エミール・ギレリス

By , 2014年2月28日 6:06 AM

エミール・ギレリス もうひとつのロシア・ピアニズム (グリゴーリー・ガルドン著、森松皓子訳、音楽之友社)」を読み終えました。翻訳者が知人の医師のお母様で、その医師の家に遊びに行った時にこの本を見つけたら、そのままくださったのです。翻訳には、その医師の意見も反映されているのだとか。

私はロシアのピアニストとして、スヴャトスラフ・リヒテルの CDはたまに聴きますが、ギレリスの演奏をこれまで聴くことがあまりありませんでした。しかし、この本を読み、これまでギレリスがいかに不当な評価を受けてきたか良くわかりました。

今は、Youtubeでギレリスの録音を色々とチェックしています。気に入った演奏の CDを買おうと思います。

いくつか動画へのリンクを貼っておきますが、演奏を聴いてギレリスに興味の湧いた方は、是非この本を読んでみてください。

・GILELS plays Chopin – Polonaise in A flat major ( As – Dur ) Op. 53

・Beethoven – Piano sonata nº21 in C major op_53 (Gilels)__480.flv

・Emil Gilels – Tchaikovsky – Piano Concerto No 1, Op 23 – Cluytens

・Gilels plays Brahms: Paganini Variations Book 1 (1/2)

・Gilels plays Brahms: Paganini Variations Book 1 (2/2)

・Beethoven / Gilels / Szell, 1968: Piano Concerto No. 4 in G major, Op. 58 – Complete

・Emil Gilels plays Stravinsky “Pétrouchka” (1/2)

・Emil Gilels plays Stravinsky “Pétrouchka” (2/2)

 


第15回ホテルオークラ音楽賞

By , 2014年2月27日 5:13 PM

2014年2月26日、「第15回ホテルオークラ音楽賞授賞式・受賞記念演奏会」に行って来ました。ホテルオークラ賞を受賞された成田達輝氏が招待してくださったためです。

第 15回ホテルオークラ音楽賞

2014年2月26日 (水) 18:00~ ホテルオークラ東京 本館 1階「曙の間」

成田達輝 (ヴァイオリン), テオ・フシュヌレ (ピアノ)

ショパン/サラサーテ:ノクターン第 2番

アルベニス/クライスラー:タンゴ

サン・サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ

三浦文彰 (ヴァイオリン), 小森谷裕子 (ピアノ)

ヴィエニアフスキ:華麗なるポロネーズ

チャイコフスキー:メロディ

チャイコフスキー:ワルツ・スケルツォ

成田達輝・三浦文彰 (ヴァイオリン), 小森谷裕子 (ピアノ)

ショスタコーヴィチ:5つの小品

その日は、仕事で打ちひしがれた気分になっていました。厳しい状態のなか治療を続けていた、ある患者さんの脳が不可逆な障害を受けていることが判明したからです。妹と同じくらいの年齢で、幼子がいて、何度も妹を診ているような気分にされた患者さんでした。

コンサートに行くか、コンサートをキャンセルして自宅に引きこもって布団に包まるか悩みましたが、ネガティブな感情が持続すると良くないので、そういう気分ではなかったけれどコンサート会場に向かいました。コンサート会場に向かう電車の中では、情緒がかなり不安定になっていて、これまでの治療経過を思い出し、涙ぐみそうになりました。

招待された私の席は前から 3列目中央で、近くにヴァイオリニストの藤原浜雄氏、徳永二男氏、チェリストの堤剛氏、指揮者の大友直人氏、それに成田達揮さんのお母様などがいました。

一曲目のショパンの冒頭は沁み入るような演奏で、心が洗われる思いがしました。二曲目のタンゴは、優しく癒してくれるような演奏でした。三曲目の序奏とロンド・カプリチオーソは成田さんの十八番。様々な表情を見せるこの曲に合わせて、自分の感情も揺れ動き、余計なことを考えることなく音楽に没頭できました。ふと左斜め前を見ると、藤原浜雄氏が演奏するように呼吸をしたり首を動かしたりしており、気が付くと私も同じようなことをしていました。演奏が終わった後、近くの席から「音が柔らかいわね~」という声が聞こえてきました。それぞれの曲を知らない方のために、Youtubeから曲の動画をリンクしておきます。

