Category: 音楽

今どこ?

By , 2008年3月15日 11:31 PM

今、クラシカという音楽チャンネルを見ています。丁度登場するのは、ヴァイオリニストのヴェンゲーロフ。ヴェンゲーロフが演奏するのは、「パガニーニの主題による狂詩曲 (ラフマニノフ/クライスラー)」他です。

、「パガニーニの主題による狂詩曲 (ラフマニノフ/クライスラー)」について、ヴェンゲーロフが舞台上でユーモラスに紹介しています。だいたいの内容は下記。

クライスラーとラフマニノフが、カーネギーホールでこの曲を弾いた。

リハーサルなしで、ぶっつけ本番。でも、クライスラーは何処を弾いているかわからなくなって、

「今どこだ?」

とラフマニノフに聞いたんだ。するとラフマニノフは

「カーネギーホール」

思わず吹いてしまいました。

ヴェンゲーロフの演奏を、私は大好きです。直感的に音楽のエッセンスを抽出してくれて、テクニックも申し分ありません。ただ、古典派の音楽については、自己主張が強すぎてあまり好みではありませんが、ロマンは以降の演奏ではその独特な演奏姿勢と相まって、パガニーニに見えることすらあります。

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替え指

By , 2008年3月12日 5:43 PM

3月9日に、大学時代の部活の OBの先生の家に遊びに行きました。

先輩は、私の 7学年上、一緒に付いてきた後輩は、私の 8学年下と、13学年下。年の差飲み会となりました。こうして世代に跨って遊べるのは、喜びです。

先輩は、医者になって最初に買ったものがチェンバロ。芸大の先生から、「何で芸大に来なかったの?」と聞かれたくらい上手です。バッハのチェンバロ曲を色々聴かせてくれます。

先輩の家の「日本酒専用」冷蔵庫の中から、次々と酒を振る舞われ、酔っぱらって、音楽談義になりました。

先輩は昔、ピアノを弾いていたそうなのですが、バッハの音楽に対して余り考えることはなかったそうです。

ご存じの通り、バッハが得意とした対位法という作曲手法では多くの声部を同時に扱いますので、片手だけで2つの旋律を同時に弾かなくてはいけないことがあります。そうすると指が足りなくなりますが、ピアノの場合、ペダルを踏めば音が連続しますので、一旦指を離して弾き直しても、音をつなげることが可能です。

ところが、チェンバロにはペダルがないので、指を離すと音が切れてしまうのです。音が切れると旋律が途切れます(切れたまま知らん顔で演奏している演奏家もいるらしい)。そこで登場するテクニックが替え指です。

例えば、右手である旋律を弾いている場合を考えます。親指でドの音を弾いている時、親指を押さえたまま同じ音を人差し指で押さえて、親指を離します。そうすとドの音は鳴ったままで、親指がフリーになるので、親指でシの音を押させる事が出来るという寸法です。

バッハのフーガだと、このテクニックのオンパレードなのだそうです。実際に見せて頂きましたが、本当にアクロバティックです。でも、そうしたテクニックで、旋律が途切れず、各声部が流れるのです。ピアノではなかなか味わえないチェンバロのテクニックで、感動しました。

その他、チューニングの話にもなりました。チェンバロは、自分で毎回チューニングしないといけなくて、調律法も勉強しないといけないのです。

我々が現在使う調律は A=440~445Hzくらいの音程ですが、バロック時代には、A=390-415Hz前後と低い音程で調律されていたことは有名です。実際に古楽器のCD演奏を聴くと、非常に低いピッチで演奏されています。でも、先輩から聴いて、A=460Hzというとんでもなく高いピッチ、コーアトーンというのがその時代の調律にあることを初めて知りました。

飲んで、楽器を片手に音楽談義なんて、最高の贅沢です。先輩と今度また合奏することになりました。

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Piano cat

By , 2008年3月10日 7:44 AM

Inside Editionという番組で、ピアノを弾く猫の特集がされていて、Youtubeに upされていました。

・Nora on Inside Edition

Youtubeで、「Nora」という Keywordを入れて検索すると、他にもたくさんの movieが hitします。下記の movieなど、現代曲として紹介されたら、「ありかも」と思ってしまいます。

・”NORA: Practice Makes Purr-fect” – Check the sequel too.

