Category: クラシック音楽

ヴァイオリン制作者と皮膚炎

By , 2008年1月20日 8:17 AM

以前、ヴァイオリン製作と喘息について書きました。ヴァイオリン制作者を襲う疾患として、今回は「アレルギー性接触性皮膚炎」を取り上げます。

Lieberman HD, et al. Allergic contact dermatitis to propolis in a violin maker. J Am Acad Dermatol. 46: S30-31, 2002

以下、学会の症例報告風に紹介します。論文タイトルの邦訳は、「ヴァイオリン制作者におけるプロポリスに対するアレルギー性接触性皮膚炎」です。プロポリスは、ミツバチが産生する蜜蝋です。

症例:69歳男性
既往歴:10年前 mycosis fungoides (菌状息肉症), 発症時期不詳 気道過敏性疾患。前者の治療に mechlorethamine HCL (nitrogen mustard), PUVA療法、UVB療法、局所ステロイド投与が行われたが、著変なかった。
家族歴:アトピーなし
生活歴:楽器修理工。木工やニス(ニスはプロポリスを含む)などを用いて仕上げる。また、弓の修理も行う。自分でもヴァイオリンを演奏する。
現病歴: 5年前から灼熱感、掻痒感のある皮疹が、眼瞼、左耳、前腕、手に出現した。ニューヨーク大学医療センターの皮膚科アレルギー部門に紹介される 1ヶ月前に皮膚炎の再燃に気づいた。局所ステロイド塗布や抗ヒスタミン薬内服での改善は認めなかった。
身体所見:上眼瞼、下眼瞼に鱗屑を伴った紅斑あり。前腕と手に境界明瞭で軽度の紅斑状、鱗状パッチあり。
検査所見:一般的なアレルゲン、その他(紫檀、黒檀、ペルナンブーコ、馬の毛)に対するパッチテストを施行し、コロホニウム、アビエチン酸、プロポリスで陽性。RAST法では、ラテックスと種々の樹は陰性。
診断:アレルギー性接触性皮膚炎
経過:抗原の隔離と cetirizine内服、中力価ステロイド局所投与にて軽快した。
考察
・コロホニウム (アビエチン酸の酸化物を含み、ニス、松のおがくず、ワニス、弓の毛に塗る松ヤニなどに存在する) に対するアレルギー性接触性皮膚炎の報告は良く知られているが、音楽家でプロポリスに対して発症した報告はほとんどない。
・従来、プロポリスに対するアレルギー性接触性皮膚炎は、養蜂家で見られることが多かったが、バイオ化粧品使用者で見られることが増えている。また、HIV陽性患者で、プロポリスを含むサプリメントを摂取していて、口唇炎、口内炎を起こした症例も報告されている。
・ヴァイオリニストや弦楽器制作者で難治性の慢性湿疹性皮膚炎を認める時は、プロポリスに対するアレルギー性接触性皮膚炎を鑑別に考える必要がある。

要約すると、上記の如くになります。弦楽器製作の工程を考えると、木の削りカスによる喘息症状も起こりますし、ニスなど化学物質に対するアレルギーも起こりますね。今回は、ニスに含まれるプロポリスに対するアレルギーが指摘されています (コロホニウムに対するアレルギーも検査では陽性)。指摘されると「なるほど」と思いますが、なかなか普通思い至らないものだと思います。

プロポリスに関しては、楽器演奏者以外にも、アレルギーの報告があることを初めて知りました。極めて稀なことなので、まずそういう患者を診ることはないでしょうが、知っておいて損はないかもしれませんね。まぁ、アレルギーなんて、何ででも起こるとも言えるのですが。

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テンポ

By , 2008年1月12日 8:51 PM

String」という雑誌があり、定期購読をしています。弦楽器を中心とした音楽雑誌です。他の音楽雑誌と違うのは、楽器演奏者を読者としてターゲットにしていることです。

これまでヒロ・クロサキ、アーロンロザンドやアルバン・ベルク弦楽四重奏団のメンバーなどへの興味深いインタビューに加え、シモン・ゴールドベルクの誌上レッスン、N響永峰氏のユーモアたっぷりの裏話など、楽しませて頂いていました。

