Gadolinium-associated plaques

By , 2014年11月18日 6:19 AM

MRIの造影剤であるガドリニウムは腎障害がある患者では腎性全身性線維症 (nephrogenic systemic fibrosis ;NSF) が副作用として問題になることがあります。そのため、数年前から腎不全の患者に対するガドリニウムの使用は禁忌とされています。

腎障害がない患者においては比較的安全に使用できるはずなのですが、今回 JAMA Dermatology誌に副作用で発症しうる新たな疾患概念が報告されました (2014.11.12 Published Online)。著者らは「Gadolinium-associated plaques (GAP)」と呼ぶことを提唱しており、この副作用は、なんと腎障害がなくても起きうるようです。

Gadolinium-Associated Plaques

上記の論文で報告されたのは 2症例です。1例目は 80歳代の男性で、2008年8月から 2011年1月まで計 5回造影MRI検査を受けました。使用したガドリニウム造影剤はオムニスキャンで、1回当たり 20 ml投与されました。その後、両側手背に掻痒感、灼熱感のある径 0.5-2 cmの皮疹が出現し、clotrimazole及び detamethasone dipropionate cream、clobetasol diproprionate creamで治療しましたが改善がなく、18ヶ月間症状は続きました。腎障害はなく、臨床像も腎性全身性線維症と異なっていました。生検により “sclerotic bodies” と診断されました。患者は triamcinoloneacetonide 20 mg/ml, 0.5-1.0 ml/plaqueの局所投与を受け、3ヶ月後には完全に改善しました。2例目は 70歳代の女性です。2年間かけて徐々に拡大する下腿前面の径 2.5-2.0 cmの皮疹を呈しました。この患者には慢性腎不全の既往があり、かつ何度か造影MRIを施行されたことがありました (造影剤の種類や量は不明)。生検により “sclerotic bodies” と診断されました。

論文中の tableにサマリーがあり、臨床像や病理所見が纏められています。

 

Table.1

Table.1

これらの症例における “sclerotic bodies” とガドリニウム暴露との関連は次のように考察されています。

1.  “sclerotic bodies” はガドリニウム暴露に特徴的である。事実、今回の患者―1例では確認できた―は同じタイプのガドリニウム造影剤を使用していた(オムニスキャン)。興味深いことに、オムニスキャンは直鎖状のガドリニウムキレート剤である。直鎖状のキレート剤は環状キレート剤よりガドリニウムと結合しにくく (※ガドリニウム造影剤は、ガドリニウムとキレート剤の化合物である)、理論上組織に沈着しうる。

2. 腎性全身性線維症は FDAに承認された 5種類のガドリニウム造影剤全てで報告されている。曝露量は 15~90 mlである。腎性全身性線維症は腎障害と関連があり、(腎排泄能が低下しているため) 少量投与でさえもガドリニウム血中濃度が比較的高値になるのだろう。

3. 文献的根拠から推測すると、腎性全身性線維症における sclerotic bodiesは、ガドリニウムキレートの不安定化に直接関連しており、それが炎症の元となる線維の増殖や結合組織の合成を促進する。事実、腎性全身性線維症患者の組織を電子顕微鏡で調べると、ガドリニウムが検出される。腎障害はガドリニウムの排泄を遅延させ、体内での半減期を延長すると目されている。これは 100 mlのガドリニウム暴露を受けた 1例目や腎障害があった 2例目の Gadolinium-associated plaques患者の原因の説明になるかもしれない。

4. Sclerotic bodiesの石灰化傾向は際立った特徴である一方で、腎性全身性線維症の患者においては石灰化は 2~5%にしかみられない。これまで慢性腎不全に伴う二次性副甲状腺機能亢進症が、sclerotic bodyや別の組織への異所性石灰化の原因かもしれないと考えられてきた。 事実、今回の 2例目の患者は副甲状腺切除術の既往があった。しかし、1例目の患者には腎不全も副甲状腺の異常もなかった。

5. 今回の症例における Gadolinium-associated plaquesは、ガドリニウム暴露から約 3.5年で発症しており、腎性全身性線維症を欠いて sclerotic bodiesを来したとする別の報告での 5年と同程度である。その報告の著者らは、sclerotic bodiesを腎性全身性線維症の遅発性の所見かもしれないと推測していたが、今回の報告の著者らは sclerotic bodiesの存在がガドリニウムのタイプに依存し、発症のタイミングが腎性全身性線維症を発症した日ではなくガドリニウムに暴露された日に依存すると考えている。

 Gadolinium-associated plaquesは、これまで注目されていなかった MRI造影剤の副作用であるようです。しかし、どうやら重篤なものではなく、治療により完全治癒しうるもののようです。発症頻度も極めて低いようですし、あまり懸念するものではないと思います。ただし、造影剤を数年後に発症するというのは要注意で、問診で疑えないと診断は難しいのかもしれません。論文の figure 1には皮疹の写真が、figure 2には病理写真が掲載されているので、興味のある方は御覧ください。

ポイント:

①MRI造影剤を使用してから数年後に、副作用として皮疹が出現することがある。

②臨床像は腎性全身性線維症とは異なるが、同様の発症機序が想定されている。

③腎障害がなくても出現しうる。

④適切な治療で治癒しうる。


2 Responses to “Gadolinium-associated plaques”

  1. 神田 より:

    はじめまして。講演のネタ探ししていて偶然みかけ勉強になりました。
    僕自身「正常腎機能でもMRI造影剤が徐々に脳に残っていて画像でも見えるようになってくるよ」という論文を報告していたのですが、この報告もひょっとしたら残留している造影剤と関連するかもしれないですね。大変興味惹かれました。ありがとうございます。

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