ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【2日目】

By , 2016年3月23日 5:39 PM

(ACP(米国内科学会)日本支部 年次総会2015 【1日目】からの続き)

朝は開始時間が遅かったので、のんびりと会場に向かいました。

9:30~11:00 第2会場  「論文執筆に活かせる FIRM2NESS」 (福原俊一、栗田宣明)

架空の症例から生まれた clinical questionを PICO/PECOの形にして、試験デザインを考えるワークショップでした。

日本の臨床研究がメジャージャーナルに載りにくいのは、試験デザインがきちんと組まれていないからで、本来なら半年~1年くらいかけて作り込んでいくもののようです。

12:00~13:00 第6会場  がんの予防・検診のエビデンスはどれだけあるでしょうか? (勝俣範之)

「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」2014年度版を教材として用いて、胃癌の検診を行うべきかどうか議論した。問題点として、①推奨グレードの決め方が曖昧で、なぜその推奨グレードになったのか説明されていない、②推奨を判断するための一次文献が非常に貧弱で、質の高い研究がない。査読のない雑誌であったり、研究対象数が非常に少なかったり。→ガイドラインがさまざまな問題を抱えており、このガイドラインを用いて胃癌の検診を行うべきかどうか判断することは難しい。胃癌はアジア人に多いので、そういう地域から質の高い研究が出てくることが望まれる。

続いて勝俣範之先生の講演。①検診乳癌の 31%が過剰診断という論文がある。乳癌検診により、早期癌は増えたが、進行癌は減らなかった (→見つける必要のない癌を見つけているだけでは?)。メタ解析では、2000人の検診を受けると 1人の乳癌死亡を減らし 200名に偽陽性、10人に過剰診断・治療することになる結果だった。②GRADEシステムについて、③一般に、癌検診は 50%以上の人間が受けないと死亡率は下がらない。啓蒙だけしても受診率は上がらない。日本は 10~20%, 欧米は 70~80%のものが多い。癌検診の受診率向上のためには、受診者へのリマインダー (督促状) やスモールメディア (メディアパンフレットやニュースレターなど) が効果的で、マスメディアを用いて受診率が向上するかどうかは「証拠不十分」という扱いになっている (CDC “The Community Guide” 2011)。④タバコは癌の最大の原因である。喫煙者では 60%程度寄与。非喫煙者の場合、食生活 10~30%, 肥満 10%となっている。日本人でも、タバコは最多、その次は感染 (HCV, HBV, HPV, EBV, HTLV-1) となっている。⑤一時期、健康食品として βカロチンがブームになったが、過剰摂取で逆に癌が増えることが明らかになった。⑥HPVワクチンについて。2011年のメタ・アナリシスの問題は、有効性について「浸潤がんでのデータではない」「子宮頸癌の死亡率減少まで示していない」「コスト分析がない」、安全性についての問題点は「RCTに登録・同意されたボランティアのみを対象としている」「サンプルサイズが少ない」「日本人でのデータはない」。米国 CDCによる市販後調査では、他のワクチンの有害事象率と比べて有害事象は多くないとしているが、過小評価の可能性がある。第10回厚生科学審議会・ワクチン分科会副反応検討部会の資料の結論は、「ワクチンとの因果関係は否定できない」「国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」、問題点は「過剰評価の可能性」「詳細な解析結果が明らかにされていない」。⑦まとめ:国内の診療ガイドラインの質を評価できるようにしましょう。USPSTF Recommendationを参照しましょう。

ガイドラインを金科玉条のようにしている人をたまに見かけますが、ガイドラインの質を評価するというのは、重要なことなんだなぁ・・・と痛感しました。

13:15~14:45 第3会場  Medical Eponyms for Clinician (清田雅智)

・人名を医学用語につけることについての議論 Medical eponyms: taxonomies, natural history, and the evidence.

・Ramsay-Hunt症候群: James Ramsay Hunt (1874-1937) は何故一人の人間なのに Ramsay-Huntと書くのか→Huntは父が亡くなり苦学した。母のことを想い、Ramsayという母の名前を入れたのではないか。現在では、Hunt症候群と呼ぶ人もいる。

・Ramsay-Hunt症候群は鼓索神経、アブミ骨筋神経、大錐体神経領域を侵す。Ramsay-Huntの報告は J Nerve Ment Dis 1907;34:73-96で、56の文献と 4の自験例をまとめている。

・Sir Henry Head (1861-1940):Dermatomeは herpes zosterの患者から導き出された。Head H, Campell W. Brain 1900;23(3):353-523

