Category: 音楽

レオニダス・カヴァコス

By , 2009年6月6日 9:33 PM

今回紹介するのは、ヴァイオリニストのレオニダス・カヴァコスです。

私は、以前カザルス・ホールで行われた JTアートシリーズで演奏を一度聴いたことがあります。確か、カルテットでモーツァルトを弾いたのだったと思います。

音が凄く洗練されていて、ボウイングの綺麗な方だなと思っていたのですが、曲によっては全然荒々しい一面もみせてくれます。

Youtubeにカヴァコスがパガニーニを演奏する動画がいくつかあったので紹介しておきます。パガニーニかくあり・・・です。

Continue reading 'レオニダス・カヴァコス'»

Post to Twitter


ラフマニノフ ある愛の調べ

By , 2009年6月6日 7:37 AM

映画「ラフマニノフ ある愛の調べ」を見ました。

いや~、マニアックな内容でした。

ラフマニノフに関わるエピソード、「ズヴェーレフによる作曲の禁止」「交響曲第1番初演の失敗」「ダーリによる精神分析」「従妹ナターリアとの結婚」「ライラック」「スタンウェイとの蜜月」「作曲への情熱の喪失」などが散りばめられていましたが、元のエピソードを知らないと何の話をしてるのかわからなくて、 Wikipedia で調べながら見ました。それぞれのエピソードの関連性も希薄で、ただエピソードがランダムに配置されているような印象を持ちました。冒頭はすごく面白かったのですけどね。

この映画には「ある愛の調べ」と副題がついており、女性が3人出てくるのですが、表面的な描写が多く、もっとラフマニノフの内面が描かれていたらなと思いました。例えば、従妹に対しては、大した愛情表現がないままに、いきなりプロポーズするのですが、そこまでの過程がイマイチ理解出来ませんでした。

とはいっても、音楽は綺麗ですし、一度予習してから見ると楽しめるかもしれません。

Post to Twitter


ヴァイオリン・ソナタ第10番

By , 2009年5月21日 7:30 AM

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは傑作ばかりです。いかに傑作か、名教師カール・フレッシュの言葉をシゲティが本の中に引用しています。

Continue reading 'ヴァイオリン・ソナタ第10番'»

Post to Twitter


ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ

By , 2009年4月22日 8:06 AM

最近、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタのCDを聴いていて、久々にお気に入りの録音に出会いました。

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタについては50人くらいの演奏家の録音を持っています。古典的名盤としては Adolf Busch / Rudolf Serkin の録音が有名です。

味のある録音では、Fritz Kreisler / Franz Rupp の演奏は奔放な中に曲の本質を殊更に強調し、妙に心が揺さぶられます。

私が一番最も好きなのは、Nathan Milstein / Artur Balsam の1953年のライブ録音です。第5番「春」が演奏されているのですが、独特の緊張感の高まりが好きです。どんな曲であっても、テンションの高まりがないとベートーヴェンではないし、それを自然に表現することは難しいと思うのです。ただ盛り上がるだけなら2流音楽家でも可能ですが、主題の対比構造、執拗に繰り返される非常に短い単位での Dominant→Tonicという和声進行など、ベートーヴェンを構成する要素を表現することで音楽を高めていくのはかなり困難なことです。

とはいっても、私がベートーヴェンの録音を評価するときに重視するのは、音楽が流れているかどうかです。いわゆる巨匠たちの録音を聴いても、もったないことに音楽が停滞しているものが多く聴かれます。流れが妨げられてしまうと、ベートーヴェンらしさが半減してしまいます。微細な表情をつけながら、全体の構成を考え、かつ音楽が流れないといけないと思うと、それだけ、ベートーヴェンの演奏は難しいのだなと実感します。

最近聴いた Josef Fuchs / Artur Balsam の録音は、味があり、音楽が流れていきます。音楽的に非常に自然で聴きやすい、お勧めの一枚です。

その他に面白い録音といえば、寺神戸亮 / ボヤン・ヴォデニチャロフによる古楽器での録音です。初期のヴァイオリン・ソナタでは素晴らしい演奏効果があるのですが、第9番「クロイツェル」以降はパワー不足が否めず、おそらくこの頃にはベートーヴェンはモダンな弓での演奏を想定していたのではないかと、一人思っています。古楽器での全曲録音という点では、非常に価値のある録音です。

ちなみに全 10作の彼のソナタの中で私が一番好きなのは、第 10番第 4楽章です。彼の後期弦楽四重奏のように、音楽の方向性が内面に向かっていく落ちついいた名曲です。それでも様々な趣向が凝らしてあります。この曲が変奏曲であると気付かなかった私は、レッスンで指摘されてビックリしたのでした。