眺めていて、猫の演奏姿はかわいいものです。猫も気持ちよさそうに弾いています。

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旦那

By , 2008年2月9日 4:07 PM

APAというアンサンブル団体から、「2月 17日の総会に、Vn東響コンマス大谷康子さん、N響フォアシュピーラー齋藤真知亜さんを招いて弦楽合奏をするのですが、ヴァイオリンが 2プルート (4人) しかいません」というメールが届いたので、合奏に出演することになりました。「A. ARENSKY」作曲の「チャイコフスキーの主題による変奏曲Op.35a」という曲です。音源を聴いて、余りにも綺麗で感動しました。主題は、ショスタコーヴィチの「2つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ ヘ長調」に似ています。曲自体は技術的に、それほど難しくないのですが、合わせるのにテクニックが必要でしょうね。

そんな中、Webで大谷康子氏のことを調べておりましたら、旦那様が医師なのだとか。サイトも運営しておられるようで、早速覗いてきました。

Dr. ブンブンの休憩室

コラムが非常に面白いです。是非御覧下さい。

 

 

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D. C. Dounis

By , 2008年1月23日 10:21 PM

D. C. Dounisという名前を聞いたことがありますか?

あったとしたら、相当なマニアですね。ヴァイオリンの上級者向けテクニックの本を書いている方です。しかも医師です。

Demetrius_Constantine_Dounis

Demetrius Constantine Dounis (1886 – 1954) was an influential teacher of violin and string instrument technique. A trained physician, Dounis focused his early medical career on treating professional musicians from the world’s major symphonies. He would work with a musician for at least six months, observing the musician’s technique, asking questions, and devising new exercises to indirectly address the problem.

Dounis also wrote several instructional books. In his 1921 volume The Artist’s Technique of Violin Playing, Dounis emphasized the importance of shifting and finger exercises. These were to develop the musician’s mental map at the beginning of practice, after which scale drills would be more effective.

Dounis’ first name is variously spelled Demetrios or Demetrius.

昔、ヴァイオリンの師と、「医師兼音楽家」の話題となり、「お医者さんでヴァイオリンの教本書いた人いたわね。」と教えて頂いたのが最初です。

早速、彼の「The Artist’s technique of Violin Playing」を買って練習してみたのですが、メカニックな練習が延々とあり、すぐに飽きて挫折しました。ただ、非常に合理的で、意図はわかりやすいと思います。根気さえあれば、ある程度の効果は期待できるでしょう。ただ、内容はかーなり難しいですよ。パガニーニのカプリスさらうより大変かもしれません。

最近、彼の事を調べていて、「The Dounis collection」という本もあるのを知り、amazonで購入しました。ところが、本の最初は以前買った本と一緒。

実は、最初に買った本は、作品番号12を収録したもので、後から買った方は、作品番号12, 15, 16, 18, 20, 21, 27, 28, 29, 30が収録されているのです。購入するなら後者ですな。

最後に、「The Dounis collection」の序文を引用します。ウィーン大学医学部卒業であることはわかりますが、医師としての業績は書かれていませんでした。医学部卒業後はヴァイオリニスト、ヴァイオリン教育者として活動されていたようで、そちらの業績はかなりのものと思います。