・Ruggiero RICCI @ CHOPIN/SARASATE Nocturne No.2 Op.9/2 – 1989

・Albeniz/Kreisler Tango – Daniel Bell, violin and Akemi Masuko, piano

・Camille Saint Saëns: Introduction and Rondo Capriccioso performed by Tanja Sonc

成田達輝さんの演奏に引き続いて、三浦文彰さんの演奏がありました。

演奏姿勢、ふとした表情の付け方に、ハイフェッツのような格好良さがありました。演奏した曲が丁度ハイフェッツが好んで演奏した曲だったから、余計に印象がかぶったのかもしれません。成田達輝さんとはスタイルが全然違っていて、柔の成田達輝さんに対し、剛の三浦文彰さんという印象を受けました。成田達輝さんとともに、テクニック的にも、音楽的にも完璧な演奏だったと思います。

その後、成田達輝さん、三浦文彰さんのデュオで、ショスタコーヴィチの「5つの小品」が演奏されました。息のぴったりあったデュオで、タイプの違う二人だからこそ、完璧に融け合いながら綺麗なコントラストがついていました。1楽章は楽譜を持っていて、遊びで合わせることはありましたが、ここまでこの曲が美しくなるのかと思いました。あまり知られてはいませんが、素晴らしい曲です。

・Five Pieces Shostakovich

演奏会を聴き終えて、来てよかったと思いました。不安定だった精神も落ち着きを取り戻し、音楽に救われるとはまさにこの事でした。

コンサートが終わってからは、懇親会場に行きました。押し出される形で最前列のテーブルへ・・・ (汗)。正装した、日本の音楽界を代表するような偉い人たちがいる中、ほぼ普段着の私が最前列・・・。ビデオカメラが回っているし、カメラマンが写真をたくさん撮っているし・・・。しかし、その居心地の悪さも、お酒が入るまででした (^^;

成田達輝さんが、「ショスタコーヴィチの最後の部分、テンポを上げたのは私のアイデアなんですよ~」と話しかけてきました。実は、演奏があまりに自然だったので、私はテンポを上げたのが意図的だったとは気付きませんでした。もともと楽譜にそう書いてあるのかと思ったくらいです。

会の途中で、成田達輝さんのお母様から、「いつもブログ見ています」とご挨拶されて、冷や汗をかきました。

それから、一緒にいた某神経病院の神経内科医が、三浦文彰さんと色々話していたのに加わり、いくつか話をしました。その神経内科医は、三浦文彰さんと知り合いだったようです。もう一人一緒にいた某集中治療医 H先生は、ピアニストのテオさんと英語で会話をしていました。テオさんはその日が誕生日だったそうです。

あと、ジャパン・アーツの方がいたので、私のプロモーションをしておきました・・・冗談です。会の終了間際は、ジャパン・アーツの方とずっと音楽談義をしていました。

最後に、御招待くださり、素晴らしい演奏を聴かせてくださった成田達輝さんに感謝したいと思います。音楽って本当に素晴らしいものですね。


Daclizumabの副作用

By , 2014年2月26日 6:08 AM

2013年4月14日に多発性硬化症治療薬 Daclizumabについてお伝えしました。その際、「時に重篤な感染症がネックになってくるかもしれません」と書きましたが、2014年2月14日、Neurology誌に Johns Hopkins MS Clinicから別の副作用について報告がありました。

Daclizumab-induced adverse events in multiple organ systems in multiple sclerosis.

