今日は、ほろ酔い加減で「Glenn Gould」について語ります。Gouldは夏目漱石に傾倒していたとする逸話があり、日本人としては少し親近感が持てます。
私が初めてGouldの演奏を聴いたのは、「グレン・グールド/バッハ全集」というCDでした。当時は研修医で、今よりハードな生活をしており、バイト当直が週2日、大学当直が週1日、当直がない日も帰宅は毎日終電近くで、少ない睡眠時間も深夜に看護師からの電話で起こされる毎日、患者のことを考えるよりも自分を守ることで精一杯でした。3日連続当直で、睡眠時間が 3日で 3時間という時もありました。Gouldのゴルドベルク変奏曲 (J.S.Bach) は、そんな時期に聴いただけに、荒んだ心に染みこむように感じました。
どのくらい感動したかといえば、ピアノを衝動買いしてしまった程です。ピアノなんて弾いたことがないのですが、「ゴルドベルク変奏曲」の楽譜を買ってきて、最初のアリアの右手だけでも弾けるようになりたいと思ったのです。結局その夢は挫折して今に至ります。郡山時代はピアノ不可の部屋だったのですが、東京に戻ってからはピアノ可の部屋に移り、今私の横にオブジェとして存在します。調律頼まないとなぁ・・・。
最近、Gouldの CDをまた買いました。ベートーヴェンの協奏曲集なのですが、特に第5番(皇帝)が綺麗でした。ソロパートの旋律を紡ぐように演奏するところで心を打たれました。他の協奏曲についてはノーコメントとしておきます。
ゴルドベルク変奏曲については、1955年と 1981年の録音が知られています。ミッシャ・マイスキーによるチェロ組曲 (Bach) は、歳をとってからの録音の方がテンポが速いのに対して、Gouldのゴルドベルク変奏曲の場合は逆で、1981年は優しくゆっくり弾いているのが印象的でした。この曲は、最近ペライアの CDを買って、再び感銘を受けました。
さて、前置きはそのくらいにして、紹介するのは、Gouldの死因についてです。これは実際に医学論文が出ています。一部引用しますが、推敲していませんので、(ほろ酔い加減でもあるし) スペルミスなどあるかもしれません。是非原文に当たることをお薦めします。
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Isabelle Faustが演奏するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とクロイツェルソナタの CD (HMC 901944)を聴きました。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は現在練習中の曲で、メジャー、マイナー問わず、いろいろな演奏家の録音を多数集めて聴いています。中でもお気に入りはヴォルフシュタールの演奏 (1928年録音) です。カップリングされた曲の演奏が不安定なこと、ピッチがあまりに高い (録音技術の問題?)、録音技術のため音質が多少悪いといった欠点がありますが、それらを補って余りあります。その他、個人的に好きな演奏家なので、レオニード・コーガンの演奏を良く聴きます。また、オイストラフの演奏は、録音によって多少の当たりはずれがありますが、言葉にならないくらい美しい録音もあり、時々聴きます。クライスラーの演奏は、傷も多いのですが引き込まれますね。
今回の Isabelle Faustの演奏は、清々しく、聴きやすい演奏でした。エレガントで押しつけがましくないのですが、伝えたいことがはっきりと伝わってきます。これまでに聴いた中にないタイプで、非常に面白かったです。繊細でクリアな音に、一瞬古楽器演奏を思い浮かべました。
彼女の演奏は 2000年10月7日にサントリーホールで聴いたことがあります。その時は、バッハの無伴奏パルティータ第2&3番、バルトークの無伴奏ヴァイオリンソナタでした。特にバルトークは圧巻でした。
彼女の使用している楽器はストラディバリウスの「スリーピング・ビューティー」だそうで、チャーミングな名前です。
一時期、ドイツのヴァイオリニストは不作だと言われましたが、ムター以降、ツィンマーマン、テツラフ、ファウストと大物が続いています。それぞれタイプが違うのも面白いところです。
時々言及されることですが、クラシック音楽には、曲は違っても、そっくりのフレーズというのがあります。
私がバッハ全集を聴きながら感じたのは、「トリオソナタ BWV 1079 第1楽章」「ヴァイオリンソナタ第4番 第1楽章」「マタイ受難曲 アリア~憐れみたまえ、わが神よ~」がそっくりなことです。バッハは多忙だっためか、色々と使い回ししてますし、モーツァルトも自身の曲を様々に編曲しています。
今回、ベートーヴェンの全集を聴きながら感じたのは、「ピアノと管弦楽のためのロンド WoO 4 第三楽章」の短調の部分と、ロマンス第1番のある部分がそっくりであることです。ベートーヴェンの初期~中期の作品には、特にヴァイオリンとピアノの距離が非常に近いものが多いように思います。彼がヴァイオリンとピアノのためにヴァイオリンソナタを書いたのは若い頃だけでしたし、ヴァイオリン協奏曲 (1806年) を、ピアノ演奏用に編曲したのも若い頃 (1807年) でした。
そうそう、話は変わりますが、ベートーヴェンのピアノソナタ Op. 111の第 2楽章が途中から Jazzに聴こえるのは私だけでしょうか?
