当直小旅行-風にも負けず

By , 2010年12月5日 2:50 PM

先月11月20日は秋田での当直でしたが、新幹線が盛岡~秋田間で人身事故のため止まってしまい、盛岡駅からタクシーで向かいました。貴重な経験をしたと思っていたら、昨日12月5日にはそれを上回るトラブル発生。なんと新幹線が東京~盛岡間で強風のため止まってしまったのです。

最初の情報は chunchukurin先生からTwitterでの「新幹線止まってますよ!高速バスで郡山または会津若松まで来てください。そこから、秋田までお送りしましょうか?」という連絡でした。

私は17時20からの当直に備え、12時過ぎの練馬駅のホームにいましたが、どうして良いかわからなかったので、「○×大学入試問題:新幹線が強風のため東京~盛岡間で止まっています。12時半に池袋を出て17時20分までに秋田に着くにはどうしたら良いでしょうか?」と Twitterで呟いたところ、様々な情報と意見が寄せられました。

最初に methyl07先生から「どこでもドア!」という手段が提案されましたが、これは無理でした (^^; それにどこでもドアがあったらしずかちゃんの家の風呂場に着いてしまうかもしれません。

chunchukurin先生からは「レンタカーでぶっとばす。ANA 877便で秋田空港、そこからレンタカーで秋田道。18:00には着ける」という提案があり、続いて methyl07先生が、ANAに空席があること、ANA 877便が 15:50羽田空港発、16:55秋田空港着であること、飛行機が通常運行であること、秋田空港にはレンタカーが5社あることを教えてくれました。

さらに少し間を開けて methyl07先生から ANA877便に 30席以上の空席があること、駅のみどりの窓口で航空券が買えるとの情報が届きました。gamitake先生からは「ラジオ聞いていると、新幹線の不通の範囲が拡大しているよ」との情報。

これらの情報を元に、赤羽駅のみどりの窓口で航空券を購入し、羽田空港に向かいました。その途中で電話連絡していた病院から折り返しの返事があり、秋田空港からはタクシーを使うべきで、私が到着するまでは日勤の先生が残ってくれるとのことでした。

飛行機は多少揺れましたが、落ちることなく、17時45分頃には到着することができました。

結果的に東北新幹線の復旧には2時間くらいかかり、秋田新幹線も一部運休になりましたので、正しい選択だったのではないかと思います。下手に一人で考えるより、色々な人からの知恵や情報が集まった方が良い判断ができますね。Twitterの威力を思い知った出来事でした。

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Maybe It’s Not Such a Good Idea to Marry a Doctor…

By , 2010年12月4日 5:49 AM

米国外科学会の 8000人の外科医を集めたスタディ!

夫婦ともに医師、とくに外科医夫妻の結婚生活についての記事ですが、色々乗り越えないといけないことがあるようです。でも、結局は本人達次第なんでしょうなぁ・・・。結婚はしたことないから、よくわかりません。

Maybe It’s Not Such a Good Idea to Marry a Doctor…

あまり議論されない話だから、外科の医局の抄読会で読んでみるのも楽しいかも・・・って抄読会はそんな雰囲気じゃありませんよね。

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ベクロニウム事件

By , 2010年12月3日 7:34 AM

12月2日の日記で、「論文の投稿スタイルが厳格になりすぎると、ひょっとすると論文を投稿するよりも、web siteを通じて自分の考えを自由に述べる学者が出てくるかも知れない」と書きました。似たような話で、内容的に医学雑誌が掲載できないようなことを、web siteを通じて発信する医師が出てきてもおかしくありません。

そんなことを感じさせる話に、昨日のエントリーを書いた直後に遭遇しました。「北陵クリニック事件」を指している思われる論文を web siteを通じて発信している医師を見つけたのです。北陵クリニック事件とは、仙台の「北陵クリニック」の准看護士だった守大助さんが11歳女性にベクロニウム (商品名:マスキュラックス) を投与したことで殺人罪に問われた事件です。最高裁で無期懲役が確定し、守さんは刑に服しています。

事件については冤罪とする意見も強く、ネットで検索すれば判決を疑問視するサイトが山のようにあります。中でも、下記のサイトがまとまっていると思います。

無実の守大助さんを支援する首都圏の会

さて、この事件はそもそも診断自体が誤っており、実際は MELASだったと考えれば辻褄が合うという論文を神経内科医マッシー池田先生が発表されました。こんな危険な論文を掲載する医学雑誌があるとは思えませんので、ご自身のサイトに掲載されています。

急激な意識障害を主徴とし,臭化ベクロニウム中毒と誤診されたMitochondrial myopathy, Encephalopathy, Lactic Acidosis, Stroke-like episodes(MELAS)の1例

論文を読むと非常に説得力があります。確かに筋弛緩薬を投与された患者がけいれんを起こすというのは考えられません(筋肉が弛緩していれば痙攣できない)ですし、症状は MELASに合致しています。

私は MELASの初発発作の患者さんを当直で初めてみたとき、なかなか診断に至れなかった記憶があります。二度目に同じような状況に遭遇したときは鑑別診断の最初に挙げることができましたが、診たことがない医師がこの疾患を思い浮かべるのは至難でしょう。神経内科や小児神経の専門家が関与することなく、この疾患をほとんど知らない麻酔科医が鑑定して事件が一人歩きしてしまったことは怖いことだと思います。この論文を元に、この事件は再度検討されるべきではないかと思います。