Daclizumabによる治療を受けた 20名のうち、3名に daclizumabによると推測される副作用として皮疹、脱毛、びまん性リンパ節腫脹、乳房結節がみられました (Zenapax 1 mg/kg monthly IV, 平均治療期間 20ヶ月, いずれも臨床試験外の患者)。2名の患者ではリンパ節、乳房結節に、組織学的に CD56発現細胞を伴ったリンパ球浸潤が見られました (※DaclizumabはIL-2受容体のサブユニット CD25に対するモノクローナル抗体であり、CD25の減少は免疫調節性 CD56 bright ナチュラルキラー細胞の増殖を起こすことが知られています)。Daclizumabを中止することで、皮疹、脱毛、びまん性リンパ節腫脹は改善しましたが、乳房結節は残存しました。

他に代替薬がないなら別ですが、副作用という観点から、臨床的に daclizumabは使いづらいのではないかという印象を持ちました。


KIR4.1

By , 2014年2月25日 5:50 AM

2012年7月12日の New England Journal of Medicine誌に、多発性硬化症の患者血清中に存在する抗体を検索し、抗 KIR4.1抗体が同定されたという論文が掲載されました。

Potassium Channel KIR4.1 as an Immune Target in Multiple Sclerosis

この抗体は、調べた多発性硬化症患者の 46.9% (397名中 186名) で検出されるという驚きの結果でした。多発性硬化症の原因についてはこれまで議論のあるところでしたが、その解明に大きな影響を与える研究であることは間違いありません。

そして 2014年2月21日に、アメリカ神経学会のサイトにプレスリリースが掲載されました。

Antibody May Be Detectable in Blood Years Before MS Symptoms Appear

なんと、多発性硬化症を後に発症する患者では、臨床症状が出現する数年前から抗 KIR 4.1抗体の抗体価が上昇しているそうです。この研究は 2014年4月26日~5月3日にフィラデルフィアで行われる第 66回アメリカ神経学会年次総会で発表される予定とのことです。

多発性硬化症の治療薬は開発ラッシュが続いていますが、病因研究においても breakthroughが来ているのかなと思います。


STAP続報

By , 2014年2月24日 5:43 AM

2014年1月30日に発表されて衝撃を与えた STAP細胞論文。色々疑惑が取りざたされているようです。簡単に作れるのがウリだったのに、共著者も含め誰も再現性実験に成功できず・・・。画像の使い回し疑惑も指摘されました。小保方氏は沈黙・・・。

論文が掲載された Nature誌は、疑惑を報じるとともに調査に乗り出しているようです (日本語要約記事)。小保方氏が所属する理研も調査を開始しています。また、ある幹細胞研究者は、10の疑惑を指摘しています

そんな中、2月23日、AASJの西川伸一氏らが、ニコニコ生放送で論文解説を行いました。放送は 1週間の間、タイムシフト視聴が可能です。

「STAP論文徹底解説」 (番組ID:lv168190337)

実際に視聴しましたが、難易度の高い内容。幹細胞研究をしている人でないと分からない専門用語が説明なく用いられることが多く、誰を対象に説明をしているのかよくわかりませんでした。限られた放送時間なので、生物学的な基礎を一から説明しろとは言いませんが、幹細胞研究の基礎知識がない人でもわかるような配慮が欲しかったです。ただし、コメント欄で視聴者がリアルタイムで解説をつけていて、そこはニコ生の長所が発揮されたと思います。また、残念なことに、西川氏らが視聴者からの疑惑の指摘に直接答えることはありませんでした。ニコ生は双方向性がウリなので、視聴者との対話があれば良かったのですが・・・。論文の疑惑への言及は多少ありましたが、歯切れの悪い印象でした。

STAP細胞の再現性実験がうまくいかないことについて、理研は幹細胞 (STAP細胞) のもっと詳しい作成法を公開する予定のようです。

Japanese Scientists to Offer More Details on Stem-Cell Work

Feb. 21, 2014 4:38 a.m. ET
TOKYO—A leading Japanese research institute said Friday that it was preparing to release a more-detailed description of the method its scientists used to create stem cells after the credibility of their work was questioned.A spokeswoman at the Riken Center for Developmental Biology said detailed procedural methods for the studies led by Riken biologist Haruko Obokata “will be open to the public when preparations are…

STAP細胞が作れるとすれば、医療の分野への応用が期待されるだけに、もし捏造などがないのであれば、早く疑惑を晴らして欲しいです。

(参考)