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第210回定期演奏会
7月26日(水) 19時開演 東京オペラ・シティ
1.オーボエ協奏曲(R.シュトラウス)
2.組曲「惑星」作品32(ホルスト)
冥王星、再生する者(コリン・マシューズ)
指揮:飯守泰次郎
オーボエ:広田智之
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
このコンサートはNHK「オーケストラの森」収録を兼ねた演奏会で、先輩のK先生と聴きに行ってきました。
1曲目はリヒャルト・ストラウスのオーボエ協奏曲でした。私の叔父がオーボエ奏者であったため、楽器に親しみがあります。叔父については、私がヴァイオリン協奏曲第3番(モーツァルト)を練習していたときに、「ここからここまで弾いてごらん。叔父さんはここからここまで弾くから」と言われ、同時にヴァイオリンソロ・パートの別々の部分を演奏したのに、叔父さんの演奏した部分が伴奏になっていて、びっくりした記憶があります。今考えると、お互いの和声が一緒だったからですね。
オーボエ・ソリストは非常に上手で、安定感があり、音も綺麗で楽しめました。この曲は、1945年9月14日に完成、10月25日に浄書終了され、軍事的な性格を持つトランペットとティンパニが欠けているそうです(ライナーノーツより)。元々、私はR.シュトラウスが好きではないのですが、例外的にこの作品は聴きやすかったように思います。
2曲目は、「惑星」でした。昨年 11月に聴いて以来となります。演奏には非常に満足で、特に「木星」のテンポが前向きに演奏され、盛り上がりました。
ただ、個人的には「冥王星」が演奏されない方が好きです。「海王星」で徐々にヴォカリーズが遠ざかり、余韻を残して終わるところが好きだからです。これは、「冥王星」付きが好きな人もいるでしょうし、あくまで趣味の問題です。
「IL TRAMONTO(MTWD99029)」というCDを購入しました。演奏はQuartetto Dorico MilanoとQuartetto di Luganoです。Quartetto di Luganoには木野雅之氏が参加しています。
このCDは、全てレスピーギの曲を収録しており、世界初収録曲もあります。CDに収録されている曲は
①ドリア旋法の弦楽四重奏曲
②夕暮れ~メゾ・ソプラノと弦楽四重奏曲のための~
③弦楽八重奏曲
です。
レスピーギは1879年生まれ、1936年没、と比較的新しい時代の作曲家です。作品としては、リュートのための古い舞曲とアリアなどが有名で、一部ネットでも視聴できます。
収録曲はいずれも聴きやすく、また、中にはジプシー音楽風な部分もあり、楽しめました。
「渡邊暁雄と日本フィル全集 (26枚組)」を聴き終えました。
普段聴かない曲が多くて勉強になりました。収録されている曲にはシベリウスが多かったのですが、指揮者の渡邊暁雄先生の母親がフィンランド人であることが影響しているのかもしれません。
現代曲が多く、新しい音楽を発掘しようとする強い意志を感じました。しかし、私の趣味には合わない曲も多かったようにも思います。一つには新しい音楽に私の耳が慣れていないからという問題があります。
現代曲の中で名曲として残るのは一握りに過ぎず、消えていく曲の方が多いのも事実です。その中には相当数の駄作も含まれますが、後世になって評価が変わる曲もあります。いずれにせよ、どんな曲も一度は演奏されないと日の目を見ることはありません。渡邊先生のされていたことは、素晴らしいことだと思います。
私個人として、渡邊暁雄先生には特別な思い出があります。渡邊先生は、岡山県北部の山間の都市に毎年第九を指揮しにいらしていました。アマチュア音楽家であった父が毎年クラリネットで参加し、それを楽しみにしていたのです。毎年演奏会を聴きに行っていました。東京から6時間かかる田舎でしたが、これだけ高名な指揮者が、良く毎年来てくださったなと、今になって思います。
