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C9orf72ノックアウトマウスの話

By , 2015年6月18日 6:00 AM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) や前頭側頭葉変性症の原因遺伝子の一つとして C9orf72の GGGGCC 6塩基反復配異常伸長が知られています。そのモデルマウスの作製に成功した話を 2015年5月28日のブログ記事で紹介しました。

ALSモデルマウス

逆に、C9orf72を神経細胞およびグリア細胞で選択的にノックアウトしたマウスの表現型を調べた論文が Annals of Neurology誌に掲載されました (2015年6月5日 published online)。

C9orf72 ablation in mice does not cause motor neuron degeneration or motor deficits

なんと、このマウスは体重減少はあったものの、ALSのような運動ニューロンの障害は見られず、生存期間も変わらなかったそうです。

この結果をみると、 C9orf72遺伝子異常は、loss of functionというより gain of function、もしくは RAN translationが原因となっているのではないかという印象を持ちます。

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C9orf72を巡る最近の話

By , 2014年4月27日 11:23 AM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の原因遺伝子 C90rf72は 2011年に報告されました。原因が不明とされる ALSにおいて、家族性 ALS患者の46.4%, 孤発性 ALS患者の 21.0%に C9orf72のイントロン領域に GGGGCCの 6塩基反復配列の伸長が見られたという報告は、大きな反響を呼びました。ただし、この変異は日本人には少ないとされています。

C9orf72は ALSだけではなく、アルツハイマー病への関係も指摘されています。また、稀ながら、小脳失調症と関係があったという報告もあるようです。小脳失調症に関しては本邦から、NOP56遺伝子のイントロン領域での 6塩基反復配列伸長が運動ニューロン疾患を伴う小脳失調症で報告されていて、別の遺伝子ではあるものの、イントロン領域での 6塩基反復配列伸長という点が C9orf72と共通しているので興味深いです。さらに、C90rf72変異があってパーキンソニズムを呈することもあるようです。

さて、C9orf72変異を持つ一家系で、ALSと多系統萎縮症 (MSA) の患者がそれぞれみられたという論文を最近読みました。2014年 4月 14日の JAMA neurology誌です。

Multiple System Atrophy and Amyotrophic Lateral Sclerosis in a Family With Hexanucleotide Repeat Expansions in C9orf72 

このように、C9orf72の 6塩基反復配列伸長が様々な変性疾患で報告されるにつれ、C9orf72って何者なんだと疑問符が頭の中を渦巻きます。一つの遺伝子が、多くの変性疾患に関わっていると話がややこしいですね。

一つの変性疾患の原因遺伝子が、別の遺伝性疾患の原因遺伝子であることは他にもあり、例えば VCPは IBMPFD (inclusion body myopathy with Paget’s disease of bone and frontotemporal dementia) の原因遺伝子であると報告され、後に ALSの原因遺伝子でもあることがわかりました骨 Paget病の原因遺伝子である SQSTM1も、後に ALSの原因遺伝子として報告されました。また、DCTN1も Perry症候群の原因遺伝子でありながら、進行性核上性麻痺 (PSP) 様の表現型も示すことが報告されています。これら共通の遺伝子異常が報告された変性疾患には、共通する分子メカニズムがあるのでしょうか。今後の研究を見守りたいと思います。

余談ですが、MSAにおけるコエンザイムQ10合成酵素 COQ2の異常が 2013年に本邦から報告されているようです。Nature Newsの記事には、「コエンザイムQ10の大量投与による多系統萎縮症に対する臨床治験の実現に向けて準備を進めている」と書かれてあり、効果があると良いですね。

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C9orf72とアルツハイマー病、そしてグアムALS

By , 2013年4月21日 11:17 PM

2013年 4月 15 日の Archives of Neurology誌 (Published online) に、臨床的にアルツハイマー病と診断された患者におけるC9orf72 6塩基反復伸長についての論文が掲載されました。

C9orf72 Hexanucleotide Repeat Expansions in Clinical Alzheimer Disease

家族性アルツハイマー病は amyloid precursor protein (APP), presenilin2 (PSEN2) 遺伝子の変異が原因となりうるが、一方で前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia; FTD) の原因遺伝子 microtubule-associated protein tau (MAPT), granulin (GRN) の変異もまた臨床的アルツハイマー病患者で検出されることがあるため、アルツハイマー病と健忘型 FTD (amnesic FTD) の表現型はオーバーラップしているのではないかと言われている。

近年注目されている FTDおよび ALSの原因遺伝子 C9orf72を臨床的アルツハイマー病患者で調べた研究は過去に 2報存在する。最初の報告は C9orf72の 6塩基反復伸長が家族性アルツハイマー病 342例中 3例、孤発性アルツハイマー病 711例中 6例に見られたとするものである。うち 2例の剖検報告ではアルツハイマー病というより FTD病理だった。次の報告では、臨床的にアルツハイマー病とされた患者 568例中、C9orf72 6塩基反復伸長のある患者はいなかった。

今回著者らは、872家系の家族性アルツハイマー病患者と、888例の正常コントロールを調べた。その結果、家族性アルツハイマー病患者群の 5例 (0.57%, いずれも白人)、正常コントロール群の 1例で 6塩基反復の伸長 (30リピート以上) を認めた。家族性アルツハイマー病の患者 5例はいずれも APP, PSEN1, PSEN2, GRN, MAPTにおいて、よく見られるような変異はなかった。5家系のうち 3家系では C9orf72反復は 1000リピート以上だったが、2例では 30~100リピートであり、後者ではどの程度の関連があるかは不明である。

家系 1の患者はこの家系における変異の創始者で、 C9orf72の 6塩基反復は 1200-1300リピートだった。73歳でアルツハイマー病と診断された。12年後に死亡し、剖検がなされた。病理学的には neurofibrillary tangleや plaqueが、新皮質、海馬、扁桃体、マイネルト基底核に豊富にみられた (>40 plaques/100 x field)。またレヴィー小体が散在していた。レヴィー小体を伴った黒質緻密部の神経細胞も見られた。残念なことに、検体は (tau, ubiquitin, TDP-43, p62など) の追加検査には使用不能だった ( 家系 2~5の患者は簡単な臨床症状の記載のみで病理の記載なし)。

正常範囲内の反復であれば、反復回数が多くなるからアルツハイマー病のリスクになるということはなかった。

また、著者らが PSEN1 A79V変異の有無を調べた所、872家系のうち 4例 (0.46%) で変異を認めた。今回のコホート研究では、C9orf72の 6塩基の著明な反復伸長 (3/872) は、PSEN A79V (4/872) に次ぐアルツハイマー病のリスクと言える。興味深いことに、アルツハイマー病に関連した変異 (APP, PSEN1, PSEN2) は 1.82%に見られたのに対し、FTDに関連した変異 (MAPT, GRN, C9orf72) は1.94%に見られた。アルツハイマー病において、FTD関連遺伝子変異はアルツハイマー病遺伝子変異と同じくらい一般的に見られるものだった。

どうやら、C9orf72の 6塩基反復伸長の表現型は、筋萎縮性側索硬化症 (ALS)、前頭側頭葉変性症 (FTLD), FTLD-ALS, 臨床的アルツハイマー病と多彩であるらしい。

C9orf72がアルツハイマー病にも関係しているとなると、この遺伝子が何者なのか、ますます訳がわからなくなってきました。また、遺伝子変異と病理所見との整合性をどうつけるのかも悩ましいです。続報を待ちたいと思います。

さて、上記以外にも、C9orf72に関する興味深い論文が同じ日の Archives of Neurology誌に掲載されていました。

C9orf72 Hexanucleotide Repeat Expansion and Guam Amyotrophic Lateral Sclerosis–Parkinsonism-Dementia Complex

日本の紀井半島や、グアムのチャモロ族では、筋萎縮性側索硬化症とパーキンソン認知症複合 (amyotrophic lateral screlosis and parkinsonism-dementia complex; ALS-PDC) が高い頻度で見られることが知られている。C9orf72の 6塩基反復伸長が ALSのみならずパーキンソニズムを起こすことが報告されていることや、紀伊半島 ALSの約 20%で C9orf72の 6塩基反復伸長が見られることが報告されていることから、著者らはグアムのチャモロ族で C9orf72の 6塩基反復伸長がみられるかどうか調べた。対象は 24例の ALSと 22例の PDC患者で、1例を除いて全てチャモロ族だった。チャモロ族で C9orf72の 6塩基反復伸長がみられた患者はいなかった。1例のみ C9orf72 6塩基反復伸長がみられたが、アメリカで生まれた白人であり、チャモロ族とは無関係であった。また、Parkinson病の原因遺伝子である LRRK2変異を伴った患者はいなかった。

グアム ALS, ALS-PDCは日本人の平野先生が精力的に研究していた疾患です。今回の論文を読むと、紀伊半島とグアムの ALS-PDCは、遺伝学的なバックグラウンドが異なるのかもしれないのですね。C9orf72以外の遺伝子がどうなっているか、今後注目です。

話はがらりと変わりますが、アメリカのインディアンやアラスカの先住民では、白人より ALSの発症率が低そうだというのが 2013年 4月号の Archives of Neurology誌 (Published onlineは 2月 25日) に載っていました。こうした疫学的な調査結果も、将来は遺伝子で説明される時代がくるのでしょうか。