Demetrius Constantine Dounis (1886-1954) was one of the most prominent violin pedagogues of the twentieth century. He studied violin privately in Vienna with Frantisek Ondricek, a much-sought-after teacher who no doubt impressed Dounis with significance of pedagogy, and simultaneously enrolled as a medical student at the University of Vienna. Following his graduation, he made several tours as a violinist in Europe and Russia. After World War I, he was appointed professor of violin a the Salonika Conservatory in Greece, and it was at this time that he devoted much of his energy to violin pedagogy and publication of pedagogical treatises. He then settled in England and, facing the threat of World War II, relocated to the United States, first New York City, then Los Angeles, where he died soon afterwards. (“The Dounis collection” より)

 

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訃報

By , 2008年1月22日 10:08 PM

今日、ヴァイオリニストの江藤俊哉氏が亡くなられました。

今、手元の「The Art of Toshiya Eto」という 4枚組の CDを聴いています。自分の解釈を説得力を持って演奏出来るのって、良いですよね。独りよがりの演奏なら簡単ですが、必然性があり、説得力を生み出せるのが凄いと思います。久しぶりに震えています。CDの半分以上の曲は、私が演奏経験がある曲。聴きながら、演奏している気分になります。

 バイオリニストで元桐朋学園大学長の江藤俊哉さん死去
2008年01月22日12時13分

戦後日本を代表するバイオリニストで、教育者として多くの演奏家を育てた元桐朋学園大学長の江藤俊哉(えとう・としや)さんが22日午前6時36分、肺炎による心不全で死去した。80歳だった。葬儀は近親者のみで行う。後日お別れの会を開く予定。

東京都出身。4歳から早期音楽教育「スズキ・メソード」で知られる故鈴木鎮一氏のもとで学び、12歳で音楽コンクール(現日本音楽コンクール)で優勝した。

東京音楽学校(現東京芸大)卒業後に渡米。カーチス音楽学校で名教育者としても知られるジンバリストに学び、24歳でニューヨークのカーネギーホールでデビュー。日本人離れした大胆な弓使いと深みのある音色で世界に認められた。

演奏活動の傍ら、桐朋学園大や上野学園大で堀米ゆず子さん、矢部達哉さん、諏訪内晶子さんらを育てた。エリザベート国際コンクールなど海外コンクールの審査員も歴任。71年にモービル音楽賞、79年に日本芸術院賞、00年に渡辺暁雄音楽賞特別賞を受賞。97年から04年まで桐朋学園大の学長を務めた。

指揮者、ビオラ奏者としても活躍。音楽家の地位向上を求める社会的発言も多かった。「違いがわかる」というインスタントコーヒーのテレビCMに出演、茶の間でも知られていた。

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ヴァイオリン制作者と皮膚炎

By , 2008年1月20日 8:17 AM

以前、ヴァイオリン製作と喘息について書きました。ヴァイオリン制作者を襲う疾患として、今回は「アレルギー性接触性皮膚炎」を取り上げます。

Lieberman HD, et al. Allergic contact dermatitis to propolis in a violin maker. J Am Acad Dermatol. 46: S30-31, 2002

以下、学会の症例報告風に紹介します。論文タイトルの邦訳は、「ヴァイオリン制作者におけるプロポリスに対するアレルギー性接触性皮膚炎」です。プロポリスは、ミツバチが産生する蜜蝋です。

