Category: 神経学

側頭動脈炎とVZV

By , 2016年4月29日 6:15 AM

2015年11月の JAMA Neurologyに、側頭動脈炎と水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) の関連を示した論文が掲載されました。

Analysis of Varicella-Zoster Virus in Temporal Arteries Biopsy Positive and Negative for Giant Cell Arteritis

「側頭動脈炎で、巨細胞性動脈炎の病理所見が得られなかった症例の 64%, 巨細胞性動脈炎の病理所見が得られた症例の 73%で VZV抗原が病理学的に証明された。正常の側頭動脈で VZV抗原が陽性だったのは 22%だった」という報告です。側頭動脈炎において、VZVが関連している可能性が強く示唆されました。著者らは、抗ウイルス療法をステロイドに追加すると有効かもしれないと推測しています。

もともと、VZVは血管障害を起こすことが知られているウイルスで、私も VZV感染に合併した脳梗塞症例の経験があります。昨年、JAMA Neurologyのこの論文を読んだ時は衝撃を受けましたが、言われてみれば納得できる話です。

最近これに関連した報告を知人に教えてもらったのですが、肉芽腫性動脈炎患者の大動脈で、11例中 11例に VZV抗原が検出されたそうです (非肉芽腫性動脈炎患者では 18例中 5例)。

Varicella Zoster Virus Infection in Granulomatous Arteritis of the Aorta


(2016.5.5追記)

最近、こんな報告も出たようです。知り合いがリツイートしていて知りました。

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骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方

By , 2016年4月23日 8:19 AM

医学界新聞に「骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方」という良記事を見つけました。

骨粗鬆症治療薬ビスホスホネートの適切な使い方

■FAQ1 BPによる治療で,本当に骨折は予防できるのでしょうか。
■FAQ2 BPの投与によってかえって増える骨折があるそうですが,どのように対処したらよいのでしょうか。
■FAQ3 BPの長期投与には弊害もあるため,5年間継続したら休薬すべきとの意見もありますが,どうしたらよいでしょうか?

この記事で特に素晴らしかったのは下記の部分です。

ただ,BPによる骨折予防効果を得るには,正しく治療されることが必要とされています。「正しく」というのは,少なくとも1年以上継続して,治療期間内の処方率が80%以上で,内服方法が遵守され,かつビタミンDやカルシウムが充足していれば,ということを意味します。そのため,骨粗鬆症治療を行う場合には,薬剤の選択のみならず,正しく治療を続けるための工夫が大変に重要なポイントです。

ビタミンDやカルシウムが充足していることが前提条件なんですね。

ここで、日本のステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドラインに脱線します。この問題は、いつか書こうと思っていたので。

ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン:2014年改訂版

読んでみると、とても突っ込みどころの多いガイドラインです。例えば下記の部分です。

・ガイドライン作成者の利益相反が開示されていない

→いまどき、利益相反の開示されていないガイドラインなんてありえません。このガイドラインは、製薬会社が宣伝に使っています (実際、私のところに、このガイドラインを持ってビスホスホネート製剤の宣伝に来た MRがいます)。「製薬会社にいくらもらってこの宣材 (=ガイドライン) 作ったんだ」と言われても、利益相反が開示されていなければ反論できないでしょう (ない、なら、ないって書けよっていう話です)。

・骨折の予測因子について

→「骨折を予測する因子」をコホート研究で作成し、スコアをつけています。そのコホート研究は、スコア作成に男性 117名、女性 786名のデータを用い、男性 1名、女性 143名のデータを用いて検証しています。検証に用いたデータが男性 1名って・・・。さらに、基礎疾患のほとんどが RA, SLE+PM/DM+血管炎です。他の疾患に外挿できるデータなのでしょうか?