(追記)
アルツハイマー病の治療薬開発が何故難しいのか、ワイリー・ヘルスサイエンスカフェに岩田淳先生のわかりやすい解説があります。併せてどうぞ。

アルツハイマー病の病態修飾治療 課題と希望

  1. ADを自然発症するマウスは存在しないため,モデルマウスは遺伝子導入マウスであり,アミロイドカスケード仮説に沿って作成されている.そして現在開発されている多くの病態修飾薬はアミロイドβ(Aβ)に対するものである.今までの様々な知見からAβの蓄積がAD発症に密接に関与している事は恐らく確かであるが,それでも臨床試験が行われてきた薬剤が正しい標的へと向いているかどうかは常に検証すべきである.
  2. ADの診断は従来NINCDS-ADRDA基準で行われてきた.この基準ではレビー小体型認知症,前頭側頭葉萎縮症などのAD以外の認知症の混入が避けられないため、分子標的薬の効果が元々ない症例が存在していた可能性がある.
  3. 例え標的が正しくても,その効果の評価方法に問題がある可能性がある.AD治療薬の有効性を示すために必要な事は『認知機能の改善』であるが,いかに優秀なサイコメトリーのバッテリーでも体調や検者によるばらつきが多いため,統計学的有意差を持った有効性を見いだすために必要な被験者数は膨大となる.
  4. ADの自然経過を追うことでAβ蓄積は認知症発症の15年近く以前より生じている事が判明してきた.現在臨床試験が行われてきたAβ標的薬は認知症を発症してしまった段階では既に遅きに失している可能性がある.これは,心筋梗塞を発症してICUに入室した患者に対して禁煙を勧めたり,スタチンを投与したりすることと同等であろう.
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C9orf72での RANTing

By , 2013年3月5日 10:08 PM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) 研究で、現在最もホットな遺伝子は C9orf72かもしれません。このブログでも何度か紹介しています。

2011年9月、C9orf72のイントロン領域における GGGGCC 6塩基リピートがフィンランド人 (Finnish) において孤発性 ALS患者の 21.1%を占めることが報告され、大きな衝撃を与えました。その後、さまざまな国における遺伝子変異の頻度の報告が相次いでいますが、国によりかなり状況は異なるようです。

C9orf72について、2013年 2月 20日の Neuron誌に興味深い論文が掲載されました。その論文は同誌の “Previews” で注目の論文として紹介されています。まずは紹介記事を示します。

RANTing about C9orf72

Neuron, Volume 77, Issue 4, 597-598, 20 February 2013
10.1016/j.neuron.2013.02.009

Refers to: Unconventional Translation of C9ORF72 GG…

Authors

Tammaryn Lashley,John Hardy,Adrian M. Isaacssend emailSee Affiliations

Summary

A noncoding repeat expansion in the C9orf72 gene is the most common genetic cause of frontotemporal dementia and amyotrophic lateral sclerosis. In this issue of NeuronAsh et al., 2013 show that despite being noncoding the repeats are translated, leading to widespread neuronal aggregates of the translated proteins.

C9orf72がどのようにして ALSの発症に関与しているかはわかっていませんが、これまで 2つのメカニズムが推測されていました。

① gain of function

筋緊張性ジストロフィーのように noncoding lesionの異常な反復配列がみられる疾患では、機能獲得を起こすことが知られています。こうした疾患では、転写された repeat RNAが核に RNA fociという凝集体を形成します。RNA fociは RNA結合蛋白を独占してしまい、RNA結合蛋白の喪失が最終的に疾患を発症させます。C9orf72患者において RNA fociの存在が報告されています。

② loss of function

C9orf72は、Rab-GTPaseを活性化する GDP/GTP exchange factors (GEFs) である DENN蛋白との構造上の類似性から、小胞輸送に関与しているのではないかと推測されています。C9orf72の機能喪失を支持する知見として、 GGGGCC反復配列を含む転写産物レベルが患者の脳で低下していることが挙げられます。

今回、Ashらにより、第 3の仮説が登場しました。

③ RAN translation

Huntington病や一部の脊髄小脳失調症のように CAGリピートがみられる疾患において、開始コドンを介さないリピート関連翻訳 (repeat-associated non-ATG translation; RAN translation) がみられることが近年報告されました。RAN translationが起きるには、最低 58個の CAGリピートが必要で、RAN翻訳産物は凝集体を形成します。

Ashらは、C9orf72の CCCCGG配列で RAN translationが起こっているか調べるため、poly-(glycine-proline), poly-(glycine-alanine), poly-(glycine-arginine) に対する抗体を作製し、C9orf72変異 ALS患者の神経組織で免疫染色しました。すると、しばしば Cporf72変異 ALS患者で認められる p62陽性/TDP-43陰性封入体と似たような形状・分布で C9RANT陽性神経凝集体が染色されました。

“Previews” ではこのように、非常にわかりやくポイントが示されていました。そして実際の論文は下記です。

Unconventional Translation of C9ORF72 GGGGCC Expansion Generates Insoluble Polypeptides Specific to c9FTD/ALS

Neuron, Volume 77, Issue 4, 639-646, 12 February 2013
10.1016/j.neuron.2013.02.004

Referred to by: RANTing about C9orf72

Authors

  • Highlights
  • C9ORF72-expanded GGGGCC repeat RNA undergoes unconventional translation
  • C9ORF72 RAN translation product accumulates in insoluble inclusions in the brain
  • Inclusions are specific to c9FTD/ALS and not in other neurodegenerative disorders
  • C9ORF72 RAN translation peptides maybe a potential biomarker and therapeutic target

Summary

Frontotemporal dementia (FTD) and amyotrophic lateral sclerosis (ALS) are devastating neurodegenerative disorders with clinical, genetic, and neuropathological overlap. Hexanucleotide (GGGGCC) repeat expansions in a noncoding region of C9ORF72 are the major genetic cause of FTD and ALS (c9FTD/ALS). The RNA structure of GGGGCC repeats renders these transcripts susceptible to an unconventional mechanism of translation—repeat-associated non-ATG (RAN) translation. Antibodies generated against putative GGGGCC repeat RAN-translated peptides (anti-C9RANT) detected high molecular weight, insoluble material in brain homogenates, and neuronal inclusions throughout the CNS of c9FTD/ALS cases. C9RANT immunoreactivity was not found in other neurodegenerative diseases, including CAG repeat disorders, or in peripheral tissues of c9FTD/ALS. The specificity of C9RANT for c9FTD/ALS is a potential biomarker for this most common cause of FTD and ALS. These findings have significant implications for treatment strategies directed at RAN-translated peptides and their aggregation and the RNA structures necessary for their production.

C9orf72において RAN translationがないか調べるため、著者らはまず poly-(glycine-proline), poly-(glycine-alanine), poly-(glycine-arginine) に対するポリクローナル抗体 (抗C9RANT抗体) を作製しました。論文の figure 1Aを見ると、なぜこの組み合わせのポリアミノ酸を調べなければいけないかがよくわかります。”GGGGCC” 反復のフレームシフトによって出来るアミノ酸が変わってくるからですね。。

figure1A

Figure. 1A

次に、著者らは作製された抗体を検定し、poly-(glycine-proline) peptideに対する抗体を用いるのが最も良いことを確認しました。

それから、ALSないし前頭側頭葉変性症 (FTLD) 患者の小脳組織を抽出し、Western blot及び dot blotを行いました。その結果、C9orf72変異のある患者ではバンドが検出された一方で、変異のない患者ではバンドは検出されませんでした。

さらに小脳組織から得られた pre-mRNAの塩基配列を調べると、開始コドンと GGGGCC配列の間に複数の終止コドンがあることがわかりました。したがって、GGGGCC配列は開始コドン (ATG) によって翻訳されていないことがわかりました。つまり、GGGGCCは開始コドンを介さない翻訳 (=リピート関連翻訳) が行われていることになります。

続けて免疫組織化学的評価をしました。C9orf72変異 ALSでは、TDP-43陰性ユビキチン陽性ないしユビキチン結合蛋白 (p62, ubiquilin-2) 陽性封入体が出現することが知られています。これらの封入体と、C9RANT抗体陽性の神経細胞質/核内封入体は形態的に似通っていました。抗 C9RANT抗体に反応したのは、灰白質および神経内封入体のみで、血管内皮細胞、平滑筋細胞、白質、グリアでは反応しませんでした。

C9RANT陽性封入体が脳内のどこに出やすいか、30症例で調べたのが Figure 2Qです。

Figure. 2Q

Figure. 2Q

C9RANT陽性封入体が最も豊富に見られたのは、p62陽性封入体がみられる小脳でした。しかし、p62陽性封入体とは異なり、外側膝状体や内側膝状体でも検出されました。

C9RANT陽性封入体は、C9orf72変異を伴わない FTLD/ALSや他の変性疾患 (アルツハイマー病、レビー小体病、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症) では検出されませんでした。トリプレットリピート病 (ハンチントン病、脊髄小脳失調症 3型、球脊髄性筋萎縮症) では、p62陽性封入体が検出された一方で、C9RANT陽性封入体は検出されませんでした。

また、C9orf72変異を伴う患者において、骨格筋、末梢神経、後根神経節、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、精巣を調べましたが、精巣のセルトリ細胞を除いて、C9RANT陽性封入体は検出されませんでした。

 著者らは、C9orf72に対する髄液の immunoassayが進歩すれば、疾患の活動性や進行に対するマーカーとして使えるのではないかと考えております。

C9orf72は ALSにおけるホットトピックスということもあり、どんどんと知見が積み重なっています。今回の C9RANTは、分子メカニズムという観点からはかなり意義のある報告です。しかし、知見が積み重なるにつれてますます問題が複雑化している感もあります。

(2013.3.8 追記 )

ブログ “First Author’s” に、この領域の研究著者による解説が載っていましたので紹介しておきます。

前頭側頭葉変性症および筋萎縮性側索硬化症の原因である非翻訳領域のGGGGCCリピート配列はジペプチドリピートタンパク質に翻訳され脳に蓄積する

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C9orf72

By , 2012年4月10日 8:14 AM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) における C9orf72遺伝子イントロン領域の GGGGCC 6塩基リピートについて以前紹介しましたが、Lancet Neurlogy 2012年4月号に興味深い論文が出ていました。