症例:69歳男性
既往歴:10年前 mycosis fungoides (菌状息肉症), 発症時期不詳 気道過敏性疾患。前者の治療に mechlorethamine HCL (nitrogen mustard), PUVA療法、UVB療法、局所ステロイド投与が行われたが、著変なかった。
家族歴:アトピーなし
生活歴:楽器修理工。木工やニス(ニスはプロポリスを含む)などを用いて仕上げる。また、弓の修理も行う。自分でもヴァイオリンを演奏する。
現病歴: 5年前から灼熱感、掻痒感のある皮疹が、眼瞼、左耳、前腕、手に出現した。ニューヨーク大学医療センターの皮膚科アレルギー部門に紹介される 1ヶ月前に皮膚炎の再燃に気づいた。局所ステロイド塗布や抗ヒスタミン薬内服での改善は認めなかった。
身体所見:上眼瞼、下眼瞼に鱗屑を伴った紅斑あり。前腕と手に境界明瞭で軽度の紅斑状、鱗状パッチあり。
検査所見:一般的なアレルゲン、その他(紫檀、黒檀、ペルナンブーコ、馬の毛)に対するパッチテストを施行し、コロホニウム、アビエチン酸、プロポリスで陽性。RAST法では、ラテックスと種々の樹は陰性。
診断:アレルギー性接触性皮膚炎
経過:抗原の隔離と cetirizine内服、中力価ステロイド局所投与にて軽快した。
考察
・コロホニウム (アビエチン酸の酸化物を含み、ニス、松のおがくず、ワニス、弓の毛に塗る松ヤニなどに存在する) に対するアレルギー性接触性皮膚炎の報告は良く知られているが、音楽家でプロポリスに対して発症した報告はほとんどない。
・従来、プロポリスに対するアレルギー性接触性皮膚炎は、養蜂家で見られることが多かったが、バイオ化粧品使用者で見られることが増えている。また、HIV陽性患者で、プロポリスを含むサプリメントを摂取していて、口唇炎、口内炎を起こした症例も報告されている。
・ヴァイオリニストや弦楽器制作者で難治性の慢性湿疹性皮膚炎を認める時は、プロポリスに対するアレルギー性接触性皮膚炎を鑑別に考える必要がある。

要約すると、上記の如くになります。弦楽器製作の工程を考えると、木の削りカスによる喘息症状も起こりますし、ニスなど化学物質に対するアレルギーも起こりますね。今回は、ニスに含まれるプロポリスに対するアレルギーが指摘されています (コロホニウムに対するアレルギーも検査では陽性)。指摘されると「なるほど」と思いますが、なかなか普通思い至らないものだと思います。

プロポリスに関しては、楽器演奏者以外にも、アレルギーの報告があることを初めて知りました。極めて稀なことなので、まずそういう患者を診ることはないでしょうが、知っておいて損はないかもしれませんね。まぁ、アレルギーなんて、何ででも起こるとも言えるのですが。

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テンポ

By , 2008年1月12日 8:51 PM

String」という雑誌があり、定期購読をしています。弦楽器を中心とした音楽雑誌です。他の音楽雑誌と違うのは、楽器演奏者を読者としてターゲットにしていることです。

これまでヒロ・クロサキ、アーロンロザンドやアルバン・ベルク弦楽四重奏団のメンバーなどへの興味深いインタビューに加え、シモン・ゴールドベルクの誌上レッスン、N響永峰氏のユーモアたっぷりの裏話など、楽しませて頂いていました。

昔に比べると、引きつける記事が減ったように感じますが、最近また興味深い特集が組まれていました。

早川正昭氏への「”テンポ”が遅くなっている」というインタビューです。早川氏は同誌に「アンサンブルの泉」という連載を毎月されています。

今回は、テンポについての話です。色々とネタは尽きないのですが、ベートーヴェンのテンポについて解説した部分を紹介してみましょう。

まず、ベートーヴェンのシンフォニーのLPと放送されたものを録音したりして、とにかくベートーヴェンのシンフォニーの録音をできるだけたくさん集めたんです。そして、演奏時代順にテンポを比べてみたんです。そうしてグラフにしてみたんです。そうすると、現代に近づくほど、だんだんテンポが遅くなるんですね。

それで、そのグラフを点でつなぎ、ワインガルトナーの『提言』で書かれているベートーヴェンのテンポの値とつなぎ、ずっと過去にまっすぐ伸ばしていくと、ベートーヴェンの時代の時点で、彼が書いたメトロノームのテンポとぴったり合ったんです。逆算してぴったり合ったので、これは大変なことだと思ったんです。それまでは、そういう意識が私にはまったくなかったんです。