昔に比べると、引きつける記事が減ったように感じますが、最近また興味深い特集が組まれていました。

早川正昭氏への「”テンポ”が遅くなっている」というインタビューです。早川氏は同誌に「アンサンブルの泉」という連載を毎月されています。

今回は、テンポについての話です。色々とネタは尽きないのですが、ベートーヴェンのテンポについて解説した部分を紹介してみましょう。

まず、ベートーヴェンのシンフォニーのLPと放送されたものを録音したりして、とにかくベートーヴェンのシンフォニーの録音をできるだけたくさん集めたんです。そして、演奏時代順にテンポを比べてみたんです。そうしてグラフにしてみたんです。そうすると、現代に近づくほど、だんだんテンポが遅くなるんですね。

それで、そのグラフを点でつなぎ、ワインガルトナーの『提言』で書かれているベートーヴェンのテンポの値とつなぎ、ずっと過去にまっすぐ伸ばしていくと、ベートーヴェンの時代の時点で、彼が書いたメトロノームのテンポとぴったり合ったんです。逆算してぴったり合ったので、これは大変なことだと思ったんです。それまでは、そういう意識が私にはまったくなかったんです。

それから、いろいろ調べ始めました。かつては、ベートーヴェンの書いたメトロノームのテンポはおかしい、という意見が大勢を占めていましたよね。演奏が不可能だということもあって、テンポ設定はおかしい、と言われていました。現在でもその意見はあります。その上、昔は今よりテンポが遅かったはずだ、ということを言う人も沢山いました。

でも、その統計を取ったときに、ベートーヴェンのテンポ設定は正しいのではないか、と思ったのです。そして、調べれば調べるほど、ベートーヴェンの時代の方が演奏テンポが速くて、ベートーヴェンの書いたテンポ設定は正にそのとおりだということにならざるを得ないんです。

(中略)

しかし、バロック時代、一番速く弾く場合、器楽も声楽も同じなんですが、一秒間に十六個の音を演奏したそうです。

そのデータをもとに計算すると、ベートーヴェンの八番の四楽章のテンポ設定は全音符が84とベートーヴェンは書いていますが、80ならばバロック時代の演奏家は演奏できるはずなんです。

ベートーヴェンが84と書いたのは、バロック時代の演奏が進歩して84でも弾けるようになったから、そのように書いたのか、あるいは、ベートーヴェンが将来もっと演奏家が進歩して、それくらいのテンポでも弾けるだろうと考えて書いたのか、そのどちらかだと思うんです。

古い録音として、フルトベングラーの第九などを聴くと「あー、遅いなぁ」と感じるので、中には例外もあるのでしょうけれども、一般的には、時代と共にテンポは遅くなる傾向にあるようです。早川氏は、別のところで、「テンポは 100年間で 7%ずつ遅くなっていっている」と指摘していました。ただし、最近は古楽器ブームの影響を受けてか、特にバロック~古典派の音楽はテンポが速くなった印象があります。

何故テンポが速くなっていくかについてはですが、私は「大指揮者が年を取って反射神経が鈍くなって、テンポがゆっくりになっていき、周りがその影響を受けるのでは・・・」などと考えてみたのですが、早川氏は「一つ一つの音を大切にし、この音は良い音だから、しっかり聴いてほしい、ということで演奏していくと、テンポは自然と遅くなっていきますよね。」と述べています。

ベートーヴェンが、実際にどう考えていたかを、早川氏が推測しています。

 ベートーヴェンというのは、テンポというのは、だんだん速くなる、と思っていた節があるんです。

というのは、皆上手くなってくるだろう。だいたい誰でも個人的に上手くなっていくから、社会全体もだんだん伸びるだろう、と思っていた節があるんです。

それは、現代でもそうで、演奏というのはどんどん進化していくと皆、思っていますよ。

ベートーヴェンは晩年のハンマークラヴィーアの作品で、テンポをメトロノーム設定で書いて、自分でも弾いて、『このテンポで弾ける人はあと五十年くらい出てこないだろう』と言っているんです。

ということは、やはり彼は時代と共に演奏家は上手くなっていくだろうと思っていたんですね。だから、先読みしてテンポ設定をした可能性があるんです。

なるほどという感じです。確かに、昔と比べて、器楽演奏のレベルは上がっていると思います。「巨匠」といわれるレベルは別としてです。一般的には、メソッドの発達も大きいのでしょう。ヴァイオリンでは、パガニーニのカプリスやコンチェルトを音大生が弾く時代ですからね。

