FIRST AUTHOR’S

By , 2012年11月11日 8:45 AM

FIRST AUTHOR’Sというブログを見つけました。日本人の論文著者が、自身の論文を要約したものをまとめたサイトのようです。そのせいか、論文の内容がかなり詳細に記述されています。

FIRST AUTHOR’S

読もうと思っていた、球脊髄性筋萎縮症に対するナラトリプタンの効果を示した論文の要約もありました。

ナラトリプタンはCGRP1の発現抑制を介し球脊髄性筋萎縮症を抑止する

専門外で内容が難しい論文も多いけれど、自分の専門分野の論文もたまに登場するので、定期的にチェックしていきたいと思います。

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イトーヨーカ堂

By , 2012年11月10日 7:50 AM

東洋経済 2012年11月3日号の「自然災害 M9のマネジメント」という記事を読みました。噂には聞いていたけれど、ここまで迅速な対応がなされていたとは知りませんでした。このイトーヨーカ堂の対応は、お手本になりますね。記事によると、阪神・淡路大震災から長年かけてブラッシュアップしてきたそうです。

果たして自分が勤務する病院だと、どれだけのことが出来るだろうかと思いながら読みました。こうした企業を見習っていかないといけません。

東洋経済誌

東日本大震災発生直後のイトーヨーカ堂の対応

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Nature

By , 2012年11月9日 7:30 AM

Nature誌の “Editorial” に森口騒動を通じたメディア批判が掲載されました。

 Bad press

掲載された当時から、ネットでは相当反響が大きく、賑わいました。

日本語訳をした方も複数います。下記のサイトでわかりやすく纏めてくれているので、紹介しておきます。

“Bad press”―Natureに掲載された日本のメディアに対する批判

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ネタ系論文

By , 2012年11月8日 7:30 AM

論文には、何も堅苦しいものばかりじゃなくて、ユニークな発想のものがたくさんあります。既に削除されたようですが、以前ネットでは「プロ野球選手と結婚する方法」という長文の卒業論文が話題になりました。今回、ユニークな論文を集めた記事が話題になっていたので、紹介します。

「ウルトラマンに正義はあるか」「成功しやすい告白とは」 ユニークなテーマの論文を紹介

例えば、鴨川カップルの“等間隔の法則”に関する調査では、祇園祭の時期に京都の鴨川でカップルが並ぶ間隔について考察しています。私が最も興味を持ったのは、ブラジャー着用時と非着用時の運動中の乳房振動特性恋愛における告白の成否の規定因に関する研究です。「出会って 3ヶ月以内に告白する」「告白時に交際の申し込みをはっきり伝えることが成功者のパターンとして現れている」「成功者の多くは夜に告白を行っている」ということらしいので、実践してみようと思います。この論文にもっと早く出会っていれば、私がこの歳まで独身でいることもなかったでしょうに・・・ orz

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避難ママ

By , 2012年11月6日 8:54 PM

郡山時代の同僚の奥様が、震災について手記を残しています。

同僚から、奥様のことについて聞いたことが無かったから、「こんなことがあったのか」というのを初めて知りました。

その同僚と奥様は、郡山と大阪で未だに二重生活をしています。是非読んでみてください。

 避難ママのお茶べり会 手記その6

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ポリーニ・パースペクティヴ 2012

By , 2012年11月5日 7:30 AM

11月 2日にポリーニのコンサートに行ってきました。

ベートーヴェン―シュトックハウゼン 大ホール

2012年11月2日(金)19:00開演

シュトックハウゼン:ピアノ曲VII <曲目変更>

シュトックハウゼン:ピアノ曲IX <曲目変更>

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第24番 嬰ヘ長調 op. 78「テレーゼ」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第25番 ト長調 op. 79

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番 変ホ長調 op. 81a「告別」

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op. 90

*シュトックハウゼン:ピアノ曲Ⅹが上記2曲に変更となります。

ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ

シュトックハウゼンの音楽は、私はこの類の音楽を普段聴かないのでわからなかったけれど、ポリーニの音に対する繊細さはよく伝わって来ました。ポリーニの演奏を生で聴くのは初めてでした。

