アッコルド

By , 2013年7月30日 8:09 AM

昔、弦楽器専門の「ストリング」という雑誌がありました。私は定期購読していて 15年分の雑誌が自室にありますが、2012年11月号をもって廃刊になってしまいました。しかし、ストリング誌の編集者たちが、Webベースのサービスとして「アッコルド」というのを始めるらしいです。

 アッコルド

紙媒体に比べれば経費はかなり削減出来るとは思いますが、店頭に雑誌が並ばない分知名度は劣るので、有料化したとしてどのくらいの顧客を獲得できるかが問題になると思います。ストリング誌も昔は巨匠の薫陶を受けた演奏家が巨匠を語るインタビュー記事などワクワクしながら読んだものですが、廃刊前数年間は興味を引く記事が減っていたので、これからどういうコンテンツを提供するか編集者の手腕が問われますね。今後は、Webベースなので、動画配信など新しい試みもやりやすいでしょうから、色々と期待しています。


ステロイドと骨粗鬆症

By , 2013年7月28日 9:27 AM

神経疾患でステロイドを使う症例は結構あります。現在の私の外来でも、視神経脊髄炎 (NMO), 重症筋無力症、慢性炎症性多発根神経炎 (CIDP), Neuro-Sweet disease, Churg-Strauss症候群などの患者さんにステロイドの長期投与をしています。このようにステロイド投与をしている患者さんでは、投与後 3ヶ月以内に骨密度の減少が始まり、6ヶ月後ではその減少はピークに達します。そのため、骨粗鬆症対策が大事になってきます。しかし、神経内科医の間では、ステロイド性骨粗鬆症に対して議論になることは少ないのが現状なのではないかと思います。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2011年版」を紐解くと、116~117ページに「ステロイド性骨粗鬆症」の記載があり、「2010年現在,わが国では「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療のガイドライン2004年度版」が用いられており」とされますが、2004年のガイドラインではやや古い感は否めず、実際に新薬の開発に伴い薬物療法も変化してきています。

最近、アメリカリウマチ学会のガイドラインを読む機会があったのですが、非常にためになりました。無料でアクセスできて、内容もそれほど長くないのが素晴らしいところです。

American College of Rheumatology 2010 Recommendations for the Prevention and Treatment of Glucocorticoid-Induced Osteoporosis

JENNIFER M. GROSSMAN,1 REBECCA GORDON,2 VEENA K. RANGANATH,1 CHAD DEAL,3
LIRON CAPLAN,4 WEILING CHEN,1 JEFFREY R. CURTIS,5 DANIEL E. FURST,1 MAUREEN MCMAHON,1
NIVEDITA M. PATKAR,5 ELIZABETH VOLKMANN,1 AND KENNETH G. SAAG5
Arthritis Care & Research
Vol. 62, No. 11, November 2010, pp 1515–1526
DOI 10.1002/acr.20295
© 2010, American College of Rheumatology

このガイドラインの冒頭には、ガイドラインは絶対的なものではなく、個々の患者さんに応じて治療を決めるように、といった内容が書かれています。ガイドラインの立場を表した、非常に大事な文章だと思います (これを読むと、ガイドラインを訴訟の道具にすべきではありませんね)。

Guidelines and recommendations developed and/or endorsed by the American College of Rheumatology (ACR) are intended
to provide guidance for particular patterns of practice and not to dictate the care of a particular patient. The ACR
considers adherence to these guidelines and recommendations to be voluntary, with the ultimate determination regarding
their application to be made by the physician in light of each patient’s individual circumstances. Guidelines and recommendations
are intended to promote beneficial or desirable outcomes but cannot guarantee any specific outcome. Guidelines
and recommendations developed or endorsed by the ACR are subject to periodic revision as warranted by the evolution
of medical knowledge, technology, and practice.

以下、簡単に内容を紹介します。

①ステロイドを開始するときは、カルシウムとビタミン Dを補充することが推奨される。

Calcium and vitamin D supplementation counseling was recommended for all patients beginning glucocorticoid therapy. Vitamin D supplementation to achieve “therapeutic” levels of 25-hydroxyvitamin D, or dosages of 800–1,000 IU/day are 2 target dosing regimens; however, glucocorticoids can interfere with vitamin D absorption and may necessitate a higher supplementation dose to achieve therapeutic levels (97).