Frequency of the C9orf72 hexanucleotide repeat expansion in patients with amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal dementia: a cross-sectional study

C9orf72遺伝子変異にはかなり人種差があるようで、フィンランド人 (Finnish) では孤発性 ALSの 21.1%を占めますが、その他ヨーロッパや米国の白人では 7%, ヒスパニックでは 8%, 黒人では 4%程度に変異がみられるそうです。一方で、米国原住民、アジア人の孤発性 ALSにはこれらの変異は見つかりませんでした。家族性 ALSについては日本人で 1例遺伝子変異が同定された症例があるようです。

ハプロタイプ解析の結果から、どうやらこの遺伝子変異には約 1500年前 (おそらく 100世代前) に共通の祖先が存在することが明らかになりました。

この遺伝子変異の浸透率は、35歳以下ではほぼ 0%, 58歳では約 50%, 80歳ではほぼ 100%と年齢依存性があるようです。原因は不明ですが、論文中では「年齢依存性の遺伝子座のメチル化」「何らかの遺伝因子」を推測しています。

C90rf72遺伝子キャリアの臨床像としては、やや女性に多く、家族性で、球麻痺型が多いようです。

この論文の limitationとしては、いくつかの地域でサンプルサイズが小さいこと、今回調べた症例で染色体 9p21以外のハプロタイプも見つかる可能性があること、浸透率を過大評価した可能性があること、家族性と孤発性の判断が問診によること、などが挙げられます。

今回の論文で、日本人にはこの遺伝子異常が少ないと推測されます。日本人における孤発性 ALSの原因探しの道程は、まだ長そうです。また、研究が遺伝子解析先行なので、分子レベルでの疾患メカニズムの解明も待たれます。

ちなみに、同じく Lancet neurology 2012年4月号の “Comment” で、この論文を扱っていました。

C9orf72 repeat expansions in patients with ALS and FTD

注目を集めている分野であることは間違いないと思います。

(今回のブログ記事では、同じ遺伝子変異が原因となる前頭側頭型認知症 (Frontotemporal dementia; FTD) については触れませんでした。興味のある方は、論文本文を読んで頂ければと思います)

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最近の医学論文 前編

By , 2017年2月1日 6:21 PM

なんとか2月の3講演のスライドを完成させ、和文総説も前倒しで終えました。ガイドラインの資料もほぼ完成して、委員のチェックが終わればパブコメです。

今回の論文チェックは 1ヶ月分だから楽かなとおもったら、面白い論文が多すぎて、2回に分けました。

Ocrelizumab versus Interferon Beta-1a in Relapsing Multiple Sclerosis. (2016.12.21 published online)

多発性硬化症 (一次性進行型を除く) に対して、オクレリズマブとインターフェロンβ1aを比較した 2つの第三相試験 (OPERA I/II) をまとめた報告。Double-dummyで double-blindとのこと。オクレリズマブは、CD20陽性 B細胞に対するモノクローナル抗体である。オクレリズマブ群は、600 mgを 24週間毎に経静脈投与した。一方、インターフェロンβ1a群は 44 ug週 3回の皮下注射を 96週間続けた。その結果、主要エンドポイントである年間再発率は OPERA I試験でオクレリズマブ群 0.16, インターフェロンβ1a群 0.29 (オクレリズマブ群で 46%低い, p<0.001) で、OPERA IIでオクレリズマブ群 0.16, インターフェロンβ1a群 0.29 (オクレリズマブ群で 47%低い, p<0.001) であった。両試験を併せると、12週間後に障害が進行した患者の割合は、オクレリズマブ群でインターフェロンβ1a群に比べて有意に低かった (9.1 v.s. 13.6%, hazard ratio 0.60, 95%信頼区間 0.45~0.81, p<0.001)。また24週間後についても同様であった (6.9 v.s. 10.5%, hazard ratio 0.60, 95%信頼区間 0.43~0.84, p=0.003)。ガドリニウム造影病変の平均個数は、オクレリズマブ群で 0.02個、インターフェロンβ1a群で 0.42個であった。注射関連反応がオクレリズマブ群の 34%でみられた。重症感染は、オクレリズマブ群 1.3%で、インターフェロンβ1a群 2.9%であった。悪性腫瘍はオクレリズマブ群 0.5%で、インターフェロンβ1a群 0.2%だった。

ベースラインで半数以上の患者の EDSSが 0という、比較的軽症者を対象とした試験。経静脈投与の薬剤の方が、皮下注射で用いるインターフェロンなどより効果が高いというのは、他の薬剤でもそうなので驚くような結果ではない。むしろ驚いたのは次の文章。スポンサーとズブズブの臨床試験じゃないか・・・。”The sponsor, F. Hoffmann–La Roche, designed the trial in consultation with members of the ORATORIO trial steering committee. Data were collected by the site investigators, queries were responded to by site personnel, and the data were analyzed by the sponsor; the aggregated and individual results of the participants were reviewed by the sponsor and steering committee.”, “A subgroup of authors, which included academic authors and authors who are employees of the sponsor, drafted the manuscript, and all the authors approved the final version and made the decision to submit the manuscript for publication. Medical-writing assistance was funded by the sponsor.” という記載。あと、注射関連反応が 34%にみられた (一方でインターフェロンβ1aは10%) ということは、そこで盲検化が崩れたりはないのだろうか・・・。

Ocrelizumab versus Placebo in Primary Progressive Multiple Sclerosis. (2016.12.21 published online)

多発性硬化症の一次進行型を対象に、オクレリズマブとプラセボを比較した第三相試験。732名の一次進行型多発性硬化症患者を、2:1でオクレリズマブ 600 mgかプラセボに割り付け。薬剤の経静脈投与は 24週間ごとに、少なくとも 120週間もしくは事前に定められた数の障害進行イベントが起こったときまでとした。主要エンドポイントは 12週間の時点で障害の進行が確認された患者の割合とした。その結果、12週での障害が進行した患者の割合は、オクレリズマブ群 32.9%で、プラセボ群 39.3%だった (Hazard ratio 0.76, 95%信頼区間 0.59~0.98, P=0.03)。24週ではオクレリズマブ群 29.6%で、プラセボ群 35.7%だった (Hazard ratio 0.58, 95%信頼区間 0.58~0.98, P=0.04)。120週での timed 25-foot walk (25フィート歩行の時間) の悪化は、オクレリズマブ群 38.9%で、プラセボ群 55.1%だった (P=0.04)。T強調像での病変は、オクレリズマブ群で 3.4%減少に対し、プラセボ群では 7.4%増加した。

一次進行型の多発性硬化症に効果が証明された薬剤は存在しないので、もし有効であれば凄いことだと思う。同じく CD20阻害薬であるリツキシマブは、有効性を証明できなかった (OLYMPUS trial) とのこと。この臨床試験も、同じ号に掲載されたインターフェロンβ1aとの比較同様、次の文句が並ぶ。”The sponsor, F. Hoffmann–La Roche, designed the trial in consultation with members of the ORATORIO trial steering committee. Data were collected by the investigators and analyzed by the sponsor; the results were reviewed by the sponsor and steering committee.” “The first draft of the manuscript was written by the first and last authors, with medical writing assistance funded by the sponsor.”

An observational study of alemtuzumab following fingolimod for multiple sclerosis. (2017.1.10 published online)

フィンゴリモドを中止して 12ヶ月以内にアレムツズマブを開始すると、多発性硬化症の疾患活動性が高くなることを示唆する 9症例の報告。アレムツズマブに先行してフィンゴリモドが投与されていた 36例中 9例なので、実は多いのかもしれない。

多発性硬化症の新薬は次々と生まれていて、組み合わせ次第では様々なことが起きるのではないかという気がする。これは氷山の一角ではないだろうか。

Severe B-cell-mediated CNS disease secondary to alemtuzumab therapy. (2017年2月号)

41歳男性にアレムツズマブの初回投与を行った後、症状の急激な増悪があり、頭部MRIで造影される新規病変が 20ヶ所出現していた。メチルプレドニゾロン 7000 mgの静脈内投与を行ったが改善なく、免疫吸着療法が奏功した。病勢を安定させるため、リツキシマブを追加した。その後、症状は安定し、新規病巣の出現もない。

アレムツズマブを使う機会はそうそうないけれど、こういうこともあるのかと。しかし、そこでリツキシマブを使うとは、かなり勇気が必要だっただろうなぁ・・・。

Soluble CD27 Levels in Cerebrospinal Fluid as a Prognostic Biomarker in Clinically Isolated Syndrome. (2017.1.3 published online)

臨床的イベントが 1回のみで、まだ多発性硬化症と呼べないものを clinically isolated syndromeと呼ぶが、将来多発性硬化症になる患者ではそうでない患者と比べて髄液中の可溶性 CD27が高いという報告。

確かにそうかもしれないけれど、個々の症例で将来多発性硬化症を発症するかどうかの予測に使えるほどはっきり分離できる結果ではないと思った。

MOG antibody-positive, benign, unilateral, cerebral cortical encephalitis with epilepsy. (2017.1.16 published online)

東北大学からの報告。てんかんを伴う片側性皮質性脳炎で抗MOG抗体を測定したところ陽性であった。そこで、24例の原因不明の成人ステロイド反応性脳炎で抗MOG抗体を測定した。その結果、さらに 3名が抗MOG抗体陽性であった。全例男性で、年齢中央値 37歳 (23~39歳)、主要な症状は全般性てんかん発作であった。2例では片側性の良性視神経炎があった。全例、頭部MRIで片側の大脳皮質が FLAIRで高信号となっており、それらは腫脹し、SPECTでの血流増加に合致した所見であった。髄液では、単核球優位の中等度の細胞数増多と軽度の蛋白上昇があったが、ミエリン塩基性蛋白の上昇はなかった。他の抗体は陰性で高用量のメチルプレドニゾロンが有効で、MRIでの病巣は消失した。再発はなかった。