そして目的のベートーヴェン。まずソナタ第 24番はテレーゼは、あまり出来が良くなく、指がもつれてリズムが壊れたりしていました。ポリーニのおっかけをやっている人に聞くと、「いつも出だしはこんなものだよ」と。第 25番はやや持ち直したものの、しかし期待した演奏には程遠かったと思います。

後半に入ると、徐々にエンジンが入ってきたようでした。まずは私が現在ハマっている第 26番「告別」。お気に入りのバックハウスの演奏を毎日通勤の時に聴いていて、特に第 3楽章「再会」は、実験でテンパった時にいつも頭の中をグルグルと回る曲になっていました。

・Beethoven Piano Sonata No 26 Op 81a Les Adieux 1 Das Lebewohl (Les Adieux – The Farewell)


・Beethoven Piano Sonata No 26 Op 81a Les Adieux 2 Abwesenheit (L’Absence – The Absence)

・Beethoven Piano Sonata No 26 Op 81a Les Adieux 3 Das Wiedersehen (Le Retour – The Return)

で、ポリーニの演奏は、この上なく情熱的でした。ひたすら前へ、前へ!演奏としてはリスクが高く、いつ崩壊してもおかしくなかったのですが、それだけにポリーニの滾る思いが存分に伝わってきました。第 3楽章「再会」の演奏では、戦火を逃れた親友ルドルフ大公と再会したベートーヴェンの胸の高鳴りを感じました。

演奏は尻上がりに良くなり、第 27番も素晴らしかったです。アンコールはベートーヴェン「6つのバガテル」から op. 126-3, 4でした。会場はスタンディングオベーションでした。会場にはカメラがたくさんあって、NHKで一部放送するそうですので、興味の有る方は是非御覧ください。

 12月17日(月)【16日(日)深夜】午前0時~午前4時
プレミアムシアター
◇マウリツィオ・ポリーニ 日本公演
~ポリーニ・パースペクティヴ2012~ から

<曲 目>
Il rumore del tempo[日本初演](マンゾーニ)
弦楽四重奏曲 第3番「グリド(叫び)」(ラッヘンマン)
ピアノ・ソナタ 選集(ベートーベン)  ほか

<演 奏>
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
【ベートーベン作品の演奏】

クリストフ・デジャルダン(ビオラ)
アラン・ダミアン(クラリネット)
ダニエル・チャンポリーニ(打楽器)
チョー・ジョー(ソプラノ)
【マンゾーニ作品の演奏】

ジャック四重奏団
【ラッヘンマン作品の演奏】 ほか

収録:2012年10月23日、11月2、7、13日
サントリーホール

某千葉県 K総合病院の集中治療科のトップに内定した、知り合いのブリスベン先生 (仮名) が、エリザベート及びロン・ティボーコンクール第 2位のヴァイオリニスト成田達輝氏を会場で紹介してくれて、コンサートが終わってから 3人で飲みに行きました (この前日、ブリスベン先生とプロ棋士の橋本八段と私の三人で酒を飲んだので、ブリスベン先生とは2日連続の酒になりました (^^;)。

新橋に移動して、徳壽という焼肉屋でさんざん酔って、3人で芸術論を語り合いました。一流音楽家の話はとても新鮮でした。成田氏はジャン・ジャック・カントロフの弟子らしく、面白い話をたくさん聴かせてくださいました。今度は成田氏の演奏会を是非聴きに行きたいと思いました (残念ながら今回の来日公演はチケット完売で手に入らず)。

・ロン・ティボー国際音楽コンクール(成田達輝)

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国内留学を終えて

By , 2012年11月4日 2:58 PM

10月31日をもって、2年間の国内留学を終えました。

基礎研究は全くの初心者の状態で国内留学し、当初は実験失敗の連続でした。一日一善という言葉はありますが、一日一つは大きな失敗をしでかし、皆様に大きな迷惑をかけました。私がしでかした失敗で、一冊本が書けます。