・Geniculate Ganglion (膝神経節) の VZVには 3つのグループがある。これは Zosterの前著に書いてある。1. Herpes Zoster auricularis, 2. Herpes Zoster in any of the zoster zone of cephalic extremity with facial palsy, 3. Heroes Zoster of the cephalic extremity with facial palsy and auditory symptoms

・Ramsay-Hunt症候群の 60例中 19例に auditory symptomがある=VIIIもやられている。Hunt 1915;38:418-46

・耳の裏の Zoster→ここも geniculate zoneである

・1909年 Zosterの痛みに顔面神経の中間神経を切断すると疼痛が改善する→感覚枝の存在。耳には、X (ABVN), C2-3 (GAN), V3 (ATN) の感覚神経が分布する。

JNNPの総説によると、皮疹が顔面麻痺に遅れて出現することがある。2.9%では IX, Xの症状がみられる。

・Tolosa-Hunt症候群は Tolosa E (J Neurol Neurosurg Psychiatry 1954;17:300-2) と Hunt WE (Neurology 1961;11:56-62) がそれぞれ報告したものである。

・Tolosaの原著は、cartoid siophon部の肉芽腫性血管炎で、V1領域の疼痛、III (時に IV, V, VI) の進行性麻痺であった→intercranial GCA説あり

・Huntの原著は、Retroobital pain+ophthalmoplagiaであり、ophthalmoplegic migraineだった可能性がある。

・Sir Jonathan Hutchinson (1828-1913) は Pagetの弟子だった。

・Hutchinson’s nailは subungual melanomaのサイン (BMJ 1886;1:491)

・Hutchinson’s signは V1→眼神経→鼻毛様体神経領域の VZVでみられる。診断制度としては RR 3.35~4.02という Arch Clin Exp Ophthalmol 2003;241:187-91

・Herpes Zoster Ophthalmicusについて Arch Ophthalmol 1983;101:42-5

・播種性VZV→隔離が必要。隣接しない 2領域以上 or 3領域以上

・John Benjamin Murphy (1857-1916):Surgical Clinics of North Americaという雑誌の前身は Murphyが作った。

・Five diagnosis method of Jon B Murphy (Surgical clinics of J.B. Murphy 1912;1:459-66)

(1) First percussion of kidney:CVA tenderness→腎疾患

(2) Hanner-stroke percussion:中指を立てて第9肋骨レベルに置いてその手をたたく→急性胆嚢炎

(3) Deep-grip palpation:患者を剤にして背後に回り、術者の右手の指先を曲げて右季肋部の下から “deep grip palpitation” という手技で深呼吸→急性胆嚢炎 (後の Murphy徴候)

(4) Pian Percussion:第4指から第2指まで順番にデリケートに打診→腹水

(5) Comparative bimanual examination:両側の iliac fossaeを同時に触診し、障害のある部位に抵抗を感じる→急性虫垂炎

Does this patient have acute cholecystitis? JAMA→Murphy Sn 65%, Sp 87%, LR+2.8, LR- 0.5 そんなに診断制度は高くない。現在はエコーのプローベで圧迫して確認する sonographic murphy signがお勧め。① Sn 63%, Sp 93.6%, LR+ 2.7, LR- 0.13, ②Sn 86.3%, Sp 35%

・Ismar Isidor Boas (1858~1938):痛みの部位と疾患との対応

・Guan A, Keddie N. Lancet 1972;2:239-241:痛みの最強点について

・Collin’s sign:自分で背中を押して痛みを誘発→胆石

・Capps. Arch Intern Med 1911;8:717-33:金属のスタイレットで胸腔内を刺激してどこが痛くなるか。横隔膜の腱中心を刺激すると肩が痛くなる→放散痛?

・Clinical sign’s of pain:腹腔内を wireで刺激して痛みを感じる部位を調べる Arch Intern Med 1922;30(6):778-89

Hospitalist 「気楽に学ぼう身体所見(第4回)胆嚢」 オススメ!

・Medical Eponysmは深く学べば役立つに違いない

・Medical Eponysmを調べるのに、Whonameditというサイトがお勧め。

・(質疑応答) 咽頭の神経分布について:咽頭の神経分布には Xが関係している→心筋梗塞で痛むことも! The radiology of referred otalgia.

人の名前が語源になった医学用語についての講演。清田先生とは、ACP日本支部総会の時に、毎年一緒にお酒を飲んで医学史ネタで盛り上がるのですが、この講演には圧倒されました。


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