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木越洋のチェロがうたうコンサート

By , 2010年12月2日 7:23 AM

尊敬する先代の教授ラロー先生 (仮名) と二人でコンサートに行ってきました。奥様の都合が悪くチケットが一枚余ったので私に白羽の矢が立ったのでした。

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誰も知らない「名画の見方」

By , 2010年12月1日 7:57 AM

誰も知らない「名画の見方」(高階秀爾著、小学館)を読み終えました。1~2日で読める薄い本ですが、非常に勉強になりました。

私が絵画を見始めたのは、大学生時代、ヴァイオリンの師に「音楽を理解するためには、絵を見たり、作曲家の時代背景を知ることも大事なのよ」と言われたのがきっかけでした。以来、海外旅行をするときは必ずその土地の美術館を訪れるようにしていました。絵の見方はわからなかったのですが、やはりヴァイオリンの師に「良い絵ばかり見ていれば、自然と良い絵が良いものだとわかるようになるから」と言われ、絵画史など全く知らずにただ眺めていました。

そうして鑑賞を繰り返していたさなか、カルチャーショックを受けたのが、昔紹介した本「見る脳・描く脳 (岩田誠著)」でした。巷で言われる美術史と全く違う視点で捉えた「絵画の進化」という言葉に驚きました。それから「心像絵画」「網膜絵画」「脳の絵画」という進化の視点で作品を見るようになりました。一方、先日北欧旅行をした際は、「なぜ画家はこの風景を描かないといけなかったのだろうか?この風景のどの部分が画家の心を動かしたのだろうか?」などと、絵画と同じくらい画家の心象を妄想しながら楽しみました。絵画には色々な楽しみ方があるなぁと感じたのがその時でした。

このように手探りで探した鑑賞法で絵画を楽しんでいた中、大きなインパクトを与えてくれたのが本書です。絵画史や個々の画家に疎い私のニーズを満たすものでした。

例えば、ムンクは「叫び」という作品が有名ですが、彼は身近な体験に基づいて絵画を描きました。ムンク作品の大きな柱は、男女間の相克の末に最後にはかならず女性が勝利するというテーマであるそうです。こうした事実を知ると、ムンク美術館に行ったとき、作品が倍楽しめそうな気がします。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、彼の「無限に変化するもののなかにある美」という主題を表すために、スフマート技法 (ぼかし技法) を発達させました。著者は「絵画を見る者は、画家が選んだ描き方を通じて画家の主題を理解することができるのである。つまり、絵画を見る際には、作品の見せかけの美しさを鑑賞するだけでなく、画家がどんな主題に基づいて、その作品を描いたかを『考える』ことで理解を深めることができるわけだ」と書いています。やはり、こうした勉強は鑑賞をもっと楽しくするのですね。

著者は東京大学教授、国立西洋美術館館長などを経て、岡山県倉敷市にある大原美術館の館長となりました。大原美術館は小学生の頃遠足で行ったのですが、絵についての記憶はありません。実家に戻る機会があったら、改めて訪れてみたいと思いました。ちなみに、大原美術館にはベヒシュタインのピアノがあり、いくつかのコンサートがされてきたようです。「展覧会の絵」の例を持ち出すまでもなく、音楽と絵画は親和性が高いのでしょうね。

最後に、本書の目次をお伝えしておきます。魅惑的なタイトルが溢れているので、実際に読みたくなる方が多いと思いますが、お薦め出来る本だと思います。

 目次

第一章 「もっともらしさの秘訣」
白い点ひとつで生命感を表現したフェルメール
見る者を引き込むファン・エイクの「仕掛け」
影だけで奥行きを表したベラスケス

第二章 時代の流れと向き合う
激動の時代を生き抜いた宮廷画家ゴヤ
時代に抗った「革新的な農民画家」ミレー
時代を代弁する告発者ボス

第三章 「代表作」の舞台裏
いくつもの「代表作」を描いたピカソ
タヒチでなければ描けなかったゴーガンの「代表作」
二種類の「代表作」をもつボッティチェリ

第四章 見えないものを描く
科学者の目で美を見出したレオナルド・ダ・ヴィンチ作
人を物のように描いたセザンヌの革新的な絵画
音楽を表現したクリムトの装飾的な絵画

第五章 名演出家としての画家
依頼主を喜ばせたルーベンスの脚色
演出した「一瞬」を描いたドガ
絵画の職人ルノワールの計算

第六章 枠を越えた美の探求者
女性の「優美な曲線」に魅せられたアングル
見えない不安を象徴したムンクの「魔性の女性像」
イギリス絵画の伝統を受け継いだミレイ

第七章 受け継がれるイメージ
カラヴァッジョのドラマチックな絵画
働く人々を描いた色彩画家ゴッホ
西洋絵画の歴史を塗り替えたマネ

第八章 新しい時代を描き出す
人間味あふれる農民生活を描いたブリューゲル
新しい女性像を描いたモリゾ
20世紀絵画の予言者モロー


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