ベートーヴェン以外の作曲家についても、彼は語っています。

その頃の文献を調べると、とにかくテンポは皆速い。ベートーヴェンより少し後の時代を見ても、チェルニーやシューマンのテンポ設定は速くて弾けそうにないと思うものがあるんです。でも、当時は弾いていたと思うんです。

シューマンのトロイメライ、これは四分音符が 100なんです。これは勿論弾けないことはないテンポですが、現代で弾かれるようなテンポからすると相当に速く感じます。夢という雰囲気を出せるかどうか。

でも、シューマンはそのテンポでいいと思ったんでしょうね。ただ、クララが五十年くらい経ってから校訂版を出していますが、そこでは 80になっています。この 80のテンポだと雰囲気が出せないこともない、現代では 50か 60位のテンポが普通ですけどね。

我々の感覚からすると、80まではなんとか理解できますが、100になると納得できない、という感じですよね。でも当時はそのテンポだったわけです。トロイメライは組曲の中の一曲ですが、他の曲はもっと速いので、その中でテンポ100のトロイメライが出てくると、夢のような感じが出てくるのかもしれない。

ただ、そういうことが、現代の人にとって想像がつかないのは、無理がないことかもしれません。

そう聞くと、「トロイ・メライ」をテンポ別に聴き比べてみたい気がします。

私は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを色々な演奏家のCDで聴き比べることがあります。例えばスプリングソナタを例にとると、どうもテンポが遅い演奏は好きになれません。自分でも演奏してみて、「昔はもっとテンポが速かったはずだ」と一人で思っていたのですが、本当に今よりテンポが速かったかもしれませんね。

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敬愛なるベートーヴェン

By , 2007年12月18日 9:34 PM

「敬愛なるベートーヴェン」という映画のDVDを見ました。

荒唐無稽な筋書きで、あまり楽しめませんでしたが、第九が流れる個所がいくつかあり、そこで音楽に聴き入ってしまいました。映画より、ベートーヴェンの音楽の方がよっぽど心を打ちますね。

それでも、クライマックスの10分くらいは、楽しめました。特に、テーマとしていた弦楽四重奏曲に対してです。大フーガもそうですが、特にお気に入りは弦楽四重奏曲第15番です。3楽章の楽譜には、「病の癒えたる者の神への感謝の言葉」と書いてあるのですが、映画は、仕事が終わった喜びとして描いていました。どう捉えるにせよ、言葉を失う程美しい曲です。特に、それが流れるシーンでの空気の作り方が良かったと思います。ちなみにこの第15番の最終楽章は、第九の最終楽章で使われる予定でした。第九のシーズンになると、いつも第15番を思い浮かべて不思議な気分になります。

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調律

By , 2007年12月8日 4:58 PM

今、私の横で調律師の方が、ピアノの調律をしてくださっています。

私が持っているピアノは、YAMAHA VX100という器種で、学生時代伴奏をしてくれていた後輩の友人から購入しました。知り合いから格安で買ったので良く知らないのですが、アップライトとしては、結構良い楽器らしいですね。

ただ、郡山に出張に行っていた間、貸倉庫に預けており、調律していなかったので、かなりピッチが下がっていました。調律師の方が、「今はA=435Hzを少し切るくらいだね・・・」とおっしゃっており、今回はA=442Hzで調律をお願いしました (A=436くらいのピッチで古典派弾くのも楽しそうだけど)。やっぱりメインテナンスは大事ですね。

私が頼んだのは、武蔵野音大内で営業してらっしゃるタナカ・ピアノサービスです。知り合いの紹介ですが、仕事がしっかりしていて、助かります。

話はガラッと変わりますが、YAMAHAが、ベーゼンドルファーを買収したらしいですね。びっくりしました。

 ヤマハ、ピアノ名門ベーゼンドルファー買収へ
2007年11月28日18時50分

ヤマハは28日、オーストリアの世界的ピアノメーカー、ベーゼンドルファー(本社・ウィーン)の買収に向け、優先交渉権を得たことを明らかにした。ヤマハが全株式を取得する方向で最終調整している。