・いきなりビスホスホネート

→欧米のほとんどのステロイド性骨粗鬆症ガイドラインでは、ビタミンD, カルシウムを内服した上でリスクの高い患者にのみビスホスホネートを使用することになっています。骨を作るための材料を入れずに、骨を作るように命令するような薬 (ビスホスホネート) を内服したところで「空打ち」になるからです (この表現は知り合いのリウマチ科医に習いました)。そもそも、このガイドラインでも引用しているような、ビスホスホネートの有効性を示した臨床研究では、「血清ビタミンDの低い患者を除外」し、「ビタミンDおよびカルシウムを内服している」上での追加効果をみているのです (例えばこの研究)。それを、このガイドラインではビタミンDやカルシウム内服なしでビスホスホネートをいきなり始めるように推奨しており、どう考えても変です。

私は、ステロイド内服患者にはまずビタミンD製剤を優先して内服してもらっています。カルシウム製剤との併用でなくビタミンD製剤を優先しているのは、併用で高カルシウム血症の副作用が出やすくなるのを危惧するのと、下記の理由からです。

①カルシウムのサプリメント (単剤) で心血管イベントが増える報告がある。

Effect of calcium supplements on risk of myocardial infarction and cardiovascular events: meta-analysis

②カルシウムを単独で内服しても骨折リスクは減らないとする報告がある (ステロイドを内服していない患者ですが) 。

Calcium intake and risk of fracture: systematic review

③種々の免疫疾患で、ビタミンD低下が病状の悪化と関連するという報告がある。下記は多発性硬化症。

多発性硬化症と緯度の話

④ビタミンDは USPSTFが高齢者の転倒予防として推奨している薬剤である。

ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【1日目】

ビタミンD製剤を内服した上で、リスクの高い患者さんにはビスホスホネートなどを内服して頂いています。

(参考) 過去のブログ記事

ステロイドと骨粗鬆症

Glucocorticoid-Induced Bone Disease

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頭蓋内のリンパ管

By , 2016年4月17日 5:22 PM

抄読会で 2015年6月1日に発表された Nature論文を読みました。結構インパクトのある論文でした。

Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels

3行でまとめると下記のようになります。

頭蓋内には古典的なリンパ排液系はないと思われていたが、硬膜静脈洞に隣接した髄膜にリンパ管が見つかった。このリンパ管は、免疫細胞や髄液を運んでおり、鼻粘膜のリンパ管と異なり深頸部リンパ節と交通しているようだ

頭蓋内悪性リンパ腫や種々の免疫疾患等の研究に大きな影響を与えそうですね。

私が抄読会用に作成した資料を添付しておきます。

抄読会資料

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くも膜下出血と頭部CT

By , 2016年3月30日 7:49 PM

くも膜下出血の CTでの検出率は、機器の進歩とともに良くなってきているはずです。最近の CT機器での診断精度はどうなのか。Stroke誌に meta-analysisの結果が掲載されていました (2016年1月21日 published online)。

Sensitivity of Early Brain Computed Tomography to Exclude Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage: A Systematic Review and Meta-Analysis

A total of 882 titles were reviewed and 5 articles met inclusion criteria, including an estimated 8907 patients. Thirteen had a missed SAH (incidence 1.46 per 1000) on brain CTs within 6 hours. Overall sensitivity of the CT was 0.987 (95% confidence intervals, 0.971–0.994) and specificity was 0.999 (95% confidence intervals, 0.993–1.0). The pooled likelihood ratio of a negative CT was 0.010 (95% confidence intervals, 0.003–0.034).

神経学的異常所見のない患者の非外傷性くも膜下出血を 16列以上の CTで診断した場合、発症 6時間以内で感度 98.7% (95% CI, 0.971–0.994) 、特異度 99.9%とのこと。100%ではないけれど非常に診断精度は高い・・・、という予想通りの結果でした。

話は脱線しますが、頭部CTで異常がなくてもくも膜下出血が強く疑われる場合は髄液検査が必要となります。しかし、髄液を採取するときに血液が混入してしまうと判断に苦慮することになります。昔は 3-tube method (手技により血液が混入してしまったときは採取するスピッツが後になるほど髄液の赤色が薄くなるが、くも膜下出血であれば採取するスピッツが後になっても薄くならない) が推奨されていましたが、それを否定する論文が出て、最近では「キサントクロミーがなく髄液赤血球数 < 2000 x 106 /Lなら、動脈瘤によるクモ膜下出血を除外できる」という報告なんかもされているようです。