それから、いろいろ調べ始めました。かつては、ベートーヴェンの書いたメトロノームのテンポはおかしい、という意見が大勢を占めていましたよね。演奏が不可能だということもあって、テンポ設定はおかしい、と言われていました。現在でもその意見はあります。その上、昔は今よりテンポが遅かったはずだ、ということを言う人も沢山いました。

でも、その統計を取ったときに、ベートーヴェンのテンポ設定は正しいのではないか、と思ったのです。そして、調べれば調べるほど、ベートーヴェンの時代の方が演奏テンポが速くて、ベートーヴェンの書いたテンポ設定は正にそのとおりだということにならざるを得ないんです。

(中略)

しかし、バロック時代、一番速く弾く場合、器楽も声楽も同じなんですが、一秒間に十六個の音を演奏したそうです。

そのデータをもとに計算すると、ベートーヴェンの八番の四楽章のテンポ設定は全音符が84とベートーヴェンは書いていますが、80ならばバロック時代の演奏家は演奏できるはずなんです。

ベートーヴェンが84と書いたのは、バロック時代の演奏が進歩して84でも弾けるようになったから、そのように書いたのか、あるいは、ベートーヴェンが将来もっと演奏家が進歩して、それくらいのテンポでも弾けるだろうと考えて書いたのか、そのどちらかだと思うんです。

古い録音として、フルトベングラーの第九などを聴くと「あー、遅いなぁ」と感じるので、中には例外もあるのでしょうけれども、一般的には、時代と共にテンポは遅くなる傾向にあるようです。早川氏は、別のところで、「テンポは 100年間で 7%ずつ遅くなっていっている」と指摘していました。ただし、最近は古楽器ブームの影響を受けてか、特にバロック~古典派の音楽はテンポが速くなった印象があります。

何故テンポが速くなっていくかについてはですが、私は「大指揮者が年を取って反射神経が鈍くなって、テンポがゆっくりになっていき、周りがその影響を受けるのでは・・・」などと考えてみたのですが、早川氏は「一つ一つの音を大切にし、この音は良い音だから、しっかり聴いてほしい、ということで演奏していくと、テンポは自然と遅くなっていきますよね。」と述べています。

ベートーヴェンが、実際にどう考えていたかを、早川氏が推測しています。

 ベートーヴェンというのは、テンポというのは、だんだん速くなる、と思っていた節があるんです。

というのは、皆上手くなってくるだろう。だいたい誰でも個人的に上手くなっていくから、社会全体もだんだん伸びるだろう、と思っていた節があるんです。

それは、現代でもそうで、演奏というのはどんどん進化していくと皆、思っていますよ。

ベートーヴェンは晩年のハンマークラヴィーアの作品で、テンポをメトロノーム設定で書いて、自分でも弾いて、『このテンポで弾ける人はあと五十年くらい出てこないだろう』と言っているんです。

ということは、やはり彼は時代と共に演奏家は上手くなっていくだろうと思っていたんですね。だから、先読みしてテンポ設定をした可能性があるんです。

なるほどという感じです。確かに、昔と比べて、器楽演奏のレベルは上がっていると思います。「巨匠」といわれるレベルは別としてです。一般的には、メソッドの発達も大きいのでしょう。ヴァイオリンでは、パガニーニのカプリスやコンチェルトを音大生が弾く時代ですからね。

ベートーヴェン以外の作曲家についても、彼は語っています。

その頃の文献を調べると、とにかくテンポは皆速い。ベートーヴェンより少し後の時代を見ても、チェルニーやシューマンのテンポ設定は速くて弾けそうにないと思うものがあるんです。でも、当時は弾いていたと思うんです。

シューマンのトロイメライ、これは四分音符が 100なんです。これは勿論弾けないことはないテンポですが、現代で弾かれるようなテンポからすると相当に速く感じます。夢という雰囲気を出せるかどうか。

でも、シューマンはそのテンポでいいと思ったんでしょうね。ただ、クララが五十年くらい経ってから校訂版を出していますが、そこでは 80になっています。この 80のテンポだと雰囲気が出せないこともない、現代では 50か 60位のテンポが普通ですけどね。