しかし、ラボに行って 1年くらいすると、徐々に実験がうまくいく事が増え始め、手を動かすことが楽しくなりました。国内留学を終える頃には、他の研究者達と同じくらいのペースでデータを生み出すことが出来ていたのではないかと思います。2年間でこれだけスキルアップしたので、もう少し時間があればもっと色々なことが出来たのかもしれませんが、臨床医としてのスキルを落とすわけにはいきませんので、戻るには丁度良い時期でしょう。

この 2年間、研究生活に身を置いてみて、過去に「D教授の言葉」という随筆で紹介した言葉の素晴らしさをますます感じました。現在読んでいる「ラモニ・カハール」という本の冒頭でも、萬年甫先生が「D教授の言葉」を引用していますね。

[増補] 神経学の源流 2 ラモニ・カハール (萬年甫編訳, 東京大学出版)

私が学生時代に読んで深い感銘を受けた文章のひとつに安騎東野氏の「D教授の言葉」がある。安騎東野という名が、柿本人麿が安騎野でよんだ「ひむがしの野にかげろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ」(万葉集巻I)をただちに連想させ、この歌が私のすきなものであったので、この人の随筆にも興味をもち、「欧州の雀」、「向日葵」、「歩行者」、「農村復興」と次々に発行される著書には必ず目を通していた。「D教授の言葉」は「向日葵」の中にある。

それは昭和 14年に書かれたもので、安騎氏がベルリンに 2年在留し、それを終えて帰国直前の主任教授の D氏と一夕を過ごした時の会話である。話題は日本人の独創力をめぐって進む。D教授はいう。「私は日本人の独創力を本質的には高く考えている。それだのに日本には、例外的の 2, 3の人達を除けば、明日の文化を約束するような面白い芽が生えてきていないようですね。この点について、私は君とよく考えてみたいのです。私はこの点について、日本のどこが悪いのかはもちろん知らない。だがもし君の御参考になるのならば、自分の科学に態度なりまたは研究室の指導なりについてお話ししましょう」と前おきして、「科学というものは常に現象から始めなければいけないと私は思うのです。もちろんそんなことを新しくいえば、君はあたり前だといって笑うかもしれない。しかし時にそれが笑いごとでない場合があるのです。というのは往々若い科学者は、自分の眼で見た現象と、文献で読んだ知識を混同するのです。しかし、もしある科学者が彼の文献で読んだ知識と、自分の眼で見た現象とを同等に評価するようになったらば、私はその科学者の生命はもうその時終わったものと考えるのです。科学者は常に現象の発見からはじめて行かなければならないと思う。それからすぐそれについて考えてみて、研究をすべきだと思うのです。私は決して科学者に文献を読むなというのではありません。ただ私だけの考えでは科学者の文献を読む時期が問題なのです。私はこの時期について常に 2つの種類を分けるのです。第 1の種類というのは文献を現象の発見の道具として扱うものです。もちろん自然現象というものは四六時中自分の身辺に始終起こっているのですから、気をつけてさえいれば、面白いものを発見できないはずはないのですが、もしそれにを発見できないような場合には、というよりも自分の気づかなかった現象に他人が気づいているかもしれないから、そういう現象の発見ということには、文献は必要であるのです。ただこの時一番注意しなければならぬことは、この場合できるだけその現象に対する他人の解釈は読まないことです。いい換えれば緒論や結論は読んではいけないのです。ただ実験の成績、変化現象だけを読むだけで、たくさんなのです。この場合文献は辞書と同じもので、いくら辞書をひいたといっても、すぐうまい文章が書けるというものではないのです。だから現象の発見ということがやはり主たる目的なのです。自分の興味ある現象すら発見していないのに文献を読むということは全くの無意味です。現象を見てすぐ文献に取り付いてもまだ早いのです。その現象について考え、研究がほぼ目鼻がついてからはじめて読むべきなのでしょう。いやその時期にこそはぜひ読まなければいけないのです。この時期が私のいう第 2の種類なのです。この時こそ前人がそれについてどう考えていたかもある程度までは読むべきで、それによって自分の研究が科学全体でどの位置にあるかということをはっきりさせる必要があるのです。」東野氏は以上のことを認めながら、しかし現象についてある程度まで自分だけで研究してしまって文献を探して見たら、そんなことはもう前人が詳しくやってあったというようなことはないだろうかと質問する。それに対する答は明快である。「決して!もし 1人の人が本気で自分自身の考え方で研究していったとするならば、それらの仕事は各人各様の特質をもってくるはずです。私はこの指紋のような仕事を尊敬します。また将来の科学こそは、現在のこの指紋のような仕事によってのみ進められるのだと確信しています。もし他人の仕事と全く同じになるという危険を云々するならばそれはむしろ文献ばかり読んでいる人の仕事にだけそれがあると考えなければならないのだと私は信じるのです。・・・研究者それ自身は本質的に独創力のある人であったにしても、その人があまり文献を読みすぎたという態度の誤りで、その人の研究には時として一生芽をふかない場合もあるのです・・・。」

