免疫グロブリン大量療法と貧血

By , 2012年9月8日 10:18 AM

2012年9月6日の New England Journal of Medicineに、Guillain-Barré症候群に対する免疫グロブリン大量療法 (IVIg) に合併した重度貧血の 2症例が報告されました。IVIgは溶血性貧血のリスクとして知られています。

IVIG — A Hemolytic Culprit

The administration of intravenous immune globulin (IVIG) is an established treatment for deficiency states and other immune-mediated disorders. It is used extensively in patients with neurologic diseases and is licensed for the treatment of Guillain–Barré syndrome.

Large doses of IVIG have been recognized as a cause of hemolytic anemia, which occurs by means of passive transfusion; this rare complication has been given little attention. We report here on two patients with Guillain–Barré syndrome who were seen in consultation because of acute severe anemia. The patients presented within 1 week of each other.

(略)

Adverse reactions to treatment with IVIG include headache, renal insufficiency, hepatitis C, meningeal irritation, and thrombosis. The passive transfer of anti-A or anti-B antibodies in IVIG has been well recognized,1 as has the transfer of anti-Rh antibodies; passive transfer of antibodies to viral infection, without transmittal of the virus, also occurs. Many clinicians are little aware of this complication and are usually bewildered by the sequelae. It is impractical to evaluate a patient’s serologic state before administering IVIG.

(略)

Hemolysis is self-limiting, and the transfusion of type O packed red cells should be used to treat the anemia.

IVIG contains multiple antibodies that can have unexpected consequences, including hemolysis and false positive results on serologic tests. Physicians should be aware of these rare sequelae so they will be prepared to manage them.

個人的には IVIgでの合併症はまだ経験がありませんが、IVIgは神経内科領域では比較的よく行いますし、こうした合併症の情報は押さえておかないといけませんね。

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震災ヴァイオリン

By , 2012年9月7日 8:35 AM

被災した木材で製作されたヴァイオリンが話題になっています。このヴァイオリンを用いて 8月30日に行われたジェラール・プーレ氏のコンサートは是非行きたかったのですが、予定が合わず・・・。

・Concert features violin made of wood from Iwate Prefecture

ニュース動画ではバッハのシャコンヌを演奏していますが、プログラムにはないのでアンコールでしょうか。

このヴァイオリンに関するニュースは様々なところで目にします。プーレ氏の演奏は逃しましたが、是非生で一度聴いてみたいです。

・【震災】「被災地のバイオリン」演奏 仏・パリ(12/06/21)

 

・希望発信!いわて-ヴァイオリン・プロジェクト『千の音色でつなぐ絆』

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg6677.html

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渡米計画

By , 2012年9月4日 7:35 AM

9月下旬から 10月上旬にかけて、アメリカを訪れようと思っています。竹島、尖閣問題で外交的に大事な時期なので、パートナーであるアメリカとの結びつきを強めるためです (嘘です)。先輩が留学しているので、遊びに行くついでに、アメリカの電気生理検査事情を探って来ようかなという試みです。

旅程

9月28日 成田空港 (15:10) →ニューヨーク ジョン・F・ケネディー空港 (14:59) DL172, ベレクレア

9月29日 NY観光、コンサート:Saturday Matinee: Brahms’s Clarinet Quintet & “Scheherazade”

9月30日 ニューヨーク ラガーディア空港 (20:05) →バーミンガム バーミンガム空港 (21:53) DL5130, 先輩宅泊

10月1日 アラバマ大学バーミンガム校見学, ヒルトン

10月2日 バーミンガム バーミンガム空港 (7:00) →ニューヨーク ラガーディア空港 (10:29) DL5039, オペラ:カルメン, メイフェア泊

10月3日 NY観光, コンサート: Chicago Symphony Orchestra Opening Night Gala

10月4日 ニューヨーク ジョン・F・ケネディー空港 (13:50)→ 成田空港 (10月5日, 16:55) DL173

調べてみて、ニューヨークのホテルの高いこと高いこと。安いホテルで $ 200くらいします。もう少し安く泊るところもあるようなのですが、さすがに治安が悪いので、泣く泣く高い金を払って普通のホテルにしました。

本当は 1週間前倒しして渡米したかったのですが、どうしても行きたかったカーネギーホールがオフシーズンのため、この時期になりました。第 1-3週土曜日が当直のため、時間的にはここしか選択の余地がありませんでした。カーネギーホールも翌日のコンサートの方が曲目は良いのですが、そうすると帰国してからの当直に間に合いません。