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この失神、どう診るか

By , 2016年3月26日 1:32 PM

神経内科では、失神患者をしばしば診療します。「てんかん疑い」という病名で紹介されることが多いです (失神患者を診るたびに「TIA疑い」と紹介して来る医師もたまにいますが、「意識消失のみ」の TIAはないと言えるくらい稀です)。しかし、失神の原因は血管迷走神経性と起立性が併せて約 3割で、心原性が約 1割、てんかんは 5%程度といわれています。また、予後が最も悪いのは心原性です。てんかんは頻度がそれほど高くなく、初回発作では治療適応とならないことが多い (※ただし状況による) ことを考えると、失神は循環器科的な対応が最も求められるといえます。実際、失神のガイドラインは循環器学会などが主体となって出しています。失神患者が紹介されたとき、私は神経内科医であっても脳波検査より Holter心電図の方がオーダー件数が多いです。

ところが、失神を多数紹介される神経内科医は、心原性の失神についてトレーニングを受ける機会がないのが現状です。私もしっかりとしたトレーニングを受けないまま、なんとなく診療してきました。「失神患者の初期対応は循環器科が行う」としている施設もありますが、少数派だと思います。そうすると、治療が必要性が高い心原性の失神を見逃してしまうリスクがありますね。

最近非常に勉強になる本に出会いました。

この失神、どう診るか?

循環器科医の目線から、失神の原因、治療についてわかりやすく解説しています。私はこの本を読んで、失神診療における植え込み型ループ式心電図計 (implantable loop recorder: ILR) の有用性を初めて知りました。普段失神患者の診療をする機会の多い神経内科医は、必読の本だと思います。

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間葉系幹細胞治療と ALSの第1/2相臨床試験

By , 2016年3月16日 8:39 AM

2014年1月20日に、ALSに対する間葉系幹細胞の症例報告がオンライン公開されました。このブログでも、論文が受理された段階でお伝えしています。

間葉系幹細胞治療と ALS

2014年秋には、FDAにより fast track指定されました。

ALSに対する間葉系幹細胞治療がfast-track指定

終了していたはずの臨床試験の結果がなかなか報告されず、やきもきしていましたが、2016年3月1日、ついに臨床試験の結果がオンライン公開されました。

Safety and Clinical Effects of Mesenchymal Stem Cells Secreting Neurotrophic Factor Transplantation in Patients With Amyotrophic Lateral SclerosisResults of Phase 1/2 and 2a Clinical Trials

どうやら安全性や認容性に問題はなく、ALSの進行を抑制したそうです。しかし、オープンラベル試験でソフトエンドポイントを含んでいる (→結果に臨床試験担当者や被験者の意図が混入しやすい) ことや少数例の検討に過ぎないことから、まだ何とも評価が難しいです。今後、より厳格な試験デザインで効果が証明されるのを待ちたいと思います。

あと、気になるのが薬価です。抗癌剤などにおいて、高額な薬価が国の医療費を圧迫されることが問題となってきています。もしこのような治療法がもし将来世の中に出てくるとしたら、いくらくらいの薬価が設定されるのでしょうか。この問題については、下記の記事を読んでみてください。

コストを語らずにきた代償
“絶望”的状況を迎え,われわれはどう振る舞うべきか

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ジカウイルス関連髄膜脳炎

By , 2016年3月11日 5:36 PM

ジカ熱が世界的な問題になっています。南米や東南アジア、オセアニアで流行している蚊が媒介する感染症です。感染が原因と考えられる小頭症の新生児の増加や、Guillain-Barre症候群などで、WHOがいくつものガイダンスを出しています。

Publications, technical guidance on Zika virus

2016年3月6日に国立国際医療センターでの勉強会で、忽那医師によるジカ熱の講演を聴いてきました。「ジカ『熱』というけれど、高熱は非常に少ない (デング熱やチクングニヤ熱では多い)」「患者さんは比較的元気」「皮疹で来院することが多い」「眼脂を伴わない眼球結膜充血が多い」「潜伏期間 10日以内」「デング熱やチクングニヤ熱を疑うとき、ジカ熱も疑う (流行地域もかぶる)」などというのがキーワードでしょうか。