②閉経後女性、50歳以上の男性にステロイドを開始するときは、FRAXにより骨折リスクを評価して、治療を決定する。

・FRAXのサイトは下記。サイト上部にある「計算ツール」タブから、患者の人種を選べる (骨折リスクには人種差がある)。

FRAX

・ FRAXによる 10年間の骨折確率から、骨折リスクを ” ≦10% low risk, 10~20% medium risk, 20% < high risk” とする。

・下記フローチャートに則り、治療を決定する。

Approach to postmenopausal women and men age > 50 years

Approach to postmenopausal women and men age > 50 years

※薬物名に関しては次の通り

alendronate: フォサマック、ボナロン, risedronate: ベネット、アクトネル, teriparatide フォルテオ, zoledronic acid: ゾメタ (※ゾメタは、日本においては骨粗鬆症では保険適応外。内分泌学会から要望が出されたが却下された模様)

③閉経前女性および 50歳未満の男性にステロイドを開始するときは、下記フローチャートに従う。

approach to premenopausal women and men age < 50 years

Approach to premenopausal women and men age < 50 years


ロビーコンサート

By , 2013年7月27日 10:45 PM

2013年7月25日ホテルオークラでのロビーコンサートを聴きに行って来ました。

第 320回ロビーコンサート 25

1. 華麗なるポロネーズ第 1番 (ヴィエニアフスキ)

2. ツィガーヌ (ラヴェル)

3. カプリス第 1番 & 第 5番 (パガニーニ)

4. 序奏とロンド・カプリチオーソ (サン=サーンス)

ヴァイオリン:成田達輝

ホテルオークラ 本館 第 5階 メインロビー

なんと、無料コンサートで、さらに無料でシャンパンも振舞われました。

ロビーのガヤガヤとした雰囲気の中、華麗なるポロネーズが始まりました。技巧的な曲ですが、余裕綽々な雰囲気で演奏していて、軽やなタッチのボウイングが、素晴らしかったです。2曲目、ツィガーヌは随所に「聴かせる」ための工夫がされていて、魅了されました。また、やや音が deadな環境ではあったと思うのですが、低音の響きの豊かさが印象に残りました。パガニーニのカプリスは圧巻、特に第 5番は、カヴァコスを彷彿とさせる凄まじいテンポでした。最後のロン・カプは先日のリサイタルで聴いた曲ですが、雰囲気の作り方が、何度聴いても感動モノでした。

成田達輝氏は、11月6日に浜離宮でリサイタルをされるとのことで、今から楽しみにしています。


SCIWORA

By , 2013年7月25日 8:02 AM

最近、外傷後の頸髄損傷の方を診療する機会がありました。珍しいことに、その患者さんは明らかに両上肢の筋力低下があるにも関わらず、頚髄 MRIでは脊柱管狭窄も髄内異常信号もありませんでした。念のため針筋電図を検査すると、軽度の神経原性変化がみられ、神経再支配が始まったばかりと解釈すると損傷からの時期 (2~3週間) と一致する所見でした。神経伝導検査では障害部位に一致して CMAP amplitudeの低下がありました。病歴や電気生理検査の所見を踏まえると、脊髄損傷が神経症状の原因であることは明らかです。MRIで異常がないことが矛盾しないのか少し調べてみると、2ヶ月くらい前に面白い論文が出ていました (というか、知り合いの整形外科の先生から教えて頂きました)。

Early magnetic resonance imaging in spinal cord injury without radiological abnormality in adults: a retrospective study.

J Trauma Acute Care Surg. 2013 Mar;74(3):845-8. doi: 10.1097/TA.0b013e31828272e9.
Boese CK, Nerlich M, Klein SM, Wirries A, Ruchholtz S, Lechler P.Source
Department of Trauma, University Hospital Giessen and Marburg, Marburg, Germany.

Abstract
BACKGROUND:
The purpose of this study was to describe the clinical and imaging characteristics of patients experiencing blunt spinal trauma without radiological abnormalities but transient or persistent neurological deficits.
METHODS:
This retrospective study analyzed plain radiographs, computed tomographic scans, and magnetic resonance images of patients with spinal cord injury without radiological abnormality (SCIWORA) who were admitted to a Level I trauma center. Neurologic status, Frankel grade, and short-term patient outcome were assessed.
RESULTS:
Of 1,604 patients experiencing blunt spinal trauma, 21 (12 men and 9 women) with a mean age of 35.5 years (range, 16.2-70.9 years) presented with a clinicoradiographic mismatch. Magnetic resonance imaging (MRI) was available in 15 patients. In seven patients (46.6%), MRI revealed either neural (n = 2, 13.3%) or extraneural (n = 5, 33.3%) spinal abnormalities. Importantly, in eight patients (53.3%), no spinal abnormalities were visible on MRI. Furthermore, subgroup analysis revealed no prognostic value regarding the presence or absence of detectable spinal injuries.
CONCLUSION:
Spinal abnormalities were not detected on MRI in a substantial proportion of patients presenting with SCIWORA. The prognostic value of MRI findings in SCIWORA needs to be validated by future studies.
LEVEL OF EVIDENCE:
Epidemiological study, level V.