ベーゼンドルファーは1828年創業で、米スタインウェイ、独ベヒシュタインとともにピアノメーカーの「世界御三家」と呼ばれる。年間生産量はわずか数百台で、創業からの累計も5万台に満たない。現在は米投資会社サーベラス傘下のオーストリアの銀行が同社の株式を所有しているが、経営難から売却先を探していた。

ヤマハは、ピアノの販売金額シェアでは世界一。販売力を生かしてベーゼンドルファーの経営を立て直し、高級ピアノ市場を開拓する考えだ。

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Joint hypermobility

By , 2007年12月8日 4:43 PM

音楽家にとって、関節が軟らかいことはメリットなのでしょうか?単純に考えれば、指は開きそうだし、良いことずくめな感じがします。

世界最高峰の医学雑誌の一つ、New England Journal of Medicineに気になる記事が載っていました。発表したのはロチェスター医科大学らのグループです。

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第九のCD

By , 2007年12月4日 7:46 AM

12月15日に発売されるカラヤンの復刻版 CD。ガラス製 CDなのだそうです。早速注文しました。

価格は 20万円と高額で、今年最後の大きな買い物になりそうです。ヨーロッパへの飛行機代くらいにはなりますね。1枚で 20万円という CDは聞いたことはありません。入手困難な CDを 1万円くらいで購入したことは何度かありますが。

今年は、第九を聴きに行く予定がないので、代わりに家でワインでも飲みながら、この CDを聴く予定です。今から楽しみです。

 カラヤン:62年録音の“第九”がガラスCDで復刻 生誕100年記念の第1弾

◇新演奏様式、直接テープから

カラヤン指揮ベルリン・フィルによるベートーベンの交響曲第九番「合唱」が、グラモフォン・レーベル(ユニバーサルミュージック)からガラスCDで復刻される。ガラスCDは日本で開発されて昨年発売され、その音質の良さで大きな話題を呼んだ。ドイツ・グラモフォンのマイケル・ラング社長もその音質にほれこみ、来年の「カラヤン生誕100年記念」の新シリーズの第1弾として、日本で12月15日に発売することになった。

ラング社長は「常に最新の録音技術を投入してきたグラモフォンにガラスCDはふさわしい」と言う。完全予約制の限定300枚(ナンバー付き)で1枚20万円の高価格だが、来年にはドイツ本国でも広める予定だ。

現在のCDはプラスチックの盤に張られた情報をレーザーで読み取って音にするが、プラスチックは完全に透明ではないため読み取りも完全ではない。高級レンズを強化したガラスCDは完全に透き通っており、温度や湿度の変化による影響も受けないため、録音した通りの音がいつまでも同じ状態で聞ける。

ガラスCDを開発したN&Fは昨年、バッハの「G線上のアリア」などを録音した第1弾を制作。これまで約100枚が販売され、評価が海外にまで広がっている。

カラヤン指揮のベートーベン「合唱」は5通り以上の録音があるが、記念のガラスCDには1962年の最初の録音が選ばれた。フルトヴェングラーなどの重厚な演奏に慣れていた耳に、超快速のさっそうとした新しい演奏様式を示し、カラヤン時代の到来を予告した記念碑的録音だ。グンドラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)、ヴァルター・ベリー(バリトン)らの名歌手たちもまだ若い。

「この62年版はアナログ録音なので、その良さをガラスCDで再現したいという意図もある」と關素志・ユニバーサルミュージックIMS担当は話す。このためN&Fの福井末憲・録音ディレクターがドイツ・ハノーバーのグラモフォン録音本部に飛び、62年の実際の録音テープからリマスターした。

福井ディレクターは「すでにデジタル化されたものがあるが、コンピューターが自動補正したりするせいで、どうしてもきれいな作り物になってしまう。直接に元から取ることによって当時の新鮮さをそのまま生かせた。LPで聴けばそのままアナログで聴けるが、雑音なども入るので、直接リマスターしたものをガラスCDで聴いてもらうのがベストと思う」と言う。付録として、聴き比べ用に従来のリマスターCDも付ける。

ユニバーサルでは今後も、「これぞ永遠に残したい」という録音をガラスCD化していく予定。高価なことについては「完全な音を求めて予算を惜しまなかったので、これでも割安」という。【梅津時比古】

[毎日新聞 2007年10月10日]

