた約4カ月間について、鉛の量の推移を調べた。

ライター氏によると、医師が肺炎の治療に処方した薬には微量の鉛が含まれていた。その後、大量にたまった腹水を、腹部に針を刺して計4回抜いた。傷口にも鉛を含有するクリームが塗られた湿布が使われた。鑑定の結果、それぞれの治療直後に遺髪の鉛の量が著しく増えていたのが確認されたという。

医師はベートーベンの肝硬変が悪化していたのを知らずに、当時では普通だった方法で治療したという。ライター氏は「治療で体内の鉛の量が増加、肝臓が機能しなくなり、死に至った。別の治療を施していれば、数カ月以上長く生きたかもしれない」と主張する。

これに対し、他の研究者らは毛髪鑑定だけでは不十分でさらに詳細な分析が必要としている。

ベートーベンは肺炎治療以前に鉛中毒になっていたとみられ、長年苦しんだ聴覚障害と鉛中毒との関連も指摘される。

昔、「ベートーヴェンの遺髪 (ラッセル・マーティン著、高儀進訳、白水社)」を読みましたが、遺髪の鑑定者らのグループらの報告のようですね。論文の雑誌名がわからないのですが、暇なときに探してみようかと思います。

ベートーヴェンの遺髪があるのに、DNA鑑定結果が騒ぎにならないのは、アルコール性肝硬変なので、DNA鑑定では診断に至らないのかな?と思っています。また、耳硬化症だったとすれば、難聴の原因もDNA鑑定では診断が付かないでしょう。

この肺炎治療云々という話は、眉唾だと思っています。抗菌薬のない時代、肝硬変末期で肺炎になったとすれば、肺炎自体か、低アルブミン血症に伴う心不全の合併で短期間のうちに直接死因になっていた可能性が高いと思うからです。この全身状態の肺炎で、抗生剤なく4ヶ月の治療が続くというのは、考えにくいと思います。とはいえ、実際に論文を読んでみないとなんともいえないのですが。

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