以来、私はこの文章をことあるごとに思い出した。しかし、学生時代にはそれは活字の世界のことであり、あくまで二次元のものとしてしか受取れなかった。それが昭和 24年医学部を卒業して東大脳研究所に入り、小川鼎三先生のもとで研究生活をはじめて見ると、この言葉、ことに「まず現象から」、「文献を読む時期」、「指紋を押したような仕事」の 3つが三次元、四次元のものとして実感できるようになった。そしてこれに共感するからには、是非実行してみようと心がけた。

さて、私は 11月から大学病院に復帰する訳ですが、現象をみることの重要性というのは、臨床においても同じだと思います。そういう意識を持って、臨床現場に臨みたいと思います。

そして 11月 2日にかつて机を並べて実験した同僚から嬉しい連絡をもらいました。医学部編入試験を受け、見事合格したそうです。私を反面教師にして頑張って欲しいです。

最後になりますが、ご指導頂いた方々、本当にお世話になりました。ありがとうございました。

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研究費

By , 2012年10月30日 7:30 AM

いつの時代も、研究費は研究者の悩みですが、第一次大戦後のドイツ科学界を資金面で支えた日本人が、ショートショートで有名な星新一氏の父親、星一氏だったことを初めて知りました。

星一の国際貢献 ドイツ科学界を救った日本人

2012.10.20 09:02
星一が創立した星薬科大学(星薬科大学HPから)星一が創立した星薬科大学(星薬科大学HPから)

この度の山中伸弥氏に対するノーベル医学・生理学賞決定の朗報は、基礎研究に携わる研究者の悪戦苦闘に世間の関心が向けられた点からもまことに意義深い。そこで当欄では、かつてノーベル賞受賞者を輩出したドイツ科学界に惜しみない支援を続けた一人の日本人を紹介しておく。

その人の名は星一(ほし・はじめ)、「ショート・ショート」と呼ばれる掌編小説のジャンルを確立した作家、星新一氏の実父である。彼は若き日に渡米、苦学してコロンビア大学を卒業し、明治38年に31歳で帰国して製薬会社や薬科大学を創設。一方で後藤新平と親しかったため、後藤の政敵から仕組まれたさまざまな妨害と戦いながら、激動の時代を果敢に生き抜いた快男児である。

その彼が後藤から、第一次世界大戦に敗北したドイツの科学界が実験用のモルモット一匹を買う金にも難儀しているとの話を聞く。この時である。星はこれまでドイツ科学界から日本が受けた恩恵に報いようと、自分が援助する旨を申し出る。金額は200万マルク、この破格の支援金は横浜正金銀行を通じてドイツに送金された。

ドイツでは星の援助を有効に活用すべく、「日本委員会(星委員会)」を設立、委員長にフリッツ・ハーバー、委員にはマックス・プランクなど錚々(そうそう)たるノーベル賞受賞者が就任。かくて、風前の灯(ともしび)だったドイツ科学界は再建される。当時、世界から冷淡視されていたドイツの学者たちが東方の国からの格別の援助に感極まった様子が目に浮かぶ。

大正11年のこと、星はドイツ政府から招待を受ける。エーベルト大統領は晩餐(ばんさん)に招いて記念品を贈った。さらには星に名誉市民権を与えて謝意を表した。まさに国賓(こくひん)に準ずる待遇を受けたが、個人的な見返りは断っている。