少し古い時代の日本のオケの演奏ですが、CDの演奏水準として、気持ちよく聴けます。ただ、ヴァイオリンソロの水準には疑問符が付きました。石井志都子氏のサン・サーンスのコンチェルトは、CDを聴いて頂けるとわかると思いますが、技術的には不安定な部分が目立ちます。
山口市に生まれる。
小学4年で全国日本学生音楽コンクール第1位。
中学1年で音楽コンクール第2位。高校2年16
才でロン・ティボーコンクール第3位入賞。この
年パリ国立音楽院入学。翌年パリ国立音楽院
を首席で卒業。
再度ロン・ティボーコンクール第3位受賞。恩師
のパリ国立音楽院教授ガブリエル・ブイヨン氏も
同行して2年半ぶりに帰国。
各地で帰国記念演奏会。再びフランスへ留学。
21才でパガニーニ国際コンクール第3位入賞。
昭和44年約10年間の留学を終えて帰国。
共演したオーケストラはパリコロンヌ、フランス国
立放送、パドゥルー、ナポリシンフォニー等。
わが国では読売日響、東京フィル、日本フィル
などと共演。
平成6年10月東京芸術劇場にて、デビュー35周
年記念コンチェルトリサイタルを開催。
現在、桐朋学園大学教授、日本音楽コンクール、
全日本学生音楽コンクールの審査員をつとめる。
石井洋之助、鷲見三郎、ガブリエル・ブイヨン氏に
師事。
平成10年山口県文化功労賞を受賞。(http://www.c-able.ne.jp/~tanabata/h15soukai.html)
輝かしい経歴の持ち主のようです。たまたまこの時の演奏が不調だったのか、録音と聞いて緊張していたのか、知るべくもありませんが。
その他に、ルイ・グレーラー氏の演奏を初めて聴くことが出来て、うれしく思いました。昔、氏の「ヴァイオリンはやさしく 音楽はむずかしい (ルイ・グレーラー著、羽仁結訳、全音楽譜出版社)」を読んだことがあり、一度演奏を聴いてみたいと思っていたからです。
こうした全集は、記録としての価値もあり、貴重だと思います。日本のオケの 50年も前の演奏をじっくり聴く機会など、あまりないですから。
あれこれと、音楽系サイトをみて遊んでいたのです。
弦楽器Stradのサイト。そこで、在庫楽器の弾き比べをムービーで紹介していました。
まぁ、傷の多い演奏ではあります。普段弾き慣れない楽器を弾くのも大変なのでしょう。ただ、聴いていて楽しい演奏ではあります。表現したいことは伝わってきますね。
演奏は、ダヌーツ・マーニャ。懐かしい名前でした。
私が、一時期ロマ音楽(=ジプシー音楽)にはまっていて、ルーマニア出身のマーニャの演奏を聴きに行ったことがありました。客席で、演奏までの間、「森のかなたのミューズたち ルーマニア音楽誌(みやこうせい著、音楽之友社)」を読んでいました。すると、すぐ後ろの客席の女性が、「それはひょっとして、先生の本ではありませんか?」と話しかけてきたのです。私が本の表紙を見せると、その女性は、自分の隣に座る男性を「こちらの先生が、みや先生です」と紹介してくれました。
これ程の奇遇もありません。
みや氏は本に「よき出会いをよろこびつつ 2001.10.14 みやこうせい」とサインをしてくれました。
マーニャの演奏ムービーを聴きながら、そんな話を思い出したのでした。
今、少し楽器の練習をしていて、不吉なことに弦が切れました。今日は雨ですので湿度が高く、楽器には酷な天気です。
私が使用している弦は、E線が「Lenzner Musiksaiten Strings Goldbrokat(俗に言うゴールドブラカットです)」、A-G線が「PIRASTRO Oliv(俗に言うオリーブです)」です。今回切れたのはA線でしたが、コンサート前なので、全部張り替えることにしました。ただ、オリーブはガット弦なので、張り替えた後特に音程が狂いやすく、1週間くらいは調弦が頻回に必要で練習に支障があります。
弦楽器を張り替えながら、昔読んだ「マイスターのQ&A(佐々木 朗著、音楽之友社)」という本を思い出しました。弦楽器を演奏する方には必携の本だと思います。
佐々木氏のサイトには、たくさんの面白い読み物があります。
その中でお薦めは
・マイスターのQ&A
・ヴァイオリン製作関係レポート
・ヴァイオリン音響研究の部屋
日本フィルハーモニー交響楽団