小保方晴子のSTAP細胞論文の疑惑

もう一つの小保方論文のストーリー


多系統萎縮症とリファンピシン

By , 2014年2月23日 4:14 PM

多系統萎縮症 (multiple system atrophy; MSA) は、神経内科外来ではそれほど珍しくない、進行性の神経変性疾患です。

根本的な治療法はありませんが、MSAモデルマウスに抗菌薬リファンピシンを用いた実験で、この疾患と関係の深い α-synuclein fibrilsの形成を抑制されることが示され、臨床試験が行われました。2014年2月5日、Lancet neurology誌の online版に論文が公開されています。

Efficacy and safety of rifampicin for multiple system atrophy: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial

結果は・・・残念。進行抑制効果は示せませんでした。続く研究に期待します。


Restless legs syndrome

By , 2014年2月22日 7:55 AM

Restless legs syndrome (下肢静止不能症候群, むずむず脚症候群) は、下記診断基準にあるような特徴を有する疾患です。さまざまな媒体で話題になり、その臨床的特徴とインパクトのある名称で、現在ではかなり一般に知られた疾患になっていると思います。

Table 1 診断基準
1. 脚を動かしたいという強い欲求が存在し,また通常その欲求
が,不快な下肢の異常感覚に伴って生じる
2.静かに横になったり座ったりしている状態で出現,増悪する
3.歩いたり下肢を伸ばすなどの運動によって改善する
4.日中より夕方・夜間に増強する

治療には pramipexole (ビ・シフロール) や L-Dopa製剤などが用いられますが、2014年2月13日の New England Journal of Medicine誌に、Pregabalin (リリカ) と pramipexoleの比較試験が掲載されていました。

Comparison of Pregabalin with Pramipexole for Restless Legs Syndrome

Patients were randomly assigned to receive 52 weeks of treatment with pregabalin at a dose of 300 mg per day or pramipexole at a dose of 0.25 mg or 0.5 mg per day or 12 weeks of placebo followed by 40 weeks of randomly assigned active treatment. (略)

A total of 719 participants received daily treatment, 182 with 300 mg of pregabalin, 178 with 0.25 mg of pramipexole, 180 with 0.5 mg of pramipexole, and 179 with placebo. Over a period of 12 weeks, the improvement (reduction) in mean scores on the IRLS scale was greater, by 4.5 points, among participants receiving pregabalin than among those receiving placebo (P<0.001), and the proportion of patients with symptoms that were very much improved or much improved was also greater with pregabalin than with placebo (71.4% vs. 46.8%, P<0.001). The rate of augmentation over a period of 40 or 52 weeks was significantly lower with pregabalin than with pramipexole at a dose of 0.5 mg (2.1% vs. 7.7%, P=0.001) but not at a dose of 0.25 mg (2.1% vs. 5.3%, P=0.08).(略)

最初の 12週間はプラセボ群、pramipexole 0.25 mg群, pramipexole 0.5 mg群, pregabalin 300 mg群にランダムに割付け、その後プラセボ群を抜き出してランダムに薬剤を割付けるという試験デザインでした。Primary endpointは、12週の時点での pregabalinとプラセボの比較と、40ないし 52週時点での pregabalinと pramipexoleの比較でした。

結果ですが、12週の時点で、pregabalin 300 mg群は、プラセボ群と比較して、IRLS score並びに CGI-evaluationを有意に改善を示しました。一方で、pramipexole 0.25 mg群では有意な改善はなく、pramipexole 0.5 mg群で改善を認めました。非劣性評価において、12週及び 52週時点での IRLS scoreは、pramipexole 0.25 mg群ないし 0.5 mg群と比較して、pregabalin 300 mg群で大きな改善を認めました。

40週ないし 52週の時点における augmentation (薬剤内服中の症状の増悪) は、pregabalin 300 mg群で pramipexole 0.5 mg群とくらべて有意に優れていましたが、pramipexole 0.25 mg群と比較すると有意差はありませんでした。