2005~2011年にレベル1外傷センターで鈍的脊髄外傷と診断された1604例を対象としました。神経学的所見を有するものの、X線及び単純 CTで脊髄損傷を示唆する所見がない患者 (SCIWORA) は 21例 (男性 12例、女性 9例, 16.2~20.9歳 (平均 35.5歳)) で、交通外傷が 10例、スポーツ外傷が 7例、転倒が 4例でした。21例のうち 15例で、24時間以内に全脊髄 MRI (1.5T) を施行したところ、8例では異常がなく (real SCIWORA)、2例では脊髄に異常所見があり、5例では脊髄以外に異常所見がありました。退院時、MRIで異常がなかった 8例のうち 5例は完全に改善しましたが、3例で神経学的後遺症が残りました。脊髄に浮腫性変化が検出された 2例では、1例が完全に回復し、残りの 1例では一時的な感覚障害のみが見られました。頸椎椎間板に変性があるものの脊柱管狭窄や神経圧迫の所見がなかった 5例では、3例で完全に改善しましたが、残りの 2例では回復が不完全でした。MRIを施行しなかった 6例では、24時間以内に完全に神経学的な改善がありました。

 神経内科では外傷を診療する経験は少ないですが、「MRIで異常がないから外傷による神経障害は考えにくくて、他の神経疾患がないか診て欲しい」という依頼を受けることはあり、MRI正常の脊髄損傷は存在しうるという論文を知っておく価値は高いのかなと思いました。


Brainbow

By , 2013年7月21日 8:50 AM

以前紹介した、「脳の歴史」という本に、脳細胞に蛍光蛋白質を発現させて撮像する “Brainbow” の写真が載っていました。脳を意味する “Brain” と、虹を意味する “Rainbow” を掛けあわせた言葉ですね。

最近、科学雑誌に Cellに、Brainbowの写真が載っているのを見つけました。とても綺麗な写真です。無料で公開されています。

 Cell -Brainbow-


リンスインシャンプー

By , 2013年7月20日 11:05 AM

シャンプーの話について以前ブログに書いたことがあります。それとは関係ないのですが、Chem-stationのツイートで、リンスインシャンプーについて解説したサイトが紹介されていました。

リンスインシャンプーの化学

シャンプーとリンスを混ぜただけのものだろうか。

シャンプー分子はマイナスのイオンで、リンス分子はプラスのイオンである。

すなわち、混ぜたらお互いが引き合ってくっついてしまい、シャンプーとしての機能もリンスとしての機能も失ってしまう。

よって、上にあげたようなシャンプー分子とリンス分子は共存して効果を発揮することはできないのである。

しかしリンスインシャンプーは売っているわけで、ちゃんとシャンプーの洗浄力もリンスの柔軟力も発揮している。

ではリンスインシャンプーはどんな仕掛けなのだろうか。

その答えは、上記サイトにわかりやすく書いてあります。リンスインシャンプーって、こんな化学的な工夫がされているんですね。読んでちょっと感動しました。


鯨ギャラリー

By , 2013年7月19日 7:10 AM

2013年7月4日のブログで書きましたが、7月は週に半日フリーな時間が取れるため、美術館や博物館など彷徨っています。今回は東京海洋大学品川キャンパスに遊びに行って来ました。ここを選んだ理由は、小川鼎三先生の著書「鯨の話」を読んで以来、鯨に魅せられたからです。品川駅から徒歩で 10分くらいです。

大学構内に入り、直進すると左側に鯨ギャラリーがあります。ここには、コククジラ、セミクジラの全身の骨格標本、ツチクジラ頭部の骨格標本、セミクジラのヒゲなどが展示してあります。セミクジラの椎体を数えてみると、40以上もあり、びっくりしました。