第592回東京定期演奏会
7月12日(木) 19時開演 東京オペラシティ
1.交響曲第104番≪ロンドン≫(ハイドン)
2.交響曲第38番(モーツァルト)
3.協奏交響曲(チェロ協奏曲第2番)(プロコフィエフ)
指揮:広上淳一
チェロ:趙静
日本フィルハーモニー交響楽団
今回の演奏会のテーマはロンドン。どの作曲家もロンドンに縁があります。
モーツァルト、ハイドンとも、不満のない演奏で、純粋に楽しめました。弦楽器の音は、日本のオーケストラの中では、日フィルが一番好きです。音に香りを感じます。
プロコフィエフは初めて聴く曲。途中、彼作曲のヴァイオリン協奏曲に似ている部分もあり、楽しめましたが、私の好みとは異なり何度も聴きたい程の魅力は感じませんでした。
趙静さんは、しっかり弾き込んで音を出す方で、以前聴いたハンナ・チャンと対照的に感じました。時々音程が甘くなりますが、これほどの難曲なので、多少の傷は仕方ないかもしれません。解釈に音楽的な違和感を感じる点はなく、特に技巧的な箇所でのボウイングにはびっくりしました。中国は、ヨーヨー・マを初めとして、良いチェリストを色々育てているなと感じました。
ただ、今日の聴衆は音に鈍感な客が多かったためか、ガサガサと音を立てる人が多く、指揮者が楽章の間に腕を組んでじっとしているシーンもありました。コンサートのパンフレットの束を演奏中に落とした人もいたし・・・。最低限のマナーは守りたいものです。
瑠璃さんからいくつかのコンサートチケットを頂きました。いつもありがとうございます。
当直のやりくりが何とかなったので、7月11日のコンサートを、先輩の I先生と芸術劇場に聴きに行きました。
読売日本交響楽団
第141回東京芸術劇場名曲シリーズ
7月11日(水) 19時開演 東京芸術劇場
1.歌曲<オベロン>序曲(ウェーバー)
2.ヴァイオリン協奏曲第1番(ブルッフ)
3.組曲<展覧会の絵>(ムソルグスキー(ラヴェル編曲))
指揮:Paolo Carignani
Vn:川久保賜紀
読売日本交響楽団
当初のソリストは、ジャニーヌ・ヤンセンの予定。ところが、急病のためとのことで、急遽ソリストが変更となりました。ヤンセンの演奏は聴いたことがなかったので、残念でした。
ウェーバーの歌曲「オボロン」を聞くのは初めてです。出だしに派手さはありませんが、徐々に盛り上がり、胸のすくようなクライマックスを迎えます。オペラの序曲は、客に曲を覚えさせること (口ずさめるような曲であったりします) と、ワクワクさせることが非常に重要です。ウェーバーは、モーツァルトの妻と従兄弟に当たるそうで、彼のクラリネット協奏曲には聴きなじみがあります。
ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番を生で聴くのは久しぶりでした。昔、チャイコフスキーコンクールで入賞する前の川久保さんの演奏を聴いたことがあり、どう変わったのか楽しみでした。
川久保さん登場の時、背中がほぼ裸のセクシーな衣装で、ドキッとしました・・・・。
曲の出だしは、ポルタメントをかけながらで、面白い趣向だと思いました。彼女の魅力は、ミスのないことかもしれません。やりたいことも良く伝わってきました。ただ、演奏が少し平面的な印象も受けました。音の大小の幅が狭かったように思います。また、演奏に必然性を作り出す点で、巨匠と言われる演奏家と比べて少し不満を感じました。昔、師のザハール・ブロンの演奏を聴いたとき (川久保さんと共演だったのですが)、ブロン先生は、この点が天才的に上手だったと思います。もう一点気になったはヴィブラートです。低弦でのヴィブラートが、いずれも高音でのヴィブラート並に細かくかけられており、毎回気になりました。もう少し、ゆったりかけていると聴きやすかったと思いました。
とはいえ、今回は、急遽出演が決まり、ほとんど準備期間がなかったにしては、安心して聴くことが出来ました。高音の瑞々しい響きは彼女の魅力だと思います。
展覧会の絵を全曲聴くのは初めてでした。解説を読んでいたため、「あ、この曲がこの絵に相当するのか・・・」と楽しめました。ラヴェルの編曲も天才的です。