2016年3月9日、New England Journal of Medicine (NEJM) にジカ関連髄膜脳炎の症例報告が掲載されました。神経内科医は知っておくべき論文です。簡単に要約しました。

Zika Virus Associated with Meningoencephalitis

症例は、81歳男性。ニューカレドニア、バヌアツ、ソロモン諸島、ニュージーランドを 4週間旅した 10日後に、ICUに入院となった。体温は 39.1℃で、神経学的に GCS 6点の意識障害、左片麻痺、右上肢麻痺、左 Babinski徴候を認めた。腱反射は正常だった。気管挿管し、人工呼吸器管理を行った。一過性の皮疹がその 48時間以内にみられた。

脳MRIでは、髄膜脳炎の所見を呈した。FLAIRで非対称性の皮質下高信号域、拡散強調像で虚血性病巣を思い起こさせるような多発高信号域があり、また、(FLAIRで) 右ローランド溝に髄膜炎でみられるような淡い高信号域があった (Figure 1)。CT angiographyでは、右脳梁縁動脈に不規則な狭窄を認めた。

髄液は day 1に行われ、髄膜炎を支持する結果だった。細胞数は 41 /ul (多核球 98%), 蛋白 76 mg/dl, 髄液/血清の糖比 0.75だった。入院時よりアモキシシリン、セフトリアキソン、ゲンタマイシン、アシクロビルが投与されたが、day 5に中止した。髄液での HSV, VZV, HHV6, JC virus, Enterovirus, 結核菌の PCR、クリプトコッカス抗原、ニューモコッカス抗原は陰性だった。血清学的検査では HIV, HBV, HCV, ボレリア, 梅毒は陰性だった。また、ANCAは陰性で、抗核抗体は 80倍で臨床的意義はなかった (supplement参照)。一方で、髄液のジカウイルス (ZIKV) PCRは陽性であり、ベロ細胞を用いた培養で髄液のジカウイルスが増殖した。これらの所見からジカウイルス関連髄膜脳炎と診断した。

意識障害の原因としててんかんが鑑別となったので、ICU入室時よりレベチラセタムが投与下ではあったが、脳波でてんかんを示唆する異常はなかった。気管挿管 24時間以内に自発的な覚醒がみられ、人工呼吸器はを day 2に離脱した。その時点で患者は覚醒していたが、視覚性および運動感覚性の幻覚を伴った妄想と、持続的な左上肢の麻痺 (2/5程度) がみられた。神経症状は特異的な治療なしで改善した。day 17に ICUを退室し、day 38には認知機能は完全に回復した。しかし、左上肢の麻痺 (4/5程度) が後遺症として残存した。

(参考)

Identification and management of Guillain-Barré syndrome in the context of Zika virus:ジカウイルスに関連した Guillain-Barre症候群の診断と治療についてのガイダンス (WHO, 2016.2.25)

Zika Virus as a Cause of Neurologic Disorders:小頭症、ギラン・バレー症候群について (NEJM, 2016.3.9)

Zika Virus Infects Human Cortical Neural Progenitors and Attenuates Their Growth:神経前駆細胞にジカウイルスを加えると、多くが感染~一部死滅するという基礎研究 (Cell stem cell, 2016.3.4)

Zika Virus Outbreak on Yap Island, Federated States of Micronesia:ジカウイルス感染症の臨床症状 (NEJM, 2009.6.11)

Guillain-Barré Syndrome outbreak associated with Zika virus infection in French Polynesia: a case-control study:ジカウイルス感染と Guillain-Barre症候群 (Lancet, 2016.2.29)

Zika virus and Guillain-Barré syndrome: another viral cause to add to the list:ジカウイルス感染と Guillain-Barre症候群 (Lancet, 2016.2.29)

デング熱:デング熱による神経症状

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脳梗塞急性期の再発予測

By , 2016年3月9日 5:49 AM

2016年2月29日の “Prediction of Early Recurrence After Acute Ischemic Stroke” を読んでたら、脳梗塞発症患者の再発リスクの計算式がテーマでした。The Recurrence Risk Estimator (RRE) というのですが、下記のサイトにアクセスすると、脳梗塞発症  7日間、および 90日間の再発リスク予測ができます。