鯨ギャラリーの隣には、水産資料館がありました。入り口には、ドワーフミンククジラの骨格標本があり、2階に上がると様々な海の生き物の剥製が展示されていました。南極探検隊が皇帝ペンギンを連れて帰ろうとしたとき、ペンギンが弱ってしまって処分しなければいけなくなってしまい、他の隊員に知らせるために書いた張り紙 (実物) などが興味深かったです。アシカの剥製の傍らには、アシカなどは後ろ足が尾びれに進化したのに対し、鯨は尻尾が尾びれに進化したという解説が書いてありました。それほど広くない施設ですが、無料ですし駅からも近いので、都内の方は遊びに行ってみると楽しいかもしれません。


アニサキス

By , 2013年7月18日 7:48 AM

徳田安春先生達が、BMJ case reports誌に面白い論文を投稿されています。アニサキスの症例報告なのですが、何と駆除する際の動画が付いています。エルガー作曲の威風堂々が BGMとして使われており、素晴らしい出来栄えです。是非御覧ください (2013年7月18日現在無料で視聴できます)。

Endoscopic capture of Anisakis larva (a video demonstration)

アニサキスは救急当直をしているとたまに診療する機会があって、消化器科の先生に胃カメラを御願いすることがあるのですが、こんな感じで駆虫するんですね。


捏造騒動にも負けず

By , 2013年7月13日 8:39 PM

iPS論文不正で世の中を騒がせた森口尚文氏、ほとぼりが冷めた頃に再始動です。BMJ Case Reportsという雑誌に論文が掲載されました。

最初の論文はネットで少し話題になりましたが、その後気づかないうちに同じ雑誌に 2本追加で載っているようです。Pubmedで調べると、7月13日現在、他の雑誌には彼の論文は見当たりませんので、何故 BMJ Case Reportsばかりなのか、気になりますね。

彼の論文だと気づかずに医局の抄読会で読んだら、タコ殴りにされそうです (^^;

BMJ Case Reports

Searching journal content for “Hisashi Moriguchi”in full text.

1. Stable expressions of nine genes within human oocytes and live birth by in vitro fertilisation
Hisashi Moriguchi, Joren Madson
BMJ Case Reports published online 18 April 2013, doi:10.1136/bcr-2013-008988
…live birth by in vitro fertilisation Hisashi Moriguchi Joren Madson Correspondence to Dr Hisashi Moriguchi, moriguchi-tky@umin.ac.jp Reprogramming…live birth by in vitro fertilisation Hisashi Moriguchi, Joren Madson Reprogramming Inc, Chiba…
[Summary] [PDF] [Request permissions]

2. The reprogramming therapy for a patient with advanced hepatocellular carcinoma by using human-induced pluripotent stem (iPS) cells technology
Hisashi Moriguchi, Joren Madson
BMJ Case Reports published online 2 May 2013, doi:10.1136/bcr-2013-008950
…stem (iPS) cells technology Hisashi Moriguchi 1 Joren Madson 2 Correspondence to Dr Hisashi Moriguchi, moriguchi-tky@umin.ac…stem (iPS) cells technology Hisashi Moriguchi,1 Joren Madson2 1 Reprogramming…
[Summary] [PDF] [Request permissions]

3. Autologous human cardiac stem cells transplantation for the treatment of ischaemic cardiomyopathy: first study of human-induced pluripotent stem (iPS) cell-derived cardiomyocytes transplantation
Hisashi Moriguchi, Joren Madson
BMJ Case Reports published online 24 May 2013, doi:10.1136/bcr-2013-008960
…cardiomyocytes transplantation Hisashi Moriguchi 1 Joren Madson 2 Correspondence to Dr Hisashi Moriguchi, moriguchi-tky@umin.ac…cardiomyocytes transplantation Hisashi Moriguchi,1 Joren Madson2 1 Reprogramming…
[Summary] [PDF] [Request permissions]

・・・と思ったら、論文リンク (Summary) にアクセスすると、”Temporarily withdrawn while we investigate a complaint.” とか、”Retracted due to duplicate publication.” ってなってました。


統計学的有意差

By , 2013年7月13日 5:14 PM

研究で統計学的有意差が出なかった時・・・すごくポジティブな解釈をまとめたブログが面白いです。でも、本当に論文で使ったら多分大変なことになります (笑)

 A borderline definite marginally mild notably numerically increasing suggestively verging on significant result


Panorama Theme by Themocracy