星はさらなる援助の必要を感じ、インフレに影響されない邦貨で以後3年間にわたって追加支援した。以上、その推計総額は現在の邦貨で20億円を超える。

世界の進運に寄与する学問がいかに貴いものか。その学問の危機を国境を超えて救った日本人がいたことは、わが国の誇りとして後世に伝えたいものである。(中村学園大学教授 占部賢志)

ドイツの研究者たちの喜びようが目に浮かぶようです。

ちなみに、星新一氏の母方の祖父は、東京帝国大学医学部教授の小金井良精です。かの有名なワルダイヤーに認められていた方ですね。小金井良精は森鴎外の妹、喜美子と結婚し、星新一氏の母「せい」を産みました。このように、星新一氏の祖先を調べてみると、出てくる名前が一々凄すぎます。

星新一氏が父や祖父のことを伝記に書いているようなので、時間を見つけて読んでみようと思います。

明治・父・アメリカ (新潮文庫)

人民は弱し 官吏は強し (新潮文庫)

祖父・小金井良精の記 上 (河出文庫)

祖父・小金井良精の記 下 (河出文庫)

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脳からみた心

By , 2012年10月27日 11:24 AM

「悩からみた心 (山鳥重著、NHKブックス)」をアメリカ旅行中に読み終えました。山鳥重先生は、神経心理学の権威です。

本書は「言葉の世界」「知覚の世界」「記憶の世界」「心のかたち」の四部構成からなっています。Aさんから Zさんまで、脳損傷によってある機能が失われた患者さんを分析することで、脳の働きを掘り下げていきます。非常に詳細な専門的分析をしているにも関わらず、平易な文章で、解剖学用語もほぼ登場しません。音楽家の原口隆一・麗子氏が著書「歌を忘れてカナリヤが」の中で本書を紹介していたことからわかるように、医療関係者以外の方にも読みやすい本なのではないかと思います。また、ソシュール記号論なんかも登場するので、文学や哲学が好きな方が読んだら面白いかもしれません。

内容が少しでも伝わるように、目次を紹介しておきます。

目次

はじめに-脳と心の関係

I 言葉の世界

(1)言葉は意味の裾野をもつ

言葉に対するでたらめともいえない反応の仕方 言葉は意味の骨格のまわりに広い裾野をもっている

(2)語の成立基盤

名前と物が重ならない ソシュールの理論を裏づける

(3)語は範疇化機能をもつ

一つの物にしか名前をいえない 人間は物の一般的属性を切り出す能力をもつ

(4)「意味野」の構造

物の名前を言えない 語は意味野の部分である

(5)「語」から「文」への意味転換

語はわかるが「文」が理解できない 「文」は語の単純加算ではない

(6)自動的な言葉と意識的な言葉

日常的な言葉は壊れにくい 注意を集中すると言葉が理解できない

(7)言語理解における能動的な心の構え

文脈を理解していて内容を理解していない 言葉の受動的理解から能動的理解へ

(8)状況と密着した言葉

目的意識をもつとうまくいえない 言葉は習慣性の高い自動的な能力

(9)言葉はかってに走りだす

とりとめのない言葉が延々と続く 言葉は常に内容を伴うとはかぎらない

(10)過去の言葉が顔を出す

意図に反して同じ言葉がでてしまう 過去が過剰に持続する

(11)言葉の反響現象

意味の理解を伴わない言葉の自動的繰り返し 状況が大枠で適切な言葉を引きだす

(12)言葉の世界は有機体-まとめ

II 知覚の世界

(1)知覚の背景-「注意」ということ

注意を維持できない 正確な知覚には注意機能が必要

(2)注意の方向性

左側の空間に気づかない 注意がその方向に向いて知覚が成立する

(3)「見えない」のに「見えている」ということ

見えていないはずの光源の方向が分かる 「見える」、「見えない」が視覚のすべてではない

(4)「かたち」を見ること-その一

かたちの区別がつけられない 視覚的要素が「かたち」に転化する

(5)「かたち」を見ること-そのニ

文字は読めるが顔は分からない 顔が分かるには線の知覚が重要

(6)「かたち」の意味

触ると分かるが見ると分からない 知覚された形と意味が結びつく段階

(7)二つの形を同時に見ること

二つのものが同時に見えない まとまりのあるものを見ようとする過程

(8)「対象を見る」とは何か

対象が消えても眼前にありありと再現する 神経活動の過程を「見て」いる

(9)視覚イメージの分類過程

見えない視野に出現するまぼろし 視覚情報は基本パターンに分類される

(10)対象を掴む

眼前の物を掴めない 「形」ではなく「関係」の知覚能力が必要

(11)私はどこにいるのか?