我々の感覚からすると、80まではなんとか理解できますが、100になると納得できない、という感じですよね。でも当時はそのテンポだったわけです。トロイメライは組曲の中の一曲ですが、他の曲はもっと速いので、その中でテンポ100のトロイメライが出てくると、夢のような感じが出てくるのかもしれない。

ただ、そういうことが、現代の人にとって想像がつかないのは、無理がないことかもしれません。

そう聞くと、「トロイ・メライ」をテンポ別に聴き比べてみたい気がします。

私は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを色々な演奏家のCDで聴き比べることがあります。例えばスプリングソナタを例にとると、どうもテンポが遅い演奏は好きになれません。自分でも演奏してみて、「昔はもっとテンポが速かったはずだ」と一人で思っていたのですが、本当に今よりテンポが速かったかもしれませんね。

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敬愛なるベートーヴェン

By , 2007年12月18日 9:34 PM

「敬愛なるベートーヴェン」という映画のDVDを見ました。

荒唐無稽な筋書きで、あまり楽しめませんでしたが、第九が流れる個所がいくつかあり、そこで音楽に聴き入ってしまいました。映画より、ベートーヴェンの音楽の方がよっぽど心を打ちますね。

それでも、クライマックスの10分くらいは、楽しめました。特に、テーマとしていた弦楽四重奏曲に対してです。大フーガもそうですが、特にお気に入りは弦楽四重奏曲第15番です。3楽章の楽譜には、「病の癒えたる者の神への感謝の言葉」と書いてあるのですが、映画は、仕事が終わった喜びとして描いていました。どう捉えるにせよ、言葉を失う程美しい曲です。特に、それが流れるシーンでの空気の作り方が良かったと思います。ちなみにこの第15番の最終楽章は、第九の最終楽章で使われる予定でした。第九のシーズンになると、いつも第15番を思い浮かべて不思議な気分になります。

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調律

By , 2007年12月8日 4:58 PM

今、私の横で調律師の方が、ピアノの調律をしてくださっています。

私が持っているピアノは、YAMAHA VX100という器種で、学生時代伴奏をしてくれていた後輩の友人から購入しました。知り合いから格安で買ったので良く知らないのですが、アップライトとしては、結構良い楽器らしいですね。

ただ、郡山に出張に行っていた間、貸倉庫に預けており、調律していなかったので、かなりピッチが下がっていました。調律師の方が、「今はA=435Hzを少し切るくらいだね・・・」とおっしゃっており、今回はA=442Hzで調律をお願いしました (A=436くらいのピッチで古典派弾くのも楽しそうだけど)。やっぱりメインテナンスは大事ですね。

私が頼んだのは、武蔵野音大内で営業してらっしゃるタナカ・ピアノサービスです。知り合いの紹介ですが、仕事がしっかりしていて、助かります。

話はガラッと変わりますが、YAMAHAが、ベーゼンドルファーを買収したらしいですね。びっくりしました。

 ヤマハ、ピアノ名門ベーゼンドルファー買収へ
2007年11月28日18時50分

ヤマハは28日、オーストリアの世界的ピアノメーカー、ベーゼンドルファー(本社・ウィーン)の買収に向け、優先交渉権を得たことを明らかにした。ヤマハが全株式を取得する方向で最終調整している。

ベーゼンドルファーは1828年創業で、米スタインウェイ、独ベヒシュタインとともにピアノメーカーの「世界御三家」と呼ばれる。年間生産量はわずか数百台で、創業からの累計も5万台に満たない。現在は米投資会社サーベラス傘下のオーストリアの銀行が同社の株式を所有しているが、経営難から売却先を探していた。

ヤマハは、ピアノの販売金額シェアでは世界一。販売力を生かしてベーゼンドルファーの経営を立て直し、高級ピアノ市場を開拓する考えだ。

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