・Menuhin & Kempff – Beethoven Violin Sonata no.10 (IV) – Poco Allegretto

Post to Twitter


古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ⑤

By , 2009年3月22日 2:00 PM

「古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ」特集のトリを飾るのは、ヒロ・クロサキです。モダン楽器、古楽器を含め、モーツァルトの主要なヴァイオリン・ソナタを全て網羅した録音は、1996年のこの CD以前ありませんでした。ヴァイオリン・ソナタ集とはいっても、全て網羅していた訳ではなかったのですね。

Continue reading '古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ⑤'»

Post to Twitter


古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ④

By , 2009年3月20日 10:26 AM

Raychel Podger は、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ&パルティータを古楽器で録音し、高い評価を得た女流ヴァイオリニストです。何と、前回のエントリー「古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ③」で紹介した Manzeとバッハのドッペルコンチェルトも演奏しているのです。即興での装飾の応酬が興味をそそります。

その Podgerが Gary Cooper (fortepiano)と組んでモーツァルトのヴァイオリン・ソナタを録音しました。現在の所、Volume 6まで発売されています。彼らは初期のソナタをかなりルバートを効かせて演奏しています。バロック音楽の名残があり、自由度を高く設定したのでしょう。中期・後期のソナタとなるに従って、古典派として様式感が聴き取れるようになります。

Podgerと Cooperの演奏の特徴は、即興性です。バロックや古典派の時代は、即興も音楽の大切な要素で、演奏家のセンスを判断する目安のひとつでした。当然、モーツァルトも自作のソナタを即興たっぷりに演奏したことでしょう。Podgerらはそうした点を意識したのだと思います。他の古楽器演奏家と比較しても、Podgerらの即興性の要素は強く、何度も聴いた曲が新鮮に聴かれるのではないかと思います。音楽的にも非常に聴きやすいので、お勧めです。

(気が向いたら)つづく

Post to Twitter


古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ③

By , 2009年3月17日 6:58 AM

今日紹介する演奏家は、Andrew Manzeです。古楽器好きの方々の間では有名な存在です。私が衝撃を受けたのは、彼が「悪魔のトリル (Tartini作曲)」を無伴奏ヴァイオリンのために編曲して演奏したのを聴いた時です。ヴァイオリン一本で紡ぎ上げるおどろおどろしい世界?は、悪魔の演奏を思わせました。

・1-Manze-Devil’s Trill

Andrew Manze (violin) と Richard Egarr (fortepiano) によるMozartの録音は、技術的に非常に安定した聴きやすい録音です。Manzeのことだから、何かとんでもないことをしたのではないかと先入観を持って聴きましたが、実は非常にオーソドックスなスタイルでした。上記のTartiniの時代の演奏と違って、演奏家に許される自由度が多少異なるのかもしれません。それ以上に、Mozartのソナタが編曲の余地が無いほど完璧に作曲されていたからでしょうか。演奏については、ヴァイオリンとピアノの音のバランスが良く、二人の息もぴったりで、音楽的にも非常に自然でした。また、収録されたソナタは全て、モーツァルトがウィーンを訪れた 1781年に作曲されたもので、選曲に Manzeらのセンスを見た気がしました。

楽器はヴァイオリンが「Joseph Gagaliano (1782年)」、弓が「Jutta Welcher」、フォルテピアノが「Johann Zahler (1800年)」が使用されたそうです。

Post to Twitter


古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ②

By , 2009年3月14日 10:50 AM

前回、「古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ①」で述べたように古楽器ブームが起こりましたが、ブームを支えた演奏家として、クイケン3兄弟は多大な功績を果たしました。3兄弟とは則ち「ヴィーラント・クイケン (チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)」、「シギスヴァルト・クイケン (ヴァイオリン、ヴィオラ奏者、指揮者)」、「バルトルト・クイケン (リコーダー、フルート奏者)」です。このうち、シギスヴァルト・クイケンは、世界的なバロック・ヴァイオリンの名手ヒロ・クロサキ寺門戸亮などを育てました。

さて、シギスヴァルト・クイケンはリュック・ドゥヴォスと組んで、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全集を録音しました。「The Sonatas for Fortepiano and Violin Sigiswald Kuijken / Luc Devos (ACCENT ACC20041)」です。使用された楽器は、ヴァイオリンが1700年製の「Giovanni Grancino」、フォルテ・ピアノが「Claude Kelecom, Brussels 1978 after J.A.Stein, Augsburg 1788」とライナー・ノートに書かれています。

演奏は古典派というより、ややバロック風な印象を受けます。音が颯爽と流れていくシンプルな心地よさが魅力です。一方で、伸びやかさに多少欠く感があります。フォルテ・ピアノの方はチェンバロに近い音で演奏されています。一概にフォルテ・ピアノといっても時代によって様々ですから、どのようなフォルテ・ピアノを用いるかは演奏者の意図と考えることができます。
(気が向いたら)つづく