方角がわからない 動かない空間を基準に自己の動きを見ること

(12)知覚の世界は宇宙空間-まとめ

III 記憶の世界

(1)刹那に生きる

昨日、今日のことを覚えていない 記憶のない行動は恐い

(2)短期記憶から長期記憶へ

新しい出来事を覚えられない 短期記憶を長期記憶へ移していく特別の機構

(3)長期記憶が作られる過程

過去へ遡る記憶の消滅 じょじょに長期記憶として固められていく

(4)記憶の意味カテゴリー

時間性を失った記憶 記憶の歴史性と状況性

(5)記憶と感情の関わり

記憶が自分のものでないように思える 感情と記憶の濃淡が時間体験の背景

(6)短期記憶はなぜ必要か

数字の復唱ができない その場の一時的な働きを支える短期記憶

(7)記憶の世界の広大な拡がり-まとめ

IV 心のかたち

(1)言語と音楽能力は関係あるか

強い言語障害でもすばらしい曲を作る 音楽的世界は言語世界から自立している

(2)言語と絵画能力は関係あるか

強い言語障害でもすばらしい絵をかく 絵画的能力と言語能力は別でありうる

(3)左大脳半球と言語 左右大脳半球を分離する-その一

右手は正しいが左手は不正確 言語機能は左大脳半球に偏っている

(4)右大脳半球の世界 左右大脳半球を分離する-そのニ

脳梁全切断患者への画期的な実験 右大脳半球は視知覚能力がすぐれる

(5)人は複数の心をもつ

複数の心の同時並列的な関係 意識が心の一つを選びとる

(6)心のかたち

参考・引用文献

あとがき

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iPS論文不正

By , 2012年10月26日 12:55 AM

森口尚文という研究者が、iPS細胞から作った心筋細胞を、アメリカで重症心不全患者に移植する手術を行ったことが虚偽であったという話で、世間が賑わっています。読売新聞が見事に釣られ、スクープとして報道して大混乱になりました。Yajiuma1遺伝子を過剰発現している私としては、この話題を放っておくわけにはいけません。