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Unfortunately

By , 2007年11月28日 10:34 PM

今年最も楽しみにしていたツィンマーマンのリサイタル。余りに期待していたので、S席のチケットを6枚購入して、周囲に配っていました。

FRANK PETER ZIMMERMANN Violin Recital
ピアノ:エンリコ・パーチェ

2007年11月28日(水)19時 紀尾井ホール

J.S. Bach: ヴァイオリン・ソナタ第3番
Brahms: ヴァイオリン・ソナタ第2番
J.S.Bach: ヴァイオリン・ソナタ第5番
Beethoven: ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」

チケットの申し込み
カジモト・イープラス 0570-06-9960
http://kajimotoeplus.com/

ところが突然中止の連絡がありました。

本当なら、今頃コンサートの余韻に浸っていたはずのに・・・。本当に残念。リサイタル中止の手紙は下記。

2007年11月21日
お客様各位
株式会社 梶本音楽事務所

フランク・ペーター・ツィンマーマン 公演中止のお知らせ

謹啓
この度は、『フランク・ペーター・ツィンマーマン ヴァイオリン・リサイタル』のチケットをお買い求めいただき、誠にありがとうございます。
来る11月28日(水)紀尾井ホールにて予定しておりました『フランク・ペーター・ツィンマーマン ヴァイオリン・リサイタル』公演は、急病により医師から一週間の安静を命じられたため、中止となりました。

ツィンマーマンは現時点において、病状が回復次第、12月1日、2日のNHK交響楽団定期演奏会に出演するため来日する予定で、弊社と致しましても何とかリサイタルを延期する方法がないものかと模索致しましたが、その後のスケジュールやリサイタルの準備が整わないとの本人の意向を受け、やはりリサイタルを3回とも中止せざるを得ないと判断致しました。

つきましては、チケットの払戻しを、2007年12月20日(木)までにお買い求めのプレイガイド、または弊社にて承ります。お手続きの方法は別紙をご参照下さい。

お客様にはご迷惑をおかけし、大変申し訳なく存じますが、何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。
敬具

やけ酒飲んでやるぅ・・・!(涙)

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Paganiniの手

By , 2007年11月24日 12:21 AM

今回は、「パガニーニの手」について語ってみたいと思います。

ヴァイオリン演奏史に燦然と輝く巨匠パガニーニ (1782-1840年)。彼は新たな奏法をそれまでの伝統に加え、彼が残した「24のカプリス」は、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータ」が旧約聖書と呼ばれるのに対し、新約聖書と呼ばれることがあります。更に、ヴァイオリン以外の楽器の演奏家にも影響を与え、リストやシューマン、ブラームス、ラフマニノフらが、彼の曲を編曲したり、彼の曲を主題とした曲を発表しています。そうした曲を集めた CDを聴いて、改めて彼の凄さを感じます。私は、「ラ・カンパネラ」をクライスラーが編曲したものを練習したことがありますが、「ラ・カンパネラ」は彼のヴァイオリン協奏曲第 2番第 3楽章に対してつけられた名前で、ピアノ用にリストが編曲したものが有名です。

演奏を得意とした作曲家の手の特徴は、作曲される曲に反映されることが多いように思います。リストの住んでいた家に行ったとき、彼の手から型を取った彫像があったのですが、非常に大きなものでした。リストの曲は手が大きい方が弾きやすいことは、ピアニストにとっての定説です。ラフマニノフはマルファン症候群という説がありますが、病気により手が大きかったため、彼の曲も手が大きい方が弾きやすいと思います。ヴァイオリン演奏においては、サラサーテは手が小さい方が弾きやすく、パガニーニは手が大きい方が弾きやすいと言われています。では、パガニーニは手が大きかったのか?それについてもこれから検討したいと思います。

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大進

By , 2007年11月16日 11:28 PM

今、クラシカという音楽専用チャンネルで、樫本大進のリサイタルを放映しています。

リサイタルはまず、バッハの無伴奏パルティータ第3番から始まります。第 1楽章は出だしのためか固く、傷も多々あります。徐々に調子が上がっていきます。

第 3楽章は、私が以前レッスンで直されたところを完璧に演奏していて、お手本のように聴きました。私がレッスンで指摘されたのは下記。

①舞曲なので、出だしは舞踊の一歩目のような音で。
②3小節目の 2拍目で一度終わる。 6小節目の 2拍目でも同様。このテーマは繰り返されるが全部そうする。
③25-26小節目の上の声部をクリアに。
④26小節の 3拍目、27小節の 1拍、3拍目は切って演奏。
⑤34拍目の 3拍と 4拍はボウイングを分ける
⑥82小節目以降の持続音を響かせる。