頭部MRIで片側皮質の FLAIR高信号を伴う自己免疫性脳炎では、抗MOG抗体の測定が必要・・・というのは勉強になった。

Anti-LGI1 encephalitis is strongly associated with HLA-DR7 and HLA-DRB4. (2016.12.27 published online)

悪性腫瘍非合併の抗LGI1抗体による脳炎患者 25名の HLAを調べたところ、HLA-DR7が 88% (コントロール群 19.6%)、HLA-DR4が 100% (コントロール群 46.5%) であった。著者らは、HLA-DR7や HLA-DR4を欠く抗LGI-1抗体脳炎では、悪性腫瘍の疑いがあるかもしれないとしている。

Characteristics in limbic encephalitis with anti-adenylate kinase 5 autoantibodies. (2017.1.6 published online)

抗AK5抗体陽性脳炎 10例の纏め。平均年齢中央値 64歳 (57~80歳)、けいれん発作を伴わない前向性健忘、ときどき無力症 (asthenia) や気分障害の先行がある。癌との関連はない。全例、MRIで両側の海馬以上信号があった。髄液検査では、軽度の細胞数増多、IgG index上昇、オリゴクローナルバンド、タウ上昇 (Aβやリン酸化タウは正常) がみられた。1例を除き、免疫療法は効果がなく、高度な前向性健忘が残存した。2例では重度の認知機能低下が進行した。MRIでその後海馬萎縮がみられた。In vitroでは 抗AK5抗体の役割を同定することはできなかった。

高齢者の前向性健忘を伴う脳炎で、当初 FLAIRで海馬の異常信号があり、やがて萎縮するという、似たような症例の経験がある。この報告と異なっていたのは、てんかんを合併していたこと。昔働いていた病院なのだけど、この疾患だったのかどうか気にかかる。

Efficacy, safety, and tolerability of lacosamide monotherapy versus controlled-release carbamazepine in patients with newly diagnosed epilepsy: a phase 3, randomised, double-blind, non-inferiority trial. (2016.11.24 published online)

新規抗てんかん薬ラコサミドの第三相試験。16歳以上の新規てんかん患者が対象。介入群はラコサミド (100→200 mg/day, 発作があれば max 600 mg/dayまで増量)、対照群はカルバマゼピン徐放錠 (200→400 mg/day, 発作があれば max 1200 mg/dayで増量)。主要エンドポイントは 6ヶ月連続で発作消失。6ヶ月の治療を継続できたのは、ラコサミド群 74% (327名)、カルバマゼピン徐放錠群 70% (308名) だった。6ヶ月間の発作抑制は、ラコサミド群 90%、カルバマゼピン徐放錠群 91%で、絶対リスク差 -1.3% (95%信頼区間 -5.5~2.8%)、だった。ラコサミドはカルバマゼピン徐放錠に非劣性だった。

有害事象の総数は両群でそれほど大きな違いはないが、ラコサミド群では浮動性めまいが多く、カルバマゼピン徐放錠では倦怠感、皮疹、傾眠、肝機能障害が多い傾向にあった。

副作用

副作用

Monotherapy treatment of epilepsy in pregnancy: congenital malformation outcomes in the child. (2016.11.7 published online)

妊婦への抗てんかん薬単剤療法の Cochrane reviewが公開されている。包含基準を満たした 50の臨床試験のうち、31試験で meta-analysisをおこなった。その結果、大奇形のリスクが最も低かったのはレベチラセタムとラモトリギンであった (キモの部分は “There was no increased risk for major malformation for lamotrigine (LTG). Gabapentin (GBP), levetiracetam (LEV), oxcarbazepine (OXC), primidone (PRM) or zonisamide (ZNS) were not associated with an increased risk, however, there were substantially fewer data for these medications.For AED comparisons, children exposed to VPA had the greatest risk of malformation (10.93%, 95% CI 8.91 to 13.13).”)。しかし、特異的な奇形についてのデータには乏しく、内科医はリスクと治療の有効性について、患者とよく話し合うべきである。(日本語要約)

薬剤選択について従来の結論と大きな違いはないが、こういう質の高い研究で示された意義は大きい。さまざまな抗てんかん薬の直接比較をおこなっているのだが、抗てんかん薬は種類が多く、比較には様々な組み合わせがあるため、解析を見ると Comparison 66までおこなっていて、大変な努力が必要な研究だと思った。

Rhabdomyolysis Associated with Levetiracetam Administration. (2016.12.31 published online)

レベチラセタム静脈内投与後に横紋筋融解症をきたした 27歳女性の報告。レベチラセタム単剤で治療を始めた後に出現し、無症候性で血清 CKの最大値は 49539 U/lだった。これまでレベチラセタムに関連した横紋筋融解症は 4例報告されている。全例 13~29歳で、CKは 986~29136 U/lだった。4名中 3名では併用薬があり、単剤だった 1名の CKは 986 U/lだった。

よく使う薬剤なので、極めて稀ではあっても、知っておきたい副作用。

Glucocorticoid-associated worsening in reversible cerebral vasoconstriction syndrome. (2017.1.17 published online)

可逆性脳血管攣縮症候群は、繰り返す雷鳴頭痛を呈し、約 1/3~1/2に虚血や出血を合併する。中枢神経原発血管炎 (primary angiitis of the CNS; PANCS) との鑑別を要する。mRS 3点を超えるアウトカム不良は 5~14%とされている。著者らは、後方視的に臨床的あるいは画像上の増悪をきたす要因を調べた。その結果、ステロイドを投与された患者の 37%で臨床的な悪化があった (ステロイド非投与では 5%)。また、臨床的悪化のあった患者で退院時の mRS 4-6の予後不良の割合は、ステロイド投与群で ステロイド投与群 47%、非投与群 17%だった。ベースラインの重症度で、ステロイド投与群が非投与群より軽症であったわけではなく (むしろベースラインの画像ではステロイド投与群の 35%が正常で、非投与群では全例異常があった)、ステロイド投与から症状増悪まで、ほとんどが 2日以内だった。SSRIで症状や画像上の悪化がみられたが、退院時の障害スコアへの影響はなかった。カルシウム拮抗薬やトリプタン製剤は、頭痛や増悪の予防に効果はなかった。

後方視的な研究だが、かなり説得力のある報告である。PANCSだった困るという理由で安易にステロイドを使ってしまうと、予後を悪化させる恐れがあるというのは、臨床医にとってジレンマとなるかもしれない。

Genetic epidemiology of amyotrophic lateral sclerosis: a systematic review and meta-analysis. (2017.1.5 published online)

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の遺伝子についての systematic reviewおよび meta-analysisをおこない、ヨーロッパ人とアジア人を比較している。ヨーロッパ人では C9orf72変異が多く、日本人では SOD1変異が多い。

それぞれの頻度については、図を見ると一目瞭然。

Genetic epidemiology of ALS

Genetic epidemiology of ALS

Pain in amyotrophic lateral sclerosis. (2016.12.8 published online)

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) と疼痛についての総説。ALSでは様々なタイプの疼痛がある。頻度については研究によりばらつきが大きい。軽度のことが多いが、中等度以上の疼痛もみられる。メカニズムとしては、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛、中枢性感作がある。治療法について、2013年のコクランレビューでは RCTなしとしている。著者らは、疼痛で用いる薬剤を次のように推奨している。

・神経障害性疼痛 (四肢):Gabapentin (First line), Pregabalin (First line), 三環系抗うつ薬 (First line)

・筋痙攣 (下肢、手、腹部):Quinine sulphate (First line), Gabapentin (Second line), Mexiletine (First line), Dronabinol (Second line), Levetiracetam (First line)

・痙性 (下肢):Levetiracetam (First line), Baclofen髄注 (Second line),Baclofen内服/tizanidine/dantrolene/benzodiazepines (NA)

・体動困難に起因する疼痛:NSAIDs and paracetamol (First line), Opioids (Second line), Cannabis (Second line)

・四肢の麻痺 (肩痛, 関節痛):リドカイン・ステロイドの関節内注射 (First line)

ALSと疼痛

ALSと疼痛のタイプ

ALSで疼痛を訴える患者さんはたまにいるので読んでみたけれど、やはりわかっていないことが多いみたい。治療薬としては NSAIDs/アセトアミノフェンもしくは神経障害性疼痛についての薬剤がメインになるというのは予想通り。

後編】へ続く

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最近の医学論文

By , 2016年8月18日 6:51 PM

例によって、最近の論文が中心の備忘録です。

Bortezomib Treatment for Patients With Anti-N-Methyl-d-Aspartate Receptor Encephalitis

抗NMDA受容体脳炎は、治療に難渋することが少なくないが、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブ (商品名:ベルケード) が奏功した 2例の報告。

症例 1は 30歳代前半の黒人女性。卵巣奇形腫がみつかり手術、それに加えて血漿交換、リツキシマブ、シクロフォスファミド、ステロイド大量療法で改善なし。7ヶ月人工呼吸器管理となっていた。CD19陽性細胞は消失。血漿交換、ステロイド、免疫グロブリン大量療法を受けた後、わずかに改善した。ボルテゾミブ 1.3 mg/m2を 1, 4, 8, 11日目に皮下注射 (アシクロビル, cortimoxaoleを併用) したところ、忍容性は良好で有害事象もなかった。数カ月後、症状や抗体価は著明に改善し、軽度の高次脳機能障害のみ後遺症として残存した。

症例 2は、20歳代前半の白人女性。卵巣奇形腫はみつからなかった。血漿交換をうけて改善し、職業訓練に復帰することができた。しかし、20ヶ月後、再発。血漿交換及びリツキシマブは効果がなかった。CD19陽性細胞は消失。ステロイド、血漿交換、免疫グロブリン大量療法は効果がなかった。ボルテゾミブは症例 1と同じレジメンで使用したところ、忍容性は良好で、有害事象もなかった。後遺症として軽度の記憶障害などを残すのみで著明に改善し、再発もない。

以下個人的な感想。抗NMDA受容体脳炎について、2011年の Lancet Neurologyに書かれた総説の治療戦略はよくまとまっているけれど、これほど効果がありそうなら、将来的にはボルテゾミブも加わってくるかもしれない。その前に、きちんとした臨床試験が必要だけど。

A clinical approach to diagnosis of autoimmune encephalitis.