この事件は、経歴詐称疑惑、論文捏造疑惑、マスコミの問題など、さまざまな要素をはらんでいます。

【経歴詐称疑惑】

Wikipediaで、彼の経歴が纏められています。

Wikipedia-森口尚史

  • 1989年4月 – 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学専攻入学[6]
  • 1993年3月 – 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学専攻卒業、同年看護士(現在は看護師)の資格を取得[7]
  • 1995年 – 東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科総合保健看護学専攻博士前期課程修了、修士号(保健)[5]取得[3][8]。修士論文の題目は「健康診断における異常所見の評価とその予後に関する考察〜超音波エコーによる胆のうポリープの自然経過の検討」[7]
  • 1995年 ~ 1999年 – 財団法人医療経済研究機構主任研究員・調査部長、ハーバード大学メディカルスクールマサチューセッツ総合病院客員研究員[9]
  • 1997年 – 東京医科歯科大学医学部保健衛生学科非常勤講師(国際看護保健学、健康情報データベースと統計分析など担当)(2009年迄)[10][7]
  • 1999年8月 – 東京大学先端科学技術研究センター研究員(知的財産権大部門)(非常勤)[11][9]
  • 1999年11月 ~ 2000年1月 – マサチューセッツ総合病院胃腸科客員研究員[12][13]
  • 2000年10月 – 東京大学先端科学技術研究センター客員助教授(非常勤)[11][9]
  • 2002年4月[3] – 東京大学先端科学技術研究センター特任助教授(次世代的知的財産戦略研究ユニット、先端医療システム研究)(常勤)[11][9]
  • 2006年 – 東京大学先端科学技術研究センター特任教授(システム生物医学)(非常勤)(2009年3月迄)[11][14][15]
  • 2007年9月 – 東京大学大学院より、博士号(学術)取得。博士論文題目は「ファーマコゲノミクス利用の難治性C型慢性肝炎治療の最適化」、主査は児玉龍彦東京大学先端科学技術研究センター教授[16]
  • 2010年 – 東京医科歯科大学教授・薬品メーカーと共同でC型肝炎の予防および治療に有用な特許を発明者として提出し、2012年特許公開
  • 2010年 – 東京大学医学部附属病院客員研究員[11](助成金から人件費として月45万円以上が森口氏に支払われていた。[17])、東京大学先端科学技術研究センター交流研究員(無給)[13]
  • 2012年3月~8月 – 東京大学医学部附属病院形成外科美容外科技術補佐員[18] (非常勤)[5]
  • 2012年9月 – 同病院同科で有期契約の特任研究員(常勤)[5]として所属、研究テーマは「過冷却(細胞)臓器凍結保存技術開発の補助」[18]
  • 2012年10月 – iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施したと発表。当初6例実施としていたがそのうち5例は希望で1例は実際に行ったと訂正。
  • 2012年10月 – 東京大学医学部附属病院から懲戒解雇処分を受ける。

森口氏は、iPS細胞を使った治療を自ら所属するハーバード大学及びマサチューセッツ総合病院 (MGH) でおこなったとしたものの、病院側は所属を否定しました。病院側が否定しているので、経歴詐称の可能性が濃厚です。

彼は東京大学先端科学技術研究センター特任助教授を経て、2006年に同特任教授になったようですが、何故かその後 2007年に博士号を取得 (学位論文はこちら) しています。博士号がなくても東大の教授になれることがあるのですね。 一応、2002年の東京大学先端科学技術研究センター特任助教授というのが本当かと思って調べたら、東京大学の紹介ページのキャッシュが残っていました。しかしその後、2012年3~8月が、東京大学医学部附属病院形成外科・美容外科技術補佐員。普通は、教授から技術補佐員 (テクニシャン) になるというのは考えにくいです。なかなか謎のある経歴です。

【倫理委員会】

森口氏は、ハーバード 大学及び MGHでおこなった臨床試験を「倫理委員会の暫定承認を得ておこなった」と主張しています。しかし、ハーバード大学側は倫理委員会の承認を否定しています。臨床試験がでっち上げだったとする見方がある一方で、森口氏は少なくとも一件は手術を行ったと主張しているので、もしそれが本当なら、倫理委員会の承認を得ずに行われた人体実験です。

また、彼が Scientific reportsに投稿した論文について、東京大学も倫理委員会の承認を否定しました。

iPS臨床問題:東大「倫理委承認は虚偽」 英誌の2論文

毎日新聞 2012年10月16日 12時07分(最終更新 10月16日 12時10分)

人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床研究問題で、東京大医学部付属病院は15日夜の記者会見で、所属する森口尚史(ひさし)氏(48)が英科学誌に今年発表した2本の論文で、「東京大の倫理委員会の承認を経た」と虚偽の記載をしていたことを明らかにした。

論文はネイチャー・パブリッシング・グループが発行する科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。それぞれ肝臓がんの細胞に化学物質を加えて性質を変える手法と、卵巣の凍結保存技術に関する内容で、両方とも東京大と米ハーバード大などの倫理委員会で承認されたと書かれていた。実際には東大の倫理委に申請していなかった。

両論文は同病院の三原誠助教らとの共著だが、病院側は「(三原氏は)最終的な原稿に目を通したことはないと思う」と説明した。 科学誌の発行元は既に調査を始めている。【八田浩輔、斎藤有香】

この研究が倫理委員会の承認なく実際に行われたとすると、重大な倫理違反にあたるでしょうね。

【研究の真偽】

彼は看護学科出身なので、医師免許を保持せず、直接治療は出来ないはずですが、米国での心臓手術で協力したという医師を明かしていません。怪しすぎます。

森口氏「研究者やめる」…iPS移植虚偽発表

(略)