その次の曲は、イザイ作曲のヴァイオリンソナタ第2番を演奏。この曲はバッハの無伴奏パルティータ第 3番の第 1楽章のテーマをなぞるように始まります。バッハの無伴奏ヴァイオリン 6曲全曲弾けるようになったら、イザイにも挑戦してみたいと思っています。

樫本大進のリサイタルの公式サイトで、彼の曲への思いを見ることが出来ます。

次代を担う大器が挑む新たなるステージ

樫本大進 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル

96年、日本の若手ヴァイオリニストが世界に衝撃のデビュー。彼の名は、樫本大進。権威あるロン=ティボー国際コンクールで当時史上最年少優勝という快挙を果たした。その後、国内外の有名指揮者・オーケストラ・演奏家との共演を幾たびも重ね、その目覚しい活躍には目が離せない。そんな彼が、日本で始めて無伴奏リサイタルのツアーを行う。
このリサイタルに向けて樫本大進さんからメッセージが届きました。
「初めての無伴奏リサイタル。チャレンジですが、期待していて下さい」  樫本大進

バッハのパルティータ第3番は8歳の頃に初めて弾いた作品で、とても懐かしい曲です。今回この曲を弾くことで自分がどう変わったかを知ることにとても興味があります。テッツラフの演奏を聴いた事がありますが、この作品は舞曲が沢山入った、音楽的に非常に興味深い作品だと思っています。イザイは演奏会で始めて弾きます。第2番は昔から弾きたかった作品です。フレーズをバッハのパルティータ第3番の第1楽章から取った作品で聴衆の方々にも大変興味深い曲だと思っています。ジェミニアーニは12歳位の時、ヴィエニャフスキ・コンクールに行った時に弾きました。イタリアのバロック音楽ですが、技術的に非常に難しい作品でとても珍しい雰囲気を持っています。バルトークのソナタは子供の頃からメニューインやリッチの録音で何度も聴いた作品で、とても弾きたかった曲です。挑戦的で恰好良く、大好きな作品です。

樫本大進氏のコンサートはこれまで何度か行きました。メンコンやロンカプを聴いたことがありますが、ザハール・ブロンから師を変えて、演奏がどんどん変わっています。今回のリサイタルも面白かったし、これからが楽しみです。

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感銘を受けたコメント

By , 2007年10月5日 12:47 AM

前回、「レナード・バーンスタイン 音楽のよろこび」という DVDを紹介しました。

それに対する、はり屋こいしかわ先生のコメントに感銘を受けたので、紹介させて頂きます。

偉大な音楽家を語るときには、いろいろな切り口があると思いますが、バーンスタインは教育者としての功績が大きいですが、彼の教育の魅力は、何かをなすきっかけを夢を以って示すことが出来たことではないかと思います。種を撒く事、とでも言ったらいいでしょうか。
私の大学時代の恩師が、「教育で大切なことは、種を撒くことで、苗を植えることでは必ずしもない。」という主旨のことを昔おっしゃったとき、そのときは月並みな内容に感じましたが、この頃になって、その本意をもっと考えてみるようになりました。種は自分の芽を出しうる畑となるまで何年も土で滋養して、そして時を得て初めて根を張って芽を出す。苗は不幸にして畑が合わなければ直ぐに枯れてしまう。そんなようなことを伝えられたかったのかなと思っています。
バーンスタインと外れてしまいましたが、彼にもそんなところがあるかなと思っています。
表現者としての彼も、ヘンな言い回しですが情緒の筋道-この短調のフレーズに喜びがあり、このリズムに神性がある-みたいな、そんな聴き手へも教育的な面があるように感じます。勿論押し付けがましくなく、自然にそう感じられるのは彼の芸術の特性の一部ではないかと思います。音楽におけるプラグマティズムの美しい理想の具現とでも言いましょうか。例えば彼の演奏によるマーラーあたりは、音の洪水のような彼の交響曲の聞き方を教えてもらったように思います。
冗長になりました。すみません。

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