副作用は、pramipexole 0.25 mg群の 18.5%, 0.5 mg群の 23.9%、pregabain 300 mg群の 27.5%で見られました。pregabalin 300 mg群の一般的な副作用は、浮動性めまい、眠気、倦怠感、頭痛であり、pramipexole群の一般的な副作用は頭痛、吐き気、倦怠感でした。

上記のような論文の記載を見ると、効果及び augmentationの予防において、pregabalinの方が優れた治療法に思えます。

但し注意が必要で、この臨床研究は、pregabalinを発売するファイザー社がスポンサーです。

もう一点気になるのが投与量です。高齢者に pregabalin 300 mgという量は、副作用を起こしやすいと多いと思います。何故このような投与量なのか?実は 2010年の neurology誌に載ったプラセボ対照試験は、”flexible-dose schedule” という容量設定で行われ、治療効果は平均 139 mg/dayから既に認められたものの、322.50 mg/day (±98.77) という量が最も効果的であったそうです。こうしたこともあり、このような投与量で臨床試験がなされたのではないかと思います。ちなみに Neurology論文については、物言いが付いており、“量が多くて副作用が出やすいから、もっと少ない量で検討すべき (The mean effective dose was 337.5 (105.6) mg/day, which is high and could result in sedation, weight gain, and ataxia. A lower dose should have been considered)” と letterが寄せられていました。余談ですが、その letterには、”Level A evidence is available for cabergoline, levodopa, transdermal rotigotine, and gabapentin. Level B evidence is available for pramipexole, bromocriptine, valproate, carbamazepine, clonidine, oxycodone, and clonazepam.” と治療薬のエビデンスレベルが簡単に紹介されています。

さて、 話が脱線しますが、pregabalinは最近では神経障害性疼痛のみならず、てんかん治療薬としても臨床研究が行われ、2014年2月18日に neurology誌に掲載された論文でも、それなりの成績を残しているようです。もともと神経障害性疼痛に用いられていたカルバマゼピン (テグレトール)、ガバペンチン (ガバペン)も抗てんかん薬であったことを考えると、さもありなんという感じです。


東京シティフィル 第277回定期演奏会

By , 2014年2月21日 5:43 AM

2014年2月14日、成田達揮さんのコンサートを聴きに行きました。

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

第 277回定期演奏会

2014年2月14日金曜日 7:00 pm 東京オペラシティコンサートホール

1. ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

歌劇「イドメネオ」のためのバレエ音楽 K. 367

2. ニコロ・パガニーニ

ヴァイオリン協奏曲 第 1番 ニ長調 作品 6

3. ロベルト・シューマン

交響曲 第 2番 ハ長調 作品 61

指揮:ロッセン・ミラノフ ヴァイオリン:成田達揮 コンサートマスター:戸澤哲夫

この日は大雪。都内の交通が麻痺していました。

東京地方に大雪警報、ひと冬に2回発表は16年ぶり

2014年2月14日 23時15分

14日午後10時半過ぎに、東京23区に大雪警報が発表された。先週の8日に続き、東京地方に大雪警報が発表されるのは今季で2回目。ひと冬で2回大雪警報が発表されるのは、1998年以来で16年ぶりのことだ。関東は15日の明け方にかけて大雪に警戒が必要で、気象庁は大雪による交通障害に警戒を呼びかけている。(日本気象協会)

横浜は16年ぶりに積雪20センチ以上の大雪

14日午後11時の積雪は、東京都心は13センチ、千葉市は13センチ、熊谷市は32センチ。横浜市は22センチと、1998年以来16年ぶりに積雪が20センチを超えた。記録的な大雪となっている甲府は積雪76センチ。関東甲信は15日の明け方にかけて大雪に警戒が必要だ。

(2014年2月14日 23時15分)

コンサート 30分前に会場に着けるように病院を出たのですが、雪で電車が遅れまくり、着いたのは 1曲目の終わりでした。しかし、成田達輝さんのソロ曲には何とか間に合いました。