自己免疫性脳炎を起こす疾患と自己抗体や診断基準がまとまっていて読みやすい。ただ、figure 1の診断アルゴリズムは、各種自己抗体の結果がでるのに数週間かかることを考えると、臨床的には使えないかもしれない。自己抗体とそれに対応する疾患 (table 1) は使えそうなので備忘録として貼っておく。

自己抗体

自己抗体

International consensus guidance for management of myasthenia gravis

重症筋無力症の “international consensus guidance”。エキスパートの意見のためかガイドラインではなくてガイダンスという表現が使われている。「寛解」などいくつかの用語の定義が 示された後に、治療法が箇条書きで書かれている。重症筋無力症が heterogeneousであるためか、薬剤の投与量には言及されていないが、治療戦略を立てる上での基本となることが纏まっている。

Lack of KIR4.1 autoantibodies in Japanese patients with MS and NMO

多発性硬化症や視神経脊髄炎に対する KIR 4.1抗体について、日本からの報告。この抗体は、当初すごく注目されたけれど、再現性が示されていない。日本人を対象に ELISAと LIPS (luciferase immunoprecipitation system) で調べたけれど、やはり使えなさそうだという結論。

KIR4.1

KIR4.1

KIR4.1については、2016年春の講演で少し触れたので、その時のスライドを貼っておく。

多発性硬化症 スライド1

多発性硬化症 スライド1

多発性硬化症 スライド2

多発性硬化症 スライド2

多発性硬化症 スライド3

多発性硬化症 スライド3

Multicentre comparison of diagnostic assay: aquaporin-4 antibodies in neuromyelitis optica

視神経脊髄炎関連疾患における抗アクアポリン4抗体の assay法についての論文。診断精度の問題で、新ガイドラインでは cell-based assayを推奨しているけれど、specialist centerでは免疫組織化学法やフローサイトメトリーも同じくらいだという結果。Table 2に assay法の一覧と、figure 5に診断精度の図が纏まっている。

診断精度の図

診断精度の図

Progressive Brain Atrophy in Super-refractory Status Epilepticus

超難治性てんかん重積患者に伴う脳萎縮を調べるため、発症 2週間以内に撮った MRIと、それから 1週間以上あけて 6ヶ月以内に撮った MRIを比較した。方法として、5 mmスライスのFLAIR画像で脳室と脳の比 (ventricular brain ratio; VBR) を調べた。Inclusion criteriaを満たしたのは 19名であり、てんかん発作を抑制するために中央値 13日間の麻酔薬管理を必要とした。VBRの変化率の中央値は 23.3%、脳萎縮は麻酔薬の投与期間に相関していた。

Psychotic disorders induced by antiepileptic drugs in people with epilepsy

抗てんかん薬には、副作用として精神症状 (抗てんかん薬誘発の精神症状 antiepileptic drug induced psychotic disorder; AIPD) が出現するものがある。著者らは、どのような患者で精神症状をきたしやすいかを調べた。てんかんでも精神症状をきたすことがあるので、抗てんかん薬による精神症状と診断するためのアルゴリズムは figure 1、精神疾患の診断基準は table 1の通りとした。その結果、抗てんかん薬誘発の精神症状は、女性、側頭葉病変、レベチラセタムの使用で有意に多かった (特にレベチラセタムのオッズ比は 21.676!)。カルバマゼピンは内服により逆に精神症状が減少した。

抗てんかん薬と精神症状

抗てんかん薬と精神症状

レベチラセタムは初回から治療量で使える薬剤で、薬剤相互作用や皮疹などの副作用が少なく、使われる頻度が非常に増えているけれど、精神症状はてんかんを治療する医師は絶対知っておかないといけない副作用だと思う。

Randomized Trial of Thymectomy in Myasthenia Gravis.

対象は 18歳~65歳、MGFA分類 II-IV, 発症 5年以内で抗AChR抗体陽性の重症筋無力症患者。介入は胸腺切除術+プレドニゾンの隔日内服で、対照はプレドニゾンの隔日内服。主要アウトカムは、 3年後の QMGスコア (ブラインド化して評価) と 3年間に要したプレドニゾンの平均用量 (time-weighted)。

介入群 (胸腺切除+プレドニゾン) では、対照群 (プレドニゾン) と比べ、QMGスコアが低く (6.15 vs. 8.99, P<0.001)、プレドニゾンの平均投与量も少なかった (隔日 44 mg vs. 60 mg, P<0.001)。また、介入群の方が免疫抑制剤アザチオプリンを必要とした症例が少なく (17% vs. 48%, P<0.001)、増悪による入院も少なかった (9% vs. 37%, P<0.001)。治療による合併症に有意差はなかった。

主要アウトカム

主要アウトカム

抗AChR抗体陽性の重症筋無力症で胸腺切除術を行うのは一般的だが、実はこの論文が、初めて行われた RCTであることを知って驚いた。75年前、胸腺腫のない重症筋無力症に対して胸腺切除術の効果が報告された後、観察研究はいくつもあるが、 RCTは行われていなかったらしい。抗AChR抗体陽性の重症筋無力症に胸腺切除術が有効であるという RCTでのエビデンスを示した点で、歴史的な論文になると思う。なお、抗MuSK抗体陽性の重症筋無力症は別なので要注意。

Spt4 selectively regulates the expression of C9orf72 gene sense and antisense mutant transcripts

ALSと C9orf72の話は、これまで何度もブログで紹介した。転写延長因子 Spt4の阻害により、C9orf72のセンスとアンチセンスの伸長した転写産物や転写された 2量体ペプチド (DRP) を減少させ、動物モデルでは神経変性を抑えることができた。Spt4のヒトオルソログである SUPT4H1のノックアウトにより、患者細胞でやはりセンスとアンチセンス RNA凝集体の産生低下と DRPタンパク減少がみられた。

この論文の通りだとすると、SUPT4H1は C9orf72異常の ALSでは治療法開発のターゲットの一つはなるのかもしれない。それ以外の原因による ALSでどうなのかはわからないけれど (日本人では C9orf72の GGGGCC反復伸長による ALSは少ない)。

Enteroviral Postencephalitic Parkinsonism With Evidence of Impaired Presynaptic Dopaminergic Function

日本脳炎、セントルイス脳炎、西部ウマ脳炎、東部ウマ脳炎、ウエストナイル熱、EBウイルス、インフルエンザA型、そのほかコクサッキーBやエコーウイルスのようなエンテロウイルス後に起こることが報告されている。これらのウイルスは、脳皮質、視床、脳幹、脊髄を侵す一方で、黒質を好んで侵すことも報告さている。黒質病変による脳炎後パーキンソニズムは、これまで 1915~1928年に流行した嗜眠性脳炎 (von Economo脳炎) で報告されてきた。

今回、著者らはエンテロウイルスによりレボドパ反応性のある脳炎後パーキンソニズムをきたした症例の MRIや PETを評価し報告した。初回の頭部MRIでは、脳幹のびまん性の異常信号がみられたが、1年後に撮像した MRIでは、黒質の非対称性 (右優位) の破壊的変化がみられた。Fluorine F 18–labeled fluorodopa PETでは、線条体に持続性の取り込み低下がみられた。著者らによると、脳炎後パーキンソニズムでドパミン系のシナプス前機能の障害を証明した研究は、この論文が初めてである。

Time- and Region-Specific Season of Birth Effects in Multiple Sclerosis in the United Kingdom

生まれた月と多発性硬化症の発症に相関があるというイギリスでの研究。日照との関連が推測されている。

誕生月と多発性硬化症

誕生月と多発性硬化症

多発性硬化症の再発の季節性については、これまで色々と指摘されている (以前講演で使ったスライドを下に示す)。生まれた月まで関連が・・・というのが、もし本当ならばびっくり。

多発性硬化症と緯度

多発性硬化症と緯度

Stroke outcomes with use of antithrombotics within 24 hours after recanalization treatment

今回著者らは、再灌流療法後の抗血栓療法を 24時間以内に行う早期開始 (early intiation) と 24時間以降に行う通常管理 (standard management) を前向き組み入れ試験で比較した。抗血栓療法をどのように行うかは脳卒中治療医に任せたが、多くの症例で初回投与時には loading dose (アスピリン 300 mg) が用いられた (抗血小板薬 2種類併用や抗凝固薬の使用もあり)。

患者の内訳は、経静脈治療 34%, 経動脈治療 (血管内治療) 32%, 経静脈+経動脈治療 34%であった。早期開始群では全出血は少なかったが、症候性出血や機能予後 (mRS) は早期開始と通常管理で差はなかった。再灌流 12時間以内の超早期開始では、出血性変化のオッズ比の増加はなかった。再灌流の方法による臨床的アウトカムに差はなかった。

再灌流と抗血栓療法

再灌流と抗血栓療法

現在、血栓溶解療法を行った後、基本的には 24時間は抗血栓療法を行わないのが一般的で、日本のガイドラインにもそのように記されている。一方で、抗血小板薬を内服をしている患者に血栓溶解療法をした方が、内服していなかった患者に比べて出血リスクは高くなるが、機能予後は良かったという報告もある。今回の研究は、再灌流療法後に抗血栓療法を始めるタイミングについて、一石を投じるかもしれない。ただ、発症から治療開始までの時間や心房細動の有無など大事な項目でベースラインの群間に差があるのが気になるところ。

Predictive value of ABCD2 and ABCD3-I scores in TIA and minor stroke in the stroke unit setting.