せっかくの機会なので楽しんできます。多分色々トラブルに見舞われるとは思いますが、それが旅行というものです。昔の旅行を振り返ってみると、トラブルの方が強く思い出として残っています。

ニューヨークのオススメスポットなどあればご教授いただければ幸いです。NYを案内してくださる女性の方も絶賛募集しております (^^)

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在宅医療と凝固異常症

By , 2012年9月2日 7:54 PM

少し古い話ですが、2011年12月28日の通知で、ヘパリンの自己注射が保険診療で行えることになりました。

この保険適応拡大は、不育症に関してはかなり話題になったようです。神経内科領域だとあまり使う機会はないかなぁと思っていたら、2012年早々、私が往診の手伝いをしている神経内科クリニックで、その恩恵を受けることになった患者さんを経験しました。

患者さんは、Trousseau (トルーソー) 症候群という病気でした。総合病院で働く神経内科医であれば、年に数例見かけることのある病気です。悪性腫瘍にともなって凝固異常を来たし、脳梗塞のような血栓症を繰り返します。余談ですが、1865年にこの病気を発見した Trousseau自身、奇しくもその 2年後に胃がんでこの病気になりました。

Trousseau症候群については、2007年の blood誌の総説によくまとまっています。

Trousseau’s syndrome: multiple definitions and multiple mechanisms

さて、この疾患にかかると、血栓症を繰り返し、予後は非常に不良です。マニアックな話をすると、腫瘍マーカー CA125高値の方が脳梗塞を繰り返しやすいと推測されていますが、循環するムチン物質と関係があるようです。

根本的な治療として、癌を取り除くことができれば良いのですが、それが困難なことがしばしばです。結局、多くの場合「血液をサラサラする薬を使って、血栓症を予防する」ことが治療の中心になります。しかし残念なことに、そのための薬剤はヘパリン注射薬が望ましいとされているため、他の問題をクリアして帰宅出来るようになっても、患者さんはヘパリン注射のためだけに入院継続が必要とされるケースがありました。

ところが、今回ヘパリン製剤を自己注射出来るようになったことで、このような患者さんで自宅での治療が可能になりました。癌患者さんの、「できるだけ自宅で過ごしたい」という希望を叶えるのは非常に大事なことです (厳密には、病院で点滴で用いる未分画ヘパリン製剤と、在宅診療で用いる低分子ヘパリンが全く同等に有効かは議論があります)。

私が勤務するクリニックで治療されていた方は、残念ながら最終的に癌のため亡くなられてしまいましたが、最期は自己注射をしながら自宅で過ごすことが出来ました。保険適応拡大になった直後に患者さんに活かせて、非常に記憶に残る症例でした。

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ALSの原因遺伝子 profilin1

By , 2012年9月1日 12:09 PM

2012年 7月 15日の Nature誌に筋萎縮性側索硬化症 (amyotriphic lateral sclerosis; ALS) の新規遺伝子の論文が掲載されました。興味深い内容だったので、論文の内容を紹介します。

Mutation in the profilin 1 gene cause familial amyotrophic lateral sclerosis

ALSの約 10%が家族性で、そのうち約半数は遺伝子が未同定です。著者らは、優性遺伝を示し、既知の ALS原因遺伝子に変異のない、白人とセファルディムの家族性 ALS家系をそれぞれエキソーム解析で調べました。その結果、白人家系で PFN1 (Profilin 1), XPOT (Exportin-T; tRNA exportin) 変異を、セファルディム家系で FMO2 (Dimethylaniline monooxygenase 2), KIF1C (Kinesin-like protein KIF1C), PFN1変異を同定しました。両者の家系で PFN1変異が共通しており、白人家系での変異は C71G、セファルディム家系での変異は M114Tでした。

次に、一般的な ALS原因遺伝子変異が除外されている 272家系の家族性 ALSで、この PFN1変異があるか調べました。 すると 5家系に PFN1変異を認めました。5家系の変異の内訳は、C71Gが 2家系、M114Tが 1家系、G118Vが 1家系、E117Gが 1家系でした。ハプロタイプ解析の結果、C71G家系は共通の祖先を持つらしいことがわかりました。ちなみに PFN1の C71, M114 G118, E117は進化的に保存されています。PFN1変異 (22例) の臨床的特徴としては、発症が 44.7± 7.4歳で、全て limb onsetで、球麻痺型は 1例もいませんでした。