Post to Twitter


古楽器で聴くモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ①

By , 2009年3月13日 9:39 PM

今回紹介するのは、古楽器で演奏されたヴァイオリン・ソナタ(モーツァルト作曲)です。まずは基礎知識から。

古楽器という定義は難しいですが、現代のオーソドックスなオーケストラで用いられる「モダン楽器」以前の楽器と考えるとわかりやすいかもしれません。誤解を恐れずに言えば、古楽・バロック期・古典派の時代に用いていた楽器のことです。

我々が普段目にするピアノはチェンバロからフォルテ・ピアノを経て現代のスタイルとなっています。チェンバロが弦を爪(プレクトラム)で弾いて演奏する撥弦楽器であるのに対して、フォルテ・ピアノはハンマーで弦を叩いて演奏する打楽器です。しかしフォルテ・ピアノはより現代のピアノに近い割には、張ってある弦がチェンバロのように細く強い音は出せませんでした。室内楽向けの楽器と言えると思います。

フォルテ・ピアノは改良を加えられ、音域を拡大していきました。さらにペダルが改良されたり、強い音が出せるような改良が加えられました。かのベートーヴェンもフォルテ・ピアノの進化に合わせて作曲するピアノ・ソナタの音域を拡大していきました。音域の拡大につれて、作曲の幅は広がり、演奏者も技巧を要求されるようになりました。

時代的にも貴族の地位が低下し、ベートーヴェン以降、主として貴族のためであった音楽は大衆にも開放されるようになりました。音楽がそれまでの<貴族のための室内楽>から大きなホールで演奏されるように変わったことで、求められたのは強い大きな音が出せることでした。それはピアノの進化の歴史と方向を同じくしています。

ヴァイオリンでも同じ事が言えます。バロック期に最高の名器は「アマティ」でしたが、現代では「ストラディヴァリウス」「グァルネリ」と言われます。それらが作られた時代はあまり変わりません。アマティは室内楽向けには良い楽器だったのですが強い音が出にくく、致命的なことに改造がしにくかったのです。「ストラディヴァリウス」や「グァルネリ」は大ホールでの演奏向けに改良するのに適していました。したがって、現存する「ストラディヴァリウス」や「グァルネリ」の多くは現代向けに改造された楽器です。

より派手で華やかに、演奏のチューニング・ピッチはどんどん上がっていき、楽器は改良されていきました。奏法も変わっていきました。我々が現代使用している楽器はそうした進化を辿ってきたものです。

一通りの演奏の可能性が尽くされて、作曲された当時の楽器・奏法・チューニング・ピッチで演奏してみたらどうかという流れが出てきました。これが古楽器ブームに火をつけました。そうした流れが生まれ始めた頃の時代と比べ、名手達がレベルを一気に押し上げました。

(気が向いたら)つづく

(補足)
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第29番作品106<ハンマークラヴィーア>の作曲の動機が新作のピアノを贈与されたことにあったとする説がありますが、否定的な説もあるので、下記に引用という形で示しておきます。

 作曲家別「名曲解説」ライブラリー③ ベートーヴェン 音楽の友社

スケッチ・ブックによれば、この曲にとりかかったのは 1817年 11月で、翌年初めには第 2楽書まで完成され、4月にルドルフ大公のために浄書が行われた。あとの 2つの楽章はその年の夏をメードリングで過ごしていた間にほぼでき上がったらしく、1819年の 3月には作曲も浄書もすべて終わっていた。

ベートーヴェンは 1818年の夏、ロンドンのピアノ製造者ブロードウッドから優秀なピアノを贈られた。当時、英国製のピアノは性能では他を圧していたが、ベートーヴェンはそれを贈与されたことでピアノ音楽への情熱をかきたてられ、この巨大なソナタを作曲することになったという説がある。ところがベートーヴェンが実際このピアノを手にしたのは 1818年の夏のことであるから、先に述べたように早く作曲された第 1, 2楽章はこの新ピアノとは関係なく作曲され、第 3, 4楽章だけが多分このピアノ到達以後の作品ということになる。とすると、その説を全面的には承服するわけにはいかない。

Post to Twitter


クララ・シューマンと慢性疼痛

By , 2009年3月1日 2:35 PM

以前紹介した、ピアニストの慢性疼痛。「Hingtgen CM. The painful perils of pianists: The chronic pain of Clara Schumann and Sergei Rachmaninov. Semin Neurol 19: 29-34, 1999」から、Clara Wieck Schumann について書かれた部分を読んでみましょう。

Continue reading 'クララ・シューマンと慢性疼痛'»

Post to Twitter


Panorama Theme by Themocracy