一過性脳虚血 (TIA) 後の脳卒中リスクを予測ツールとして、ABCD2 scoreなどは現在広く受け入れられており、一般の外来や救急外来では評価は確立している (scoreについての日本語解説はこちらを参照)。今回、脳卒中ケアユニット (stroke care unit; SCU) に入院した発症 24時間以内の TIAや minor stroke (NIHSS 4点未満) 患者を対象に前向きコホート研究で ABCD2や ABCD3-Iを評価した。ABCD2 scoreの感度・特異度は、過去のメタアナリシスと似た結果だった。個々のスコアをみると、年齢 (A)、血圧 (B)、糖尿病 (D) は早期あるいは 3ヶ月後の脳卒中と相関しなかった。一方で、臨床症状 (C)、症状持続時間 (D)、同側の頸動脈狭窄 (D)、拡散強調像高信号域 (D) は SCU settingにおいて重要であった。

ABCD3-Iと個々のコンポーネント

ABCD3-Iと個々のコンポーネント

Human neural stem cells in patients with chronic ischaemic stroke (PISCES): a phase 1, first-in-man study.

不死化した神経幹細胞 CTX03を用いて、オープンラベルで安全性と忍容性を調べた第 1相試験。CTX03は、中大脳動脈閉塞モデルのラットでは、用量依存的な運動感覚機能の改善が確認されている。

対象は NIHSS 6点以上、mRS 2-4点、脳梗塞発症から 6~60ヶ月経った 60歳以上の男性。頭蓋骨に穴を開け、脳梗塞と同側の被殻に投与した。臨床データと頭部画像を 2年間追跡した。主要評価項目は安全性 (合併症と神経学的変化) とした。

13名の男性 (平均 69歳、 60-82歳) が組み入れられ、 CTX-DPの投与を受けた。治療前の NIHSSの中央値は 7点 (6-8点) であり、脳卒中からの平均経過期間の平均は 29ヶ月 (SD 14) だった。3名の男性が皮質下梗塞のみで、 7名は右大脳半球の梗塞だった。免疫学的あるいは投与細胞による有害事象はなかった。その他、手技や併存疾患による有害事象があった。刺入部位付近の FLAIR高信号が 5名で認められた。2年後の NIHSSの改善は 0-5点 (中央値 2点) だった。

以下、個人的感想。慢性期脳梗塞に対する幹細胞治療は、2016年6月2日 Stroke誌に骨髄由来培養幹細胞 SB623の第 1/2相試験が発表されたばかりで、競争が過熱している。SB623も CTX03も baselineの NIHSSが 一桁後半で、改善効果は 2点程度という点は、単純比較はできないけれど効果は似ている印象を受ける。注意しなければいけないのは、両試験とも評価者がブラインド化されていない点である。オープンラベル試験で評価項目が NIHSSのようにソフトエンドポイントだと、結果に臨床試験担当者や被験者の意図が混入しやすい。また、いずれの製剤も頭蓋骨に穴を開けて培養細胞を注入しなければならず、それなりに侵襲はある。

一方で、本邦では静脈投与可能な製剤の治験が行われている。以前、2009年に本望先生の講演を聴いた時は効果としては期待できそうな印象を持ったが、ようやく形になってきているようだ。この治療のネックは患者本人から骨髄を採取しなければならない点だろう。こちらは、SB623や CTX03と異なり、急性期~亜急性期の脳梗塞が対象のようだ。

私は脳梗塞に対する幹細胞治療については全然詳しくないけれど、いくつかある方法のなかでネックとなってくるのは、(1) どのような細胞を用いるか (その都度患者由来の細胞から培養して作製するより、既成品の方が便利)、(2) どのような投与経路とするか (経静脈投与が望ましい)、(3) 薬価、なのではないかと思う。

NICE recommends ticagrelor with aspirin for three years post-MI

イギリスでは心筋梗塞治療のファーストラインとして、アスピリンに加えて ticagrelor 90 mg 1日 2回を 12ヶ月追加し、その後アスピリンを継続する施設が多い。NICEの新しいガイダンスの草稿では、12ヶ月以内に心筋梗塞の既往がある患者や心筋梗塞や脳卒中をさらに起こすリスクの高い状態が続く患者に対して、アスピリンに加えて ticagrelor 60 mg 1日 2回を 3年間続けることを推奨している。Ticagrelor 90 mgと 60 mgの間に中断が起きないようにすべきである。3年以上のアスピリンとの併用は、効果や安全性についてのデータが不十分であり推奨しない。

ちなみに、ACCとAHAも 2016年に共同で、冠動脈疾患後の抗血小板薬 2剤併用についてのガイドラインを出しており、JACCCirculationに掲載されている。

Recommendations for the Management of Strokelike Episodes in Patients With Mitochondrial Encephalomyopathy, Lactic Acidosis, and Strokelike Episodes

ミトコンドリア脳筋症の一つである MELASの脳卒中様症状についての総説。Arginineや citrullineによる治療などについて解説している。いずれも RCTは行われていないが、著者らは次のような治療を推奨している (文献的根拠に乏しく、expert opinionという印象)。

<Short-term Therapy>

脳卒中様発作に対しては、arginine hydrochlorideを loading doseで静脈内投与すべきである。Arginineの至適用量は不明だが、0.5 g/kgを症状発症 3時間以内に急速投与することが推奨される。脳卒中様発作が見られた時、画像診断が有用だが、そのために arginineの投与が遅れるべきではない。脳循環を保つため生理食塩水を急速投与すべきで、血糖値が正常なら代謝を正常化させるために可能な限り早くブドウ糖を含む輸液を投与すべきである。精神症状がある場合は、非痙攣性てんかん重積ではないか、脳波を評価すべきである。なぜなら、MELASでは精神症状の原因としてしばしばみられるからだ。

<Ongoing Therapy>

Arginineを急速投与した後、0.5 g/kgの 24時間持続投与を 3-5日間続ける。Arginineの維持量をどの程度続ければよいかの臨床的エビデンスはないが、ミトコンドリアの専門家の多くは少なくとも 3日間は続けることを推奨している。臨床症状が 3日以上続くようなら、卒中が進行しているか画像評価し、5日間 arginine治療を続けることを検討すべきである。嚥下の安全性が確認され、経口摂取ができそうなら、静脈内投与と同量 (1-to-1 dose) の L-arginine内服に移行するかもしれない。

<Prophylaxis>

MELASの患者が最初の卒中を経験したら、脳卒中様発作を減少させるため、予防的に arginineを投与すべきである。経口で投与量 0.15~0.30 g/kg/day 分3が推奨される。

Climate influence on Vibrio and associated human diseases during the past half-century in the coastal North Atlantic

温暖化に伴い、北大西洋や北海でビブリオが増えている。報道では生牡蠣を介した感染が懸念されている。日本の生牡蠣はどうなんだろう・・・。

Takayasu’s Arteritis

知り合いの医師らの報告が、New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載された。凄い!

Gastric Anisakiasis

日本からの報告が、同じく New England Journal of Medicineの IMAGES IN CLINICAL MEDICINEに掲載されたようだ。アニサキスの症例報告といえば、2013年7月18日に紹介した論文が面白かった。この論文も、figureに著者の胃にいるアニサキスの写真が載っていて有名 (論文内容の日本語紹介はこちら)。

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ALSモデルマウス

By , 2015年5月28日 6:25 AM

筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の研究には、SOD1変異マウスが用いられることが多いのですが、SOD1変異患者は孤発性 ALSと病理が異なるなど、本当にこのマウスが孤発性 ALSを代表しているのかどうかには議論があります。一方で、C9orf72のGGGGCC 6塩基反復配列伸長は、遺伝子変異が検出された ALS患者の中で最多を占め (ただし、日本人では稀)、更に孤発性ALSのほぼ全ての患者でみられる TDP-43病理を示します。そのため、孤発性 ALSの研究対象として非常に注目が集まっています。

2015年5月24日の Science誌に、C90rf72のGGGGCC 6塩基反復配列伸長を持つモデルマウスの作成に成功したという論文が掲載されました。

C9ORF72 repeat expansions in mice cause TDP-43 pathology, neuronal loss, and behavioral deficits

このマウスは、RAN translationにより生じるジペプチドリピート蛋白の封入体があり、TDP-43病理を示しました。また、前頭側頭葉変性症 (※しばしば ALSと同じ遺伝子が原因となり、ALSに合併することもある) でみられるような精神症状がみられました。

このモデルマウスにより、ALS研究が進むことを期待したいと思います。SOD1変異マウスで試した治療薬をこのマウスで試すとどうなるかなど、興味があります。

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第 56回日本神経学会学術大会

By , 2015年5月24日 9:34 AM

第 56回日本神経学会学術大会に行ってきました。久しぶりに楽しい総会でした。忘れないうちにメモを残しておきます。

5月21日(木)

昼頃に学会場に到着しました。チェックインをして、まずは腹ごしらえ。朱鷺メッセから 10分程歩いた所にある港食堂に決めました。ちょうど食事時で混んでいたのですが、近くに巨大テントがあって、そこに机と椅子がたくさんあったので、空くまで読書をして暇を潰しました。食事をしてから、学会場に向かいました。

学会では、Neurology in Asiaを聴きました。本当は「自己免疫が関与する内科・神経疾患の診断と治療」も聴きたかったのですが、同時刻だったので無理。普段聴けない話をと思って、こちらを参加しました。全て英語でのセッションでした。

Asian Neurology Forum 1

1. Nipah virus encephalitis

・マレーシアでのアウトブレイクを演者の Tan先生が報告した論文。豚から感染する。Fatal encephalitis due to Nipah virus among pig-farmers in Malaysia.