これらの変異が良性の多型ではないことを確認するため、7560例の正常対照群で調べたところ、C71G, M114T, G118V変異は見つかりませんでした。しかし、E117G変異は 3例見つかりました。E117Gが病的かどうかは議論が残りますが、残る 3つは病的な変異と言えます。

続いて、培養細胞に変異を導入して解析を行いました。C71G, M114T, G118V変異を導入された Neuro-2A細胞では、PFN1は NP-40で不溶性画分優位でした。一方で、PFN1 E117G及び wild typeでは可溶性画分優位でした。この SDS抵抗性不溶性画分は PFN1 oligomerであると推測されます。

さらに、Neuro-2A細胞に変異を導入して免疫染色を行ったところ、E117Gを含む全ての変異で細胞質内凝集体が検出されました。これらの凝集体はユビキチン化されていました。Primary motor neuronでは、E117Gでユビキチン化は検出できなかったものの、他の 3つの変異体ではユビキチン化が確認できました。

Primary motor neuronに PFN1変異を導入して形成された凝集体に、他の ALS原因遺伝子産物 FUS, TDP-43及び、脊髄性筋萎縮症関連蛋白 (Spinal muscular atrophy-related protein) SMNが含まれるかも解析しました。凝集体には、FUS及び SMN (※ SMNは PFN1結合能があることが過去に報告されている) は検出されませんでしたが、30~40%の細胞で細胞質に TDP-43陽性 PFN1凝集体が検出されました。TDP-43病理を示した孤発性 ALSの脊髄では、PFN1の異常病理を示さなかったことから、TDP-43の凝集が PFN1の凝集を誘導しているわけではなさそうです。

PFN1はアクチン結合タンパク質なので、アクチン結合能のない変異体 PFN1 H120Eを病的コントロールとして、様々な解析を追加しました。HEK293細胞に PFN1変異を導入したところ、PFN1 C71G, M114T, G118V, H120Eでアクチン結合能が失われているのが確認できました。また、primary motor neuronに変異を導入したところ、C71G, M114T, G118V, H120Eで神経突起及び軸索の伸長が阻害されました。E117Gでも軸索の伸長は阻害されましたが、wild typeとの統計学的な有意差はありませんでした。

軸索の伸長にとって、成長円錐における actin dynamicsの制御は重要であることが知られています。そこで成長円錐に注目してみると、PFN1変異を導入された primary motor neuronでは成長円錐のサイズが約半分になっていました。さらに F actin (fibrous actin: アクチポリマー) と G actin (globular actin: アクチンモノマー) の比を調べたところ、C71Gでは F/G actin比が wild typeの 24.4%まで減少していました。このことから、成長円錐における G-actinから F-actinへの変換の抑制が、PFN1変異での形態学的異常に影響していることが示唆されました。

最後に、他の profilinについても調べました。PFN1は筋肉以外に ubiquitousに発現しています。一方で、PFN2は脳と神経細胞に発現し、PFN3は精巣に発現しています。274例の家族性 ALSについて調べたところ、PFN2, PFN3変異は見つかりませんでした。

まとめです。著者らは ALSの新規遺伝子 PFN1を同定し、変異遺伝子を導入した培養細胞における凝集体について解析し、変異体では軸索の伸長が抑制され成長円錐のサイズが減少することを突き止めました。 これらの知見は、細胞骨格経路の障害が、ALS発症において重要であることを示しています。

プロフィリンは 140アミノ酸からなり、G-アクチンへの結合を介して、F-アクチンの伸長制御に関係しています。もう少し詳しく説明するために、「タンパク質科学イラストレイテッド (竹縄忠臣編、羊土社)」から、プロフィリンに関する部分を抜粋します。

プロフィリン、チモシンβ4は細胞中でアクチンモノマーのプールを作る。プロフィリンは分子量 15000ほどでアクチンの ADP-ATP交換活性ももち、脱重合した ADP-Gアクチンを ATP-Gアクチンに変換することにより重合しやすくする働きももつと考えられている。プロフィリン-Gアクチン複合体は膜のリン脂質 PIP2によって解離されるとされている。酵母から動植物にいたるまで存在する。

これを読むと、プロフィリンの障害により、アクチンが重合しにくくなるのが理解できます。細胞骨格であるアクチンが重合できないと、当然軸索も伸長できません。今回の論文は、「PFN1は ubiquitousに発現しているのに、何故 motor neuronのみを侵す ALSを発症するのか?」という疑問には答えていませんが、PFN1が ALS研究において重要な役者であることは確かなようです。PFN1は VCP, MSN, Huntingtinと直接相互作用することが知られているので、ALSのみならず変性疾患という大きな枠組でも注目を集めることになるかもしれません。