パガニーニは、成田さんの十八番。この難曲を余裕を持って演奏していたのはさすがでした。でも、指揮者との相性はあまり良くなかったようで・・。しかし、どうやってでも聴かせる演奏にできるところが、ソリストの力量でしょう。第一楽章のカデンツァは、特に美しかったです。アンコールは、パガニーニのカプリス第 1番、そして浜辺の歌 (成田為三作曲)でした。パガニーニのカプリスは成田さんの得意曲です。浜辺の歌は派手な曲の後にシンミリときました。

演奏会の半分が終わって休憩の時に、成田達輝さんのお父様に挨拶をされて、「いつもブログを見ています」と言われて恐縮しました。

パガニーニのプログラムで指揮者の力量を少し疑ったのですが、後半のシューマンは、素晴らしい出来でした。この指揮者、パガニーニはイケてなかったけど、シューマンの演奏を聴くと実力はあるのでしょうね。

演奏会が終わってから、某病院集中治療部の H先生らと楽屋に遊びに行きました。まず、コンサートマスターの戸澤さんに挨拶。H先生と同じ中学校・高校の 1学年違いで、意気投合していました。その後、シティ・フィル事務局長の新井さんと挨拶しましたが、H先生と新井さんは一緒に食事をしたことがあるようでした。

その後、成田さんの楽屋に入って、準備が終わってから食事会に行きました。タクシーがつかまらず、電車での移動。新宿駅に着いて、何とかタクシーを捕まえました。かなり雪が積もっていて、成田さんが楽器を持って転ばないかヒヤヒヤしました。持っているのが高価な楽器ですし、そして手を怪我したら、演奏活動にも影響しますしね。

食事会は、新宿ワシントンホテルの六角。数人で、すき焼きを楽しみました。成田さんが中学生の頃、パガニーニのカプリスの楽譜を手に入れて、あまりの嬉しさに 1日で全曲通して弾いてみたと聞いた時はビックリしました。天才は違いますね。

パリで一緒に食事したときは、シゲティ著の「ベートーヴェンのヴァイオリン作品―演奏家と聴衆のために」という本を差し上げたのですが、今回は Mx Rostal著の “Beethoven: The Sonatas for Piano and Violin”  という本を差し上げたら、喜んで頂けました。Rostalは、以前私がお貸しした CDに収録されていた演奏家です。

食事中、私が one bow staccatoが苦手だと話をしたら、あまりの雪で他に客が居なくて、さらに個室だったので、サイレンサーをつけて、軽く弾いてみてくださいました。彼がうまく弾けなかった頃、師匠の藤原浜雄先生から、きちんと弓で弦を捕まえるように、”bite!” と指導されたそうです。

その後、Bazziniの「妖精の踊り」のボウイングの話になりました。下記動画で 55秒くらいからのボウイングがうまくいかないと私が話したら、「アップボウでは腕自体を引き上げる感じ」「特に上腕の筋肉に力は入れていない」と実際に弾いてみせてくれました。こちらはアドヴァイスを聞いて自宅で練習したら、ある程度弾けるようになりました。何と贅沢な指導・・・。

そして、成田さんに Bazziniの曲を演奏会でアンコールとして弾いてくださるようにリクエストしたら、検討して頂けるとのことでした。楽しみです。成田さんの華麗なボウイングとの相性が良いと思うのですよね。

・Bazzini – La ronde des lutins (bazzini)

その食事会では、話しませんでしたが、アンコール・ピースとして個人的に期待したいのは下記のような曲達・・・ (^^;

・Gil Shaham – Sarasate, Zapateado

・Scherzo-Tarantelle

・Nathan Milstein plays Kreisler Praeludium and Allegro in the Style of Pugnani

・Scott Joplin – Easy Winners (Itzhak Perlman / Andre Previn)


teriflunomideと cladribine

By , 2014年2月14日 6:10 AM

2014年1月23日、Lancet neurology誌に、以前紹介した多発性硬化症 (MS) の経口薬 teriflunomideの第三相試験の結果が出たようです。

Oral teriflunomide for patients with relapsing multiple sclerosis (TOWER): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial

 18~55歳、EDSS 5.5以下の再発寛解型多発性硬化症患者 1169名に対して、placebo, teriflunomide 7 mg, 14 mgをそれぞれ割付け、主要エンドポイントを年間再発率として評価しました。年間再発率はプラセボ群 (0.50) の方が、teriflunomide群 (14 mg 0.32, 7 mg 0.39) より高いという結果でした。二次エンドポイントである障害の蓄積は、teriflunomide 14 mgでリスク減少がみられましたが、 7 mg群では placebo群と比較してリスク減少効果はみられませんでした。最も多い副作用は肝機能障害、脱毛、頭痛でした。4名の死亡がありましたが、薬剤との関連はないと判断されました。

 個人的には、teriflunomide 14 mg群で腸結核を発症した患者がいること、 teriflunomide 14 mg群での死因が自殺、敗血症であること (論文では薬剤との因果関係はないと結論づけられている) ことは少し引っかかります。この手の薬は沢山開発されていて、どれも効果は大差ないように思うので、できるだけ副作用のない薬を選びたいものです。

2014年2月4日の Lancet neurology誌には、多発性硬化症の経口薬 cladribineの第三相試験の結果も出ていました。とはいっても、clinically isolated syndromeの段階での介入試験のようです。

Effect of oral cladribine on time to conversion to clinically definite multiple sclerosis in patients with a first demyelinating event (ORACLE MS): a phase 3 randomised trial

18~55歳、最初の脱髄イベントから 75日以内で、かつ臨床的に無症候性の病変 (3 mm以上) が 2個以上ある、EDSS 5点以下の患者 616名が対象でした。患者はそれぞれ cladribine 5.25 mg/kg, 3.5 mg/kg, placeboに割り付けられました。主要エンドポイントは 96週後に臨床的に確実な多発性硬化症 (clinically definite MS) になっているかどうかとしました。cladribineによるリスク減少 (ハザード比) は、cladribine 5.25 mg/kgで 0.38, 3.5 mg/kgで 0.33でした。副作用としては、cladribine群で placebo群と比較してリンパ球減少症がみられました。

 多発性硬化症の経口薬は次から次へと開発が進んでいて、もう把握しきれないくらいです。いくつかの薬剤は、近いうちに日本に入ってくるものと思われます。患者さんにとって BESTの選択ができるように、論文を批判的にチェックしながら、使用可能になる日を待ちたいと思います。


血液ガスをめぐる物語

By , 2014年2月13日 7:55 AM

血液ガスをめぐる物語 (諏訪邦夫著、中外医学社)」を読み終えました。諏訪邦夫の血液ガス博物館というサイトをベースにした本です。

体内の酸素をいかに測定するか?古くはクロード・ベルナールが、 1851年に、一酸化炭素が血液と結合して、酸素運搬能を失わせて動物を殺す作用を発見し、この事実を用いて血液から酸素を遊離させて測定する方法を提案したことがあるそうです。しかし実際に測定できるようになるには多くの研究が必要でした。フィック (拡散の法則)、ボーア (ボーア効果: 酸素解離曲線への二酸化炭素の影響)、ヒル (酸素解離曲線)、クロー (マイクロトノメター)、ヴァン=ストライク (酸素と二酸化炭素の含量測定法)、ライリー (気泡法 PO2測定)、ホールデン (ホールデン効果:二酸化炭素解離曲線への酸素の影響) らが研究を繰り広げました。この頃は、遊離させた酸素や二酸化炭素を抽出して含量を測定する方法などがとられていました。

その後は、溶液に電流を流して性質を推定する方法を用いて、pH, 酸素、二酸化炭素の測定が行われました (例えば、電流変化は酸素分圧変化にほぼ比例するため、これにより分圧測定が広まることにもなりました)。そのためには電極が重要で、「分極を防ぐ」「較正可能にする」ことに努力が注がれたようです。最初は水素電極や水素ガス/プラチナ電極など、最終的には酸素電極、二酸化炭素電極が開発されました。信頼出来る二酸化炭素電極の開発には時間がかかり、それまでもっぱらアストラップ法が用いられていました。こうして電極が揃ってきて、セブリングハウスらにより、血液ガス分析装置が完成しました。その機械は、現在ワシントンにあるアメリカ自然博物館の地階に展示されているそうです (商品化へはまだ道のりあり)。