ニパウイルスはパラミクソウイルスの一種。Nipah virus: a recently emergent deadly paramyxovirus.

・疫学的には、symptomatic:subclinical=3.4:1

・臨床所見についての論文。Clinical features of Nipah virus encephalitis among pig farmers in Malaysia.

・抗体検査法について。Second generation of pseudotype-based serum neutralization assay for Nipah virus antibodies: sensitive and high-throughput analysis utilizing secreted alkaline phosphatase.

・MRI所見について。Nipah viral encephalitis or Japanese encephalitis? MR findings in a new zoonotic disease.

・治療について。リバビリンで死亡率が 54%から 32%にまで減少する。Treatment of acute Nipah encephalitis with ribavirin.

・モノクローナル抗体による治療も開発途中である。A neutralizing human monoclonal antibody protects against lethal disease in a new ferret model of acute nipahvirus infection.

・再発や遅発性発症のこともある。Relapsed and late-onset Nipah encephalitis.

・バングラデシュやインドなどでアウトブレイクを繰り返している。Nipah virus encephalitis.

・樹液を回収する桶を設置→コウモリが夜に飲みに来て汚染→人が回収して飲む、コウモリ→馬→人→人という感染経路もあるかも。

・Nipah virusと Hendra virusは、両者ともパラミクソウイルスの中の Henipavirusである。そのため似ている点がある。両者とも、Pteropusや他のコウモリがウイルスのリザーバーである、脳と肺を侵し致死率が高い、ヒト―ヒト感染する・・・など。

2. Leprosy (ハンセン病): An old disease with new horizons

・鑑別診断から漏れることが多く、診断がつくまで平均 1.8年かかる。68%の患者が disabilityを伴う神経ダメージを受けている。

・超音波検査で肥厚した神経が見えることがある。

・疫学的には、ブラジルやスーダンで罹病率が高い。インドも人口が多いので患者数が多い。

・多発単神経炎、びまん性の対称性末梢神経障害、無症候性のものがある (多発単神経炎が大事)。

・疾患スペクトラムは、innate T cell immunityによる。免疫が良ければ TT型、悪ければ LL型。

・表在する四肢の神経は全て侵されうる。

・通常、皮膚と神経は共に侵される。

・感覚脱失を伴った hypo or hyper pigmented rash、神経肥厚、皮膚スメアで acid fast bacilliの存在の 3徴は、感度・特異度 97~98%くらいととても高い。

・Geneticには、10p13に感受性の locusがある、HLA allels DR2, DR3などが関連。

・治療は、Rifampicine, Dapsone, Clifazimine, steroidなどの併用療法。

3. Human rabies (狂犬病): neuropathogenesis, diagnosis, and management

・犬では筋に達する傷、コウモリでは引っかき傷から感染しやすい。

・犬の場合は運動ニューロン、コウモリの場合は感覚ニューロンから感染?

・incubation period (20-60 days to year)→prodorome (1-2 days)→acute neuron phase (1-2 days)→coma (1-7 days)→death

・prodrome phaseで既に brain MRIに異常がみられる。造影MRIで前角細胞の障害が観察される。

・ウイルスの分布について。Human rabies: neuropathogenesis, diagnosis, and management.

・機序として、ミトコンドリアの障害が指摘されている。

・1972-2014年で10人生存者がいた。彼らの間では早期に抗体ができていた。

・”Prevention is the best”

4. Lipid storage myopathy caused by MADD in China

・Lipid storage myopathy (LSM) の原著について。Myopathy associated with abnormal lipid metabolism in skeletal muscle.

・筋生検に占める LSMの割合は、日本 (国立精神神経センター) 0.5%, 中国 3.6~10%程度。中国では多い。

・LSMには ①primary carnitine deficiency, ②neutral lipid storage disease with myopathy (NLSDM), ③multiple acyl-CoA dehydrogenation deficiency (MADD) がある。

・MADDは、①central nerve system involvement, ②episodic metabolic crisis, ③lipid storage myopathyを特徴とする。

・MADDの中には、リボフラビンに反応する患者がいる (Riboflavin responsive MADD; RR-MADD)。供覧した動画では、支えられて立っていた患者が、1か月後にはジャンプしていた。筋病理も改善。

・MADDの発症は 5~63歳。家族歴があるのは 1割未満。10-20%の患者では肝臓の adipose tissue infiltrationがある。37%では末梢神経障害がある。

・中国の RR-MADDの多く (86%) は ETFDH変異による。日本では 8.5%程度。

・ヨーロッパの MADDは中枢神経浸潤が多いが、中国ではスペアされる。

この後、ポスター発表を見てから、知人とで日本酒を飲みました。学会参加者の姿がちらほら見えました。

5月22日(金)

午前 8時からは運動ニューロン疾患の講演を聴きに行きました。。

運動ニューロン疾患の分子病態・治療法開発の最先端

1. 運動ニューロン死の共通機構

・glial cellから SOD1変異を取り除くと疾患の進行が遅れる。

・Astrocyteや microgliaは進行を規定、motor neuronは発症を規定、Oligodendrocyteは発症と進行を規定。

・TGF-βは細胞の成長や免疫に関係している。孤発性ALSでは TGF-β1が上昇している。TGF-β1が上昇すると IFN-γも上昇している。TGF-βはバイオマーカーになるかもしれない。

・TGF-β1阻害をすると SOD1G93Aマウスが長生きする。

2. TDP-43の病原構造の決定と抗体を用いた分子標的治療

・従来は、TDP-43の mislocalizationが pathogenic misfoldingの原因になると考えられていたが、最近では pathogenic misfoldingが mislocalizationの原因になると考えられている。

・TDP-43に圧をかけると立体構造が変わるので、それを NMR解析した。通常では立体構造が変わっても元に戻るが、戻れなくなる立体構造をとることがあるので MS解析した。結果、RNA recognition motif (RRM) 1, 2を同定した。そこから RRM2のダイマー形成に関与する部位に対する 3B12A抗体を作成し、実験を行った。

3. 筋萎縮性側索硬化症におけるオプチニューリンの役割

・血族婚の関与した ALS患者を対象に Homozygosity Mappingを行った。世代を経る毎に遺伝子の組換えが起きるため、ホモ接合の範囲は狭くなっていく。調べた患者のうち、一部でオーバーラップする領域があり、そこに含まれる遺伝子の一つが Optineurin (OPTN) だった。

・Optineurinは linear 及び K63 Ubiquitinと interactする。

・2015年3月に掲載された Science論文で、ALS患者に対する Kxome sequenceの結果が掲載された。サンプルサイズの大きい研究で、TBK1など 50個くらいの原因遺伝子が検出された。Exome sequencing in amyotrophic lateral sclerosis identifies risk genes and pathways.

・TBK1のハプロ不全は、ALS発症の原因となる (Haploinsufficiency of TBK1 causes familial ALS and fronto-temporal dementia.)。TBK1は Optineurinと interactionできなくなることが、発症に関与する。TBK1や OPTNの変異で、運動ニューロン疾患を伴わない前頭側頭葉変性症を発症することがある (Whole-genome sequencing reveals important role for TBK1 and OPTN mutations in frontotemporal lobar degeneration without motor neuron disease.)。

・TBK1は緑内障にも関連している (※OPTNは変異部位によっては閉塞隅角緑内障の原因遺伝子である)。

4. FUSの質的機能喪失による ALS/FTLDの病態機構

・Large fractionの FUSで免疫沈降させると、RNA結合タンパクである SFPQとの interactionと共沈した。

・ALS/FTLDでは、SFPQと FUSの共局在が減少していた。

・FUS変異があると、tauを codeする Mapt Exon 10のスプライシングができなくなる。FUSは核内で Maptの pre mRNAに結合している。

・FUSと SFPQを海馬でノックアウトさせたマウスでは、不安行動や社会性低下 (脱抑制) が見られるようになる。

・FUSと SFPQをノックアウトすると、adult neurogenesisが抑制されるが、RD4 (4 repeat tau) を抑制するとレスキューされる。

5. Evidence of link between TDP-43 and dipeptide repeat protein in c9FTD/ALS

・C9ORF72がどのようにして ALS発症に関連しているか、3つの仮説がある。①Haploinsufficiency, ②RNA toxity, ③Dipeptide repeat protein (Dipeptide repeat proteinについては、以前ブログで紹介したことがあります。著者らが引用していたのは、2013年の Science論文。)

・今回は dipeptide repeat proteinについて解析した。そのうち、いくつかの dipeptide repeat proteinは難溶性であった。

ALSの講演の後は、inflammatory myopathiesの口演を聞いて、食事に出かけました。この日の昼食は、前日に昼食を取った店の隣にある弁慶でした。午後は、 “Neuroscience Frontier Symposium2, Molecular mechanisms of Parkinson’s disease: what do we know and where are we headed?” に参加しました。全て英語のセッションでした。”PINK1と Parkinの関わる家族性 Parkinson病の分子病態” を発表された松田憲之氏は、前日の毎日新聞に記事が載っていて、「何とタイムリーな」と思いました。それが終わってからポスター発表を見に行きました。興味深かったのが、”脳梁膨大部に一過性異常信号を認めた新規遺伝子変異の X連鎖性 Charcot-Marie-Tooth病” でした。知り合いの医者に聞いたのですが、「末梢神経障害がある」という情報を聞いて読影した放射線科医の柳下章先生が、画像を見ただけで「Charcot-Marie-Tooth病だよ」と診断を当てたというのです。過去にいくつか報告はあるようなのですが、神のような診断技術だと思いました。