驚くべきことに、PFN1と協調して働く分子が、ALSの治療ターゲットとして 8月26日に報告されました。その論文に関しては、また後日触れたいと思います。

【補足】 C71Gは、71番目の C (システイン) が G (グリシン)  に変異したことを示します。他の変異も、同様に記載しています。これらの記載法が理解できない方は、「変異遺伝子の記述法」から「II. タンパク質レベルでの記載法」をご覧ください。また、アミノ酸の一文字表記については「アミノ酸の名称と略記法」を御覧ください。

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誕生日

By , 2012年8月30日 7:56 AM

めでたいのだか、めでたくないのだかわかりませんが、誕生日を迎えました。年齢は秘密ですが、1の位と 10の位を足すと 9になります。

とりあえずお祝い気分でいたら、こんな記事を見つけて、独身の私としては少し萎えました。

takのアメブロ薬理学などなど 子供が持つde novo変異と疾病リスクは受胎時の父親の年齢が高いほど上昇する

記事に「自分の遺伝子をできるだけ無傷で子供に伝えたい場合は、若い間に精子を冷凍保存しておく必要があるかもしれません」とあるので、明日ラボに行ったら -80℃の冷凍庫に大量保存しておこうと思います。ただし他の研究員に見つかったら大騒ぎになること必死です。ラボには、下記のように DNAを抽出出来るキットが大量にあるので、「私のではない」としらを切っても、簡単に DNA鑑定されてしまうのです。9歳だったら犯人がバレても少年法が守ってくれるのに・・・。

・DNAを抽出してみた ( DNA抽出キット, 1500円/3回)

後半は完全にネタです

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楽器の盗難

By , 2012年8月29日 8:00 AM

面識はないのですが、楽器の盗難に会った海道久恵さんという方が、Facebookなどで情報提供を求めています。

盗まれた楽器はなかなか出てこないのが一般的ですが、「車上荒らし」で偶然盗まれているようなので、楽器盗難のプロのしわざでなければ出てくる可能性があるかもしれません。

ポスターに楽器の特徴がしっかりと書いてあるので、見つかることを願ってポスターの画像を貼っておきます。

(参考)

お姉さまのブログより 「拡散希望!お願い致します。

Violin and Viola

盗難された楽器についての情報

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眠れない熱帯夜

By , 2012年8月28日 10:22 PM

暑くて目が覚めるのは嫌なので、夏場は冷房をつけて寝ます。

しかし、数日前、汗だくで夜間目が覚め、エアコンの温度を下げて、全裸になって床に寝ました。そして温度を下げ続けて設定を 22℃としましたが、全然涼しくならず・・・。水分を大量摂取しながら、「ひょっとして、甲状腺機能亢進症になったかなぁ・・・。そういえば、救急外来で『動悸がする』と受診してきた患者さん、問診で『エアコンを 18℃にして水は一日 2L飲みます』と言うので、甲状腺機能亢進症を疑って翌日検査したら診断ドンピシャだったし・・・。俺は頻脈はないけれどどうだろうなぁ」と心配していました。

翌日午前 3時頃、やはり暑くて目が覚め、エアコンの側に行くと、冷風が出ていないのに気付きました。数年前に引っ越して一度もフィルターの掃除をしていなかったので、「フィルターが詰まったのかな」と思って開けてみると、埃がビッシリ詰まっていました。さすがに冷房がないのは辛いため、何とかしようと掃除機で埃を吸って、フィルターをセットし直しました。やはり電源を入れた直後は冷風が出るのですが、何故かすぐに風が出なくなってしまいます。結局、この日も全裸で汗だくになって、朝まで床で転げまわって過ごしました。

そして今日、午前 2時にやはり暑くて目覚めました。フィルターを外して冷房を運転させてみると 30分くらいで運転ランプが点滅して風が出なくなります。マニュアルを引っ張りだして読むと、「暖房運転で運転ランプが点滅するときは、霜取りモードになっています」と書いてありました。冷房運転で運転ランプが点滅するときは何のエラーか説明なし。

朝 4時くらいまで格闘するうちに、「冷房運転で『強』にして可能な限り運転→運転が停止したら再起動してドライモード」にすれば、エアコンが継続して作動することが発見しました。何とか寝られるくらいの室温にはなります。