また、忘れてはいけないのがパルスオキシメーターです。この機械は、酸素飽和度を持続的にモニターするものですが、日本人が開発したことを知る人はあまりいないかもしれません。1970年、日本光電の青柳卓雄氏は色素希釈法による心拍出量測定装置の開発で、色素の拍動に悩まされたのがきっかけで、パルスオキシメーターの原理に思い至り、特許を申請しました(青柳氏本人による開発秘話)。日本光電の試作機は、耳朶で信号を得るものでした。ミノルタの山西昭夫氏は、指尖容積脈波の波高値の物理的意味の考察から同様の着想に達し、1ヶ月遅れで類似特許を申請し、こちらは国際特許のみ成立しました。ミノルタの商品は、指先で信号を得るものでした。麻酔科医のニュー氏は、この装置の有用性に気付き、麻酔科医の立場を放棄して、ネルコア社を立ち上げ、装置の普及に尽力しました。著者は、この何万人もの命を救ってきた装置の開発と普及に対し、青柳氏とニュー氏にノーベル賞を与えるべきだと考えているようです。

ざっと血液ガス測定の歴史を紹介しましたが、本書にはもっともっと詳しく書いてあります。著者が歴史的論文の多くを読み込んでいることに感服しました。本書には 1870年のフィックの論文の全訳など、他ではお目にかかれないものも収載されています。麻酔科医など、血液ガス分析に関心のある方は是非読んでみてください。

以下、備忘録

・ボーアの死腔に関する論文は有名だが、ボーアの意図は違って、死腔を予め解剖学的に計測しておいて、それを逆に使って肺胞気組成を出そうとした。

・ヘンダーソン (ヘンダーソンーハッセルバルフ式でお馴染み) が動物小屋を研究室に改造して運営するのに 5000ドルくらい必要だった時、ヴァン=ストライクがロックフェラー二世に無心したら、「5000ドル程度ならヘンダーソン教授が自分で何とかするさ。もし 500万ドル必要というのなら考えよう」と答えたらしい。

・ホールデンは酸素療法を開始した人としても評価されている。ホールデンは戦時中の 1917年に毒ガスに対する酸素療法の有効性を唱え、実行した。

・pHという単位を提唱したソーレンセンは、水素電極を用いて体液の水素イオン濃度を測定して、50 x 10-9モルという値をだした。この数値は、pH 7.3に相当する。

・ハーバーが開発したハーバー法により、窒素肥料が手に入りやすくなり農業に大きな影響を与えた。そのハーバーがガラス電極を開発し、水素電極にとってかわった。ハーバーは毒ガスの研究にも携わり、反対した妻を自殺で失った。ノーベル賞の受賞講演では「戦争に勝者はいない。犠牲者だけが残る」という言葉を残している。

・セブリングハウスは、第二次大戦中は MITでレーダーの研究を行っていて、原爆投下を機会に医師になる最終決断をした。コロンビア大学医学部の学生時代に、横隔神経刺激装置を製作して数台販売した。

・急性に CO2が上昇する場合、PCO2 10 mmHgあたり [HCO3-] 1 mEq/l上昇すると概算できる。ここから大きく外れていたら、非呼吸性の要素が加わっていると解釈する。慢性に CO2が上昇する場合、PCO2 10 mmHgあたり [HCO3-] 4 mEq/lの上昇と概算できる。[HCO3-] の上昇の 3 mEq/l分は腎臓が働いたと解釈できる。

・1987年の昭和天皇の手術の際、東京大学病院の手術室にはパルスオキシメーターが 4台しかなく、それを持ち出すのは躊躇されて手術時には使わなかったが、結局術後に必要と判断して 1台を宮内庁病院に移動した。


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