プロトンポンプ阻害薬

By , 2016年2月20日 5:26 PM

胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎の予防や治療にプロトンポンプ阻害薬は効果的であり、臨床現場では頻繁に用いられています。実際に処方していて、副作用を経験することは非常に少なく、安心して使える薬というイメージがあります。ところが、ここ数年、いくつかの疾患リスクを高める報告が相次いでいます。

例えば、2013年4月の JAMA Internal Medicineには、高齢の退院患者の 1年後死亡率上昇と相関している可能性が指摘されていますし、2016年1月の JAMA Internal Medicineではプロトンポンプ阻害薬が、慢性/急性腎臓病、急性間質性腎炎、低マグネシウム血症、クロストリジウム腸炎、市中肺炎、骨折のリスクを高める可能性がまとめて紹介されています。

そんな中、2016年2月15日の JAMA Neurologyにプロトンポンプ阻害薬の使用が認知症のリスクと相関する (hazard ratio, 1.44 [95% CI, 1.36-1.52]; P < .001) という論文が掲載されました。

Association of Proton Pump Inhibitors With Risk of Dementia

タイトルだけ見たときはプロトンポンプ阻害薬はビタミンB12欠乏の原因になりうるので、それを介して認知機能低下をきたしている可能性はないのかなと思ったのですが、考察ではその可能性に触れつつ、動物実験でプロトンポンプ阻害薬が脳の βアミロイドレベルを高めることなども紹介しています。

抗血小板薬による消化管出血の予防など、神経内科領域でもお世話になることの多い薬ですが、こうしたリスクを頭の片隅に置いて使っていきたいと思います。ただ漫然と使用するのは避けないといけません。

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