The Recurrence Risk Estimator (RRE)

これは便利ですね。

ちなみに、私が今診ている心原性脳塞栓症の患者さんは、Score 3, 7-day Recurrence Risk 3.5%, 90-day Recurrence Risk 27.3%でした。再発予防が非常に大事だというのがわかります。

余談ですが、日本では脳梗塞急性期治療に点滴薬が使われることが多いです。でも、こうした薬剤のエビデンスはどうなのか、下記のサイトを一度はチェックしておくことをお勧めします。

脳梗塞の急性期治療: 抗凝固 血栓療法

なんごろく-脳卒中

欧米でスタンダードな急性期治療については 2014年に Cochrane reviewが updateされており、脳梗塞 48時間以内にアスピリン 160~300 mgを始めた場合、死亡や寝たきりを避けるための NNTは 79とのことでした (1000人治療すると 13人、死亡や寝たきりが防げる)。なお、48時間過ぎていても、14日以内であればそれなりのメリットはあるそうです。また、他の抗血小板薬は信頼できるエビデンスなしとなっています。

Oral antiplatelet therapy for acute ischaemic stroke

(参考)

Anticoagulants versus antiplatelet agents for acute ischaemic stroke

Low-molecular-weight heparins or heparinoids versus standard unfractionated heparin for acute ischaemic stroke

Guidelines -Stroke and Vascular Neurology-

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オリバー・サックスとシャル・ボネ

By , 2016年3月1日 11:06 PM

視力低下や聴力低下のある方で、幻視や幻聴を呈するシャルル・ボネ症候群というのがあります。認知症や精神疾患と誤診されうるため、岩田誠先生が「臨床医が語る 認知症と生きるということ」という本で強調している疾患です。

TEDで、オリバー・サックスがこの疾患について語っています。非常に面白いので、是非見てみてください。要約したサイトもありますが、動画を視聴することをお勧めします。動画は下記です。

オリバー・サックス:幻覚が解き明かす人間のマインド

(参考)

MUSICOPHILIA

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抗菌薬関連脳症

By , 2016年2月24日 6:19 AM

2016年2月17日の Neurology誌に抗菌薬関連脳症についての総説が掲載されていました。

Antibiotic-associated encephalopathy

入院患者でこうした脳症をきたしたとき、抗菌薬関連脳症の存在を知らないと、例えば精神症状をせん妄として治療してしまうかもしれません。診断が遅れないように知識として持っておく必要があります。

著者らによると、抗菌薬関連脳症 (AAE) は 3つのフェノタイプに分けられるそうです。以下に要点を示しておきます。

① Type I

薬剤開始後数日以内に痙攣発作やミオクローヌスをきたす脳症。頭部MRIは正常で脳波異常がみられる。セファロスポリンやペニシリン系に多い。セファロスポリン関連脳症は、腎不全で多く報告されている。数日以内に改善する。GABAを介した抑制系のシナプス伝達の障害による易興奮性が原因と考えられている。

② Type II

通常開始後数日以内に精神症状、まれに痙攣発作がみられる。脳波異常は稀 (あったとしても、てんかん性というよりむしろ非特異的な異常) で、頭部MRIは正常、数日以内に改善する。プロカインペニシリン、スルホンアミド、フルオロキノロン、マクロライドに多い。ドパミンD2受容体やNMDA型グルタミン酸受容体を介した効果を示す薬剤 (コカイン、アンフェタミン、フェンサイクリジン) との類似性が指摘されている。

③ Type III

メトロニダゾールのみで出現する。薬剤開始後数週間以内に、しばしば小脳失調、まれに痙攣発作がみられる。脳波異常はまれで非特異的である。可逆性の MRI異常が小脳歯状核、脳幹背側部、脳梁膨大部にみられ、血管原性浮腫、細胞障害性浮腫を示す。病因的には、フリーラジカル形成やチアミン (ビタミンB1) 代謝と関連があるといわれている。

抗菌薬関連脳症

抗菌薬関連脳症

(参考)

バンコマイシン誘発振戦

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