水色のシャツにグレーのジャケット姿で現れた森口氏は当初、落ち着いた口調で報道陣の質問に答えていた。しかし、会見が始まって1時間近くたってから、米国内でiPS細胞を使った心筋移植を6件行ったとした研究発表のうち5件について、手術の事実がなかったと認め、予定していた手術だなどと弁明した。

一方、昨年6月に行ったと主張した1件の手術については、自分のものだとするパスポートの出入国記録の欄を示し、当時、米国にいたので事実だったと主張した。

しかし、執刀医や患者の名前などを示すよう求められると、「名前を出してくれるなと言われている」「それを出せないから、本当に困っている」などと繰り返した。

読売新聞は、森口氏の今回の心筋移植に関する発表について、ハーバード大や、論文の「共同執筆者」とされた研究者への取材などから、既に虚偽と判断している。

(2012年10月14日18時14分  読売新聞)

(※その後、医師名を明かしたようですが、やはり虚偽であったことが明らかになりました。10月26日付読売新聞から “森口氏は「iPS心筋移植」の手術6件中5件をウソと認めた後も、1件は実施したと主張。検証取材に「米ハーバード大近くの病院で行った」と述べ、初めて病院名と執刀医名を明かしたが、この病院には手術記録がなく、同名の執刀医もいないため、改めて虚偽説明と断定した。記者は、医師国家資格のない森口氏を医師と思い込んでいた。“)

論文の捏造疑惑については、@JuuichiJigen氏が Twitterで次々と明らかにしたのを始め、ネットで様々な情報が出まわっています。

Successful cryopreservation of human ovarian cortex tissues using supercooling

Fig. 1 oocyteは webで拾ってきた画像を加工したもの

Fig.2 右列の上から2段目(KIT)、3段目(YBX2)、4段目(NOBOX)、5段目(LHX8)の4つのバンド画像が同一画像右列の上から1段目(DDX4)と、6段目(GDF9)が同一画像。左列の上から1段目(DDX4)と、右列の上から7段目(ZP1)と8段目(ZP2)の画像も同一画像ZP3の左列画像と右列画像が同一画像。また、同様にβ-actinも左と右で同一画像

ちなみに、この論文、resultが 10行前後なんですよね・・・。

【報道】

これまで、読売新聞が彼の研究を率先して報道してきましたが、取れるはずの裏を取らなかったことで批判されているようです。例えば、彼が医師免許を持っているかどうかは簡単に確認できますし、もし医師免許を持っていないことが明らかになれば、何故このような研究を主導できているかに疑問が生じます。

結局、誤報で叩かれた読売新聞は、この研究者を徹底的に悪者として報道することで、自らを被害者として批判の矛先をそらせようとしました。しかし、その過程で使った「簡易論文」という造語で研究者を混乱に陥れました。BioMedサーカス.comは、このことについて痛烈に批判しています。

責任逃れのために簡易論文という造語を用意した読売新聞科学部(2012年10月23日更新)

お話にならない。読売新聞社は素人並みの知識しかないような記者に科学技術に関する記事を書かせているのだろうか?また、それにゴーサインを出した上司は部下の文章の何を見ているのだろうか?先の誤報の責任は読売新聞社にはありませんよ、と主張することで頭がイッパイだったのだろうか?

神戸大学の岩田健太郎氏は、「読売新聞は被害者だったのか」というタイトルのブログ記事で、今回のような誤報が起こる構造的な問題を指摘しました。一読の価値があります。

【雑誌社の反応】

Nature, Science誌も、早速この問題を取り上げ始めました。興味のある方はどうぞ。

NatureとScienceは森口氏iPS細胞移植治療虚偽疑惑をどう報じたか(記事紹介)

【ネタ】

今回の読売新聞の誤報について、虚構新聞が早速記事にしていました。この記事は秀逸すぎます。読売新聞の記事そのまま書くことがネタ記事になっているとは!

虚構新聞:iPS細胞利用で心筋移植、世界初の臨床応用

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