夕食は、蒲原銀次に行きました。炙り焼きの店ですね。その後は、ヨークシャテリアというバーへ。「響 30年」は、1杯 10000円なので手が出ませんでしたが、色々と美味しいウイスキー、カクテルを頂きました。ジン・トニックはキングスバリーのビクトリアン・バットという樽熟成させたジンを使っていたり、マスターが得意とするギムレットはオーセンティックなバージョンと、ライムが手に入らなかった時代のバージョンの 2種類があったり、こだわりを感じました。また、「南アルプスの天然水」は、白州というウイスキーの蒸留所で作っているので、白州を「南アルプスの天然水」で割ると相性が良いなんて話も聞きました。マスターに教えて頂いた蕎麦屋 (孫四郎を紹介されたのだけど、孫四郎だったかな・・・記憶が曖昧) に流れ、蕎麦とうどんを 1枚ずつ頼むという暴挙に出た後、記憶をなくしました。

5月23日 (土)

午前 8時から、 iPSの講演を聴きに行きました。

幹細胞研究最前線

1. パーキンソン病に対する iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞移植

・L-dopaはドパミン・ニューロンでドパミンに変換されて効くので、ドパミン・ニューロンがいなくなると効かない。ドパミン・ニューロンには、①produce and storage dopamine, ②convert L-dopa to dopamineの役割がある。

・細胞移植をすると薬が効きやすくなる。

・細胞移植のため、Hostの環境をどう良くするのが良いか?①既存の薬:バルプロ酸、ゾニサミド、エストラジオール (E2) を用いると、マウスでもヒト iPS細胞でも細胞生着が良くなる。特にゾニサミドが良い。②新薬を探す:NXPH3が support factorかもしれない。脳バンクのサンプルでは、パーキンソン病患者の線条体で NXPH3が減少している。NXPH3は neuroexophilinを codingし、シナプス安定化に関与している。

・パーキンソン病患者に対する iPS細胞を用いた臨床試験について、年内、早ければ 6月にも倫理委員会に研究計画を提出しようとしている。臨床試験の手順は、パーキンソン病患者からの採血→iPS細胞樹立→ドパミン・ニューロンに分化→自家移植というもので、現時点で対象患者として考えているのは、①孤発性、②70歳未満、発症 5年以上, ③H-Y分類 III or IV, ④L-dopaに反応性がある患者。まず 2年間 follow upし、primary endpointとして画像評価などで安全性を評価する。Secondary endpointは UPDRSなどでの効果判定。

2. iPS細胞を用いた網膜細胞治療

高橋政代氏による講演。

・現状では、加齢性黄斑変性症では、抗 VEGF薬の眼球注射をずっと続けなければいけない。

・手順は、fibroblast→iPS→Differentiation ((網膜色素上皮細胞なので) 色がついているのがミソ)→pure PRE cells→基底膜ができてくるのでシート状にして移植

・シートの変化は移植後 12週間で止まった。安全性として、拒絶反応や腫瘍化はしなかった。手術の合併症は minimumだった。視力は変わらなかったが、抗VEGF薬の注射をやめても進行しなくなった。ただし、手術で悪い血管が抜去されたためなのか、iPS細胞の効果なのかは判断できなかった。そのため、今後もう少し状態の良い患者で行うことが必要。

・現在は、Photoreceptor transplantationに力を入れている。笹井先生の方法を応用したもので、視神経の再生を目指しているという話。Time windowが大事になってくるようだ。

3. 微小小血管活性化による神経疾患に対する治療法開発

・心原性脳塞栓症患者で、骨髄穿刺をして、造血幹細胞を投与した。対象が重症な心原性塞栓症だったにも関わらず、11例中 9例が歩行可能になった。特に合併症はなかった。

4. iPSを用いた神経疾患研究

・Parkin変異 (パーキンソン病)、LRRK2変異 (パーキンソン病)、SCN1A変異 (Dravet 症候群)、PLP1変異 (Pelizaeus-Melzbacher病) などに対して、iPS細胞を用いて研究している。例えば、iPS細胞にミトコンドリア脱共役剤 CCCP (ミトコンドリアの膜電位が維持できなくなる) で処理すると、健常者由来の iPS細胞では異常なミトコンドリアがすぐに除去されるのに対し、parkin変異患者ではそうならない。

5. 社会とともに考える iPS細胞研究

・iPS細胞での研究と共に、新たな倫理的な問題が出てきている。例えば、ヒト由来の iPS使って実験をしていて、まだ発症していない病気を見つけてしまうことがあり得る。本人に伝えるべきかどうか。

・マスコミは科学ニュースをセンセーショナルに報道してしまう。誰が原因なのか?それを調べた BMJ論文がある。大きな原因としてプレスリリースが誇張した表現となっている。さらにマスコミも話を膨らませてしまう。

・iPS細胞に過剰な期待をしている人達がいて、そこにつけ込んだ怪しいビジネスがネット上でいくつもみられる。

iPS細胞については、非常に関心がある反面、私自身の知識が疎いところもあったので、非常に勉強になりました。この後は、ALSの遺伝子・病態解析についての口演を聞いて、同僚たちと日航ホテルにあるセリーナというレストランで昼食をとりました。

午後は、「ボツリヌス毒素療法」についてのハンズオンに行きました。エコーを使った筋肉の同定がとてもためになりました。

ボツリヌス毒素療法

・パーキンソン病の首下がりは、最近では頭板状筋の stretch injuryではないかと言われている (抗重力筋は障害されるけれど、すぐ近くにある非抗重力筋は障害されないため)。

・痙性斜頸では、歩行させると症状が誘発されやすいので、その場で足踏みをさせてマジックで必要な筋肉に印をつけていく。稀に臥位や書字で誘発される患者もいるので、それに応じた誘発を行う。

・アーテンは最初の 1週間に副作用が出やすいが、そこを乗り越えれば大丈夫なことが多い。少量で 1ヶ月頑張って頂く。その後は増量しても大丈夫。

・眼瞼痙攣は原則両側性だが、片側の眼の周囲だけ痙攣がある患者では、顔面痙攣と眼瞼痙攣の鑑別が問題になる。光が眩しいようなら眼瞼痙攣。左右で量に差をつけてボツリヌス注射を行う。

・橈側手根屈筋 (FCR) は、肘と手首を 1:4くらいにわけた場所にプローベを当てる。三角形に描出される。近くに正中神経が見えることがある。

・長母指外転筋は、血管が近くにあるので超音波検査が有用。FCRを見た位置よりやや遠位にプローベを置き、親指を動かすと筋収縮が観察される。

・下頭斜筋 (OCI) は、耳の下やや正中寄りで、犬の糞のように描出される。

・ボツリヌス注射後、筋収縮させると良い。

・注射をするとき、EMLAクリームを用いる疼痛が緩和される。

ハンズオンが終わってから、ぽんしゅ館に寄って、酔って帰りました。でも、日本酒は福島の酒の方が好きだなぁ・・・。

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前頭側頭葉変性症

By , 2015年4月9日 6:27 AM

2015年3月19日の New England Journal of Medicine (NEJM) の MGH case recordsが、前頭側頭葉変性症 (FTLD) でした。

Case 9-2015 — A 31-Year-Old Man with Personality Changes and Progressive Neurologic Decline

認知症の診断を進める際の基本的事項と、前頭側頭型認知症について良く纏まっていました。

・初発症状から、最初に脳のどの部位が侵されたかわかる。症状や、脳のどの部位が侵されたかを調べれば、病因が推測できる。

・認知症の鑑別として、うつ病、統合失調症、Creutzfeldt-Jakob病、貧血、ビタミンB12欠乏、甲状腺機能異常、肝障害、腎障害、梅毒、感染症 (Lyme病など), Huntington病、Wilson病、脂質代謝異常症、他の晩発性先天性代謝異常症、白質変性症などが挙げられる。

・前頭側頭型認知症が左脳から発症するときは、原発性進行性失語症を呈する。右脳から発症するときは、精神症状を呈する (behavior variant; 行動型)。”disinhibition”, “apathy”, “loss of sympathy and empathy”, “repetitive behaviors”, “hyperorality”, “loss of executive function” のうち、3つの症状が存在すれば、前頭側頭型認知症の疑い診断を下すことができる。

・前頭側頭型認知症のほとんどは孤発性だが、 10~15%に常染色体優性遺伝を示すものがある。

・前頭側頭型認知症の 3つのサブタイプは、tau, TDP-43, FUSという 3つタイプの封入体に基づく。

・Tauは、しばしばパーキンソニズムを合併するが、ALSは合併しない。一方で、TDP-43や FUSは前頭側頭型認知症と ALSをより合併しやすい。

・Pick病は Tau病理 (tau-3R) を呈する。典型的には 50~70歳代に発症し緩徐に進行する。稀に家族性である。

・前頭側頭型認知症のいくつかの型が、progranulin遺伝子変異と運動ニューロン疾患を伴うものを含め、TDP-43と関連している。前頭側頭型認知症行動型の TDP-43サブタイプは一般的である。発症は通常 70歳代始めである。

・前頭側頭型認知症と ALSで家族性のものはしばしば C9ORF72の 6塩基反復による。この型は、TDP43 type Bと関連している。カリフォルニア大学で治療された常染色体優性の前頭側頭型認知症の 53%にこの変異がみられた。この変異の患者では、前頭側頭型認知症より ALSが一般的で、通常 MAPT変異や progranulin変異の患者より高齢発症である。MAPT変異は浸透率が高い。

・FUSサブタイプは、前頭側頭型認知症の約 5%程度である。FUS変異は、前頭側頭型認知症よりも ALSを発症しやすい。若くして発症する前頭側頭型認知症はしばしば FUSサブタイプである。発症は 30~40歳代で、30%に精神病を合併する。

この論文の症例が前頭側頭型認知症であることは、神経内科医であればひと目と思いますが、表現型から遺伝子を考察していくプロセスが、(それが的中するかどうかは別として) とても勉強になりました。また、論文中に “sagging brain syndrome” という用語が登場しましたが、初耳だったので押さえて置こうと思います。

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