これから寝ようと思うのですが、こうして得たノウハウを使ってやり過ごそうと思います。

もう一つ、ラボで同僚達が「窓を開けて寝れば冷房いらないくらい涼しいよ」と重大なヒントをくれました。エアコンに期待が出来ないと判断したら、そうするつもりです。

今夜こそは、久々の安眠を得たいものです。

おやすみなさい。

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眠れない一族

By , 2012年8月27日 11:13 PM

「眠れない一族 (ダニエル T.マックス著, 柴田 裕之 翻訳, 紀伊國屋書店)」を読み終えました。

Neurology 興味を持った「神経内科」論文 「眠れない一族 (最高にスリリングなプリオン病の本)」

本の内容については、上記リンク先をごらんください。

本書はジャーナリストが書いた本なので、医学知識がなくても読めます。一方で、参考文献は膨大で、きちんと医学雑誌も読み込んで書いています (この辺が日本のジャーナリストとの違い)。医療関係者にも非医療関係者 (特に牛肉を食べる機会のある人) にもオススメ。神経内科医は多分必読です。

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論文不正に関わるあれこれ

By , 2012年8月26日 9:19 AM

論文というのは、研究者にとって最大の評価対象です。ポストや生活がかかっているだけに、捏造など不正を試みる研究者も、わずかですが存在します。

最近、海外で斬新な手口での論文不正が立て続けに明らかになりました。

まずは中国から・・・。

「史上最強のねつ造教授」、同姓同名の著名学者の論文を勝手に自分の経歴に―中国

2012年7月28日、中国・北京化工大学の陸駿(ルー・ジュン)教授が同姓同名の学者が書いた複数の論文をすべて自分のものと偽り、経歴をねつ造していたことが発覚した。京華時報が伝えた。

論文盗作や経歴詐称の摘発で有名な方舟子(ファンジョウズ)氏が告発した。発覚のきっかけは陸教授の「助手募集広告」。そこに書かれていた経歴と代表的な7本の論文に矛盾が存在することをネットユーザーが発見した。例えば、そのうちの1本はイェール大学の「ルー・ジュン博士」が書いたものと全く同じだったが、ルー博士はボストン大学卒であるのに対し、陸教授はトロント大学卒。2人の写真を照合しても、似ても似つかない別人だった。

7本の論文はいずれも欧米の一流学術誌に発表されている。方舟子氏によると、「これほどの論文が書けるなら、世界トップクラスの大学で教授になれる」というほど輝かしいもの。だが、実は「ルー・ジュン」という同姓同名の3人の学者の論文を寄せ集め、すべて自分のものと称して経歴に載せていただけだったようだ。

告発後、北京化工大学のウェブサイト上の陸教授に関する経歴がすべて削除されていることから、方舟氏は「学歴も含め、経歴はすべてウソだったのでは」との見方を示している。ネット上では陸教授の新たな詐称手口に「史上最強のねつ造教授」と非難ごうごう。方舟子氏も「同姓同名の学者に目を付けるとは。よく考えたものだ。思わず感心してしまう」と話している。

騒ぎを受け、同大では陸教授の経歴ねつ造疑惑に対する調査を開始した、と声明を発表。ねつ造が事実であれば、厳しい処分を下すとしている。中国ではアモイ大学医学院教授の学歴詐称が発覚し、物議を醸したばかり。(翻訳・編集/NN)

データの使い回しや多重投稿といった手口での論文不正は時々見ますが、想像の斜め上を行く手口ですね。

次は韓国から。

これも思いもつかない手口です。 “Acknowledgments: I thank Google for free e-mail address to pretend I am someone else.” という一文が論文に記載してあったとかなかったとか・・・ 。冗談です (^^;

一方、日本でもいくつも論文不正が疑われる事例があり、それを扱ったブログが存在します。

論文不正

同じ管理者の関連ブログ、「東京大学 分子細胞生物学研究所 の論文捏造・改ざん・不正疑惑」でやり玉に上げられた東大分生研の加藤教授について、Twitter経由で近況が伝わって来ました。

一般に、研究分野でネガティブ・イメージがつくと研究者生命は絶たれますが、これだけの人物をそのまま埋もれさせるのはもったいないと思っていました。加藤先生がこういう形で被災地で尽力されていると知り、ちょっと安心しました。


(関連)

論文